新たな合成魔獣
「見えない場所からの正確な狙撃、一撃で仕留める技術、キマイラを倒した腕は本物だな」
ハーメルンはラスパの実力を計るために、先に合成魔獣100体を送り出したのである。
「魔獣を追加するか」
ハーメルンは耳を覆いたくなるような不快な音色を奏でる。すると、シュティルの森に潜んでいた50体の魔獣が動き出した。
「ガハハハハハハ、ガハハハハハ、俺はもう待てないぞ!この神の果実を食べて俺は無敵の人になるのだ」
「お前勝手なことはするな」
ローガンは、天空神軍の兵士に怒られてシュンとする。
「ロキ、ポロンに負けてられへんで」
「もちろんですわ」
ポロンは精密機械のように、1本の矢も無駄にすることなく、合成魔獣の目を射貫く。いつもよりも長い距離で神業を連発するポロンの弓捌きに、ロキとトールは鼓舞されて、次々と合成魔獣にとどめを刺す。これはもうDランクの破壊者の戦いではない。もちろん、この圧倒的な戦いを主導しているのはポロンで間違いないだろう。
「ロキさん、トールさん。新たな魔獣が近づいています」
ポロンは正確無比な弓を放ちながらも周囲の警戒を怠ることはない。
「はぁ~、はぁ~、まだいるのかよ」
「トール、気を抜かないで。もう時期、私たちにも援軍がくるはずよ」
「そやな。食べた分の脂肪は燃焼するべきやな」
「……そうね」
「おい、ロキ!また悪趣味な合成魔獣が来たで」
「……」
新たな50体の合成魔獣は、クマの体に人間の頭、背中には人間の腕と足がオブジェのように突き刺されていた。人間の顔は悲痛に満ちた表情で涙を流しながら「助けてくれ」と叫びながら向かってきた。最初に来た100体の合成魔獣はFランク、次に来た50体の合成魔獣はEランクであった。
「ロキさんトールさん、町の衛兵さんは武器が壊れているので戦えそうにないです」
カミラ男爵は戦力に特化した町を作ってはいない。逆に平和に特化した町作りをしている。町民たちもそれを望みそれに答えるように日々鍛錬をしている。人間は女性しか魔法を使うことはできない。それは男性が魔力を生み出さない白の魔石だからだ。それに比べて人間の女性は4色からの魔石を持っている。それは赤(火属性)青(水氷属性)緑(土属性)黄(天属性)の4色だ。魔力があれば全ての属性の魔法を習得可能だが、自己の属性にそった魔法の方が精度は高く習得も早い。キャベッジの町人は、生活に特化した魔法を優先して習得しているので、戦闘には向いていない。
一方、魔法が使えない男性は肉体を磨き上げて神技を授かる者もいる。神から授かった神技は、人間の身体能力を凌駕した力であるが、その大半は肉体労働をするのに特化している。武器や格闘の鍛錬をしていない限り、人間相手なら通用する腕力だが、魔獣を相手にするなら最低限の武器は必要になる。カミラ男爵は、防衛に備えた簡単な訓練と武具を用意していたが、ローガンの手によって全て破壊されていた。
ポロンは町の衛兵は戦えないと言っているが、実は1000名の武器を持たない衛兵と簡単な攻撃魔法しか使えない女性たちが、町を守ると志願したけど断っていた。武器を持たない衛兵と簡単な攻撃魔法しか使えない女性はFランク以下に該当するだろう。そして、戦闘経験がないFランク以下の者を戦いに参加させるのは肉の盾としか意味はない。ポロンにはそんな残酷な選択はできなかったのである。
「あのぼんくら、余計なことをしてくれたな」
「用意周到のようね」
ロキとトールはすぐに真相に気付く。
「ロキ、糞をもらさん程度にきばれや」
「トール、下品よ」
1パーティで合成魔獣を150体を相手にするのは無謀だ。最初の100体は合成魔獣がFランクだったので傷を負うことなく完勝したが、次はDランクになる。しかも、人間の顔で助けを求めながら襲って来る。2人はどれだけ平常心を保ちながら戦うことができるのだろうか。
ロキお姉ちゃん、トール親分ここが正念場なのです!




