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2人の小さいルシス

 戦いの第2幕は終了した。そこには全身血まみれで満身創痍のロキとトールが背中合わせにして座り、その周りには20体の合成魔獣の死体が転がっていた。



 「ロキ、生きてるか」

 「生きているわよ」


 「しぶといな」

 「お互い様よ」



 2人は壮絶な戦いに勝利をして、かろうじて生き残ることができた。だが、束の間の勝利は勝利とは呼べないだろう。



 「ガハハハハハハ、ガハハハハハ、凄いなお前達は!ジュピター様からお借りした合成魔獣を全て倒すとはあっぱれだ!だが、お前たちは俺の手のひらで踊らされていただけなのだ。思い知るが良い。これから始まる本当の恐怖と絶望を。ガハハハハハ、ガハハハハハハ」



 ハーメルンから合図を受けた天空神軍の兵士は神の果実を食べる。すると全身の肌は堅い緑色の鱗に変わり、爪はナイフのように鋭く長くなる。体は膨張してギリシャ彫刻のような筋骨隆々の肉体となり二倍ほどの大きさになる。そして体中から抑えきれないほどの力がみなぎる。



 「ポウポウ」

 「ヒャッホ~」

 「ゲヘヘヘヘヘ、ゲヘヘヘヘヘ」



 魔獣人間となった天空神軍の兵士たちは奇声を上げながらハーメルンの周りに集結する。



 「ガハハハハハハ、ガハハハハハハ。お前達、今日は天空神教の力をオリュンポス王国中に知らしめる記念すべき日だ。天空神教の教えに背くキャベッジの住人達へ神の制裁を与えてやるのだ」

 「ウォウォ」

 「ガハガハ」

 「ポウポウ」



 ハーメルンの言葉に魔獣人間は奇声で答える。



 「ロキ、またへんてこなヤツラがきおるで」

 「そうね」


 「まだ糞はたれてへんやろ」

 「もちろんよ」


 「なら、まだきばれるやろ」

 「そうね」



 2人は立ち上がることもできない。しかし、闘志の炎は消えていない。



 「お前達、まずはそこの破壊者(デストロイヤー)2人の息の根を止めてやれ。こいつらは俺が大事に世話をしていたキマイラを殺した大罪人だ。手足を引きちぎって最大限の苦痛を与えてから殺すのだぞ」

 「ポウポウ」

 「ヒャッヒャッ」

 「ポポウ、ポポウ」



 ハーメルンは最後の審判を下す。すると魔獣人間はエサを待っていた動物のように一斉にロキとトールの元へ駆け出した。





 「早く起きるのです」

 「……」


 「1号ちゃん、ルシスお姉様のお命令にお背くおつもりなのですか?」

 「そ……そんなことないのです。私はルシスお姉様の1番弟子であり、最初に生命を与えられた選ばれし配下なのです。私の体はルシスお姉様へお仕えするために存在するのです」



 ここはキャベッジの宿屋でロキが借りている部屋の押し入れの中である。



 「保護対象者はおすでにお外にお向かわれました。私たちもお同行すべきなのです」

 「アイツらはルシスお姉様をパシリとして使った糞野郎です。糞野郎は汚物なので廃棄処分するのが妥当なのです」


 「お気持ちはお理解できますが、ルシスお姉様は、あのお三方をお守るようにとお指示をお出しになりました。私たちはルシスお姉様のお出しになったお命令をお忠実にお実行することがお忠義のお証となるのです」

 「2号は堅物なのです。ルシスお姉様のご命令は絶対なのですが、保護対象者が糞野郎であれば、最大限の苦痛と恐怖を味わってからでも遅くはないのです。しかし、私の個人的見解としては糞野郎は廃棄処分が妥当だと思います」


 「ロキさんはルシスお姉さまのお命のお恩人です。お保護をするのはお当然なのです」

 「ロキについての反論はないのです。しかし、大食い糞野郎はルシスお姉様を呼び捨てにしたあげく、お腹を空かしたルシスお姉様のサンドイッチを食べた大罪人なのです。それは惰眠長耳野郎も同罪なのです」


 「1号ちゃんのお言い分はおもっともです。しかしルシスお姉さまのお命令はお絶対なのです。もしも、保護対象がお命をお落とすようなことがあれば、ルシスお姉さまはおかんむりになるのです。それでもおよろしいのでしょうか」

 「……わかったのです。でも、ギリギリまでは手助けはしないのです。ルシスお姉さまのサンドイッチを食べた報いは受けるべきなのです」




 「ロキ……」

 「トール……」



 ロキとトールはお互いの顔を見る。



 「どういうことやねん」

 「もしかして……ルシスちゃんが助けに来てくれたのかしら」



 突如、空が金色に輝くと無数の光の矢が降り注ぐ。光の矢はロキとトールを避けるように降り注いで魔獣人間を串刺しにした。



 「ルシス、助けに来てくれたのか」

 「黙れ!大食い糞野郎。ルシスではなくルシス様だろ」


 「……」



 トールは自分の耳を疑った。声色は私だが口調は全くの別人だったからである。



 「ルシスちゃんなの?」



 ロキが恐る恐る問いかける。



 「ルシスちゃんではなくルシス様が正解なのです」

 「ルシス、冗談はやめろ。今そんな状況とはちゃうやろ」


 「シャラップ!ダンゴ虫以下の糞野郎がルシスお姉様を呼び捨てにするなんて万死に値するのです」

 「お前は……ルシスとちゃうんか?」



 トールの目の前に10㎝ほどの大きさの私とそっくりな人物が姿を見せる。


 

 「ルシス様だろ!何度も言わせるな。このすっとこどっこいが!」



 1号は目を血走らせてトールを激しく睨みつける。



 「1号ちゃん、お怒りになるお気持ちはおわかりになりますが、お相手は保護対象者です。お冷静にお対処するのがお望ましいのです」

 「……。お前もルシスとちゃうんか?いったいどうなっとるねん」



 さらにトールの前に10㎝ほどの大きさの私とそっくりの人物が現れた。しかし、もう1人の小さいルシスの髪の色は銀色だった。



 この2人こそ、私がもしものために用意していた秘策なのです。


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