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殲滅のポロン

 ロキたちはキャベッジの門の横にある監視小屋へ来た。



 「おはようございます」



 門兵のカイルは元気よくロキたちへあいさつをする。



 「おはようございます」



 ロキたちも笑顔で挨拶を返す。



 「シュティルの森の見回りにでも行かれるのでしょうか」

 「いえ、違います。今日は監視小屋から町の近辺を調査しようと思います」



 カミラ男爵は町民の混乱を避けるために、天空伸教がキマイラを使ってキャベッジを襲撃する計画のことを公にはしていない。



 「どうぞ自由にお使いください」



 キャベッジは平和な町だったので、監視小屋を使うことはほとんどない。



 「ありがとうございます」



 ロキたちは梯子を使って監視小屋に上る。監視小屋は5mほどの高さで小屋の中は四方にガラスのない窓があり、一面を見渡すことができる。しかし、見晴らしは良いが人間の目で見えるのはせいぜい300m先が限界だ。



 「ポロン、任せたわよ」

 「遂に私の魔眼を開く時が来たのです」



 森の民とも呼ばれるエルフ族の目は特別だ。エルフ族は近眼と遠眼を使い分けることができる。遠眼を使用すると見晴らしの良い場所なら1㎞先でさえ鮮明に見ることができる。しかし、ポロンの心眼は2㎞先も見えると言い張っている。ポロンは右手を顔に押し当てて中2病の構えをする。すると美しいエメラルドグリーンの瞳は真っ赤に輝く。



 「ポロン、何か見えたら起こしてくれや」



 トールはまだ寝たりないので二度寝をする。



 「見えたのです」

 「う……嘘やろ。俺はまだ一秒も寝てへんで」

 「ポロン、本当なの?」


 「本当です。おおよそ100体ほどの見たことのない魔獣がシュティルの森の方面からこちらへ向かっています」

 「ここからどれくらいの距離かわかるかしら」

 「ジャスト2㎞です」


 「ロキ、下の門兵に伝えろ」

 「わかったわ」


 「トールさん、魔獣の最後尾には灰色の祭服を着た男が笛を奏でています」

 「灰色の祭服なら天空神教の司祭で間違いないやろ。おそらく笛の音色で魔獣を使役しているんやろ」


 「あの男どこかで見た気がします」



 ポロンは逆立ちをして考える。



 「あ!思い出したのです。あの野郎はルシスちゃんにおいたをしていたルークという門兵です」

 「アイツか。それなら町長の息子もおるやろ」


 「いまのところ人間はあの男しか見えません」

 「トール、カイルさんに伝えたわよ」

 「よっしゃ~!町の衛兵が来るまでは俺たちが相手をしてやるか」


 「そうね。キャベッジの衛兵は余り訓練されていない素人兵にちかいはずよ。私たちで少しでも魔獣を減らしておきたいですが、ポロンが見たこともない魔獣という点が少し気がかりね」

 「そやな。シュティルの森の魔獣はルシスがやりおったから、あの笛で新たな魔獣を引き連れてきたと考えるのが妥当やな。ポロン、どんな魔獣でも目は弱点や。援護を頼むで」

 「任せてください。シュティルの森では、私の卓越した弓さばきを見せる機会に恵まれませんでしたので、ここで私がすごいというところをお見せしましょう。しかし、ルシスちゃんに殲滅のポロンの2つ名に何1つ偽りがないことをお見せ出来ないのが残念でなりません」



 ポロンは唇を噛みしめて悔しがる。

 ロキとトールは監視台を降り、魔法袋から武器を取り出す。ロキはロングソード、トールは大きなハンマー。2人は門兵から馬を借りて魔獣の方へ駆け出した。一方、ポロンは弓を手にして魔獣の位置を再確認する。



 「私は弓の名手なのです。いつもなら500m以内であれば、針の穴を通すことも可能です。しかし、今日はいつもよりも格段に調子が良さそうです。現在ヘンテコな魔獣の位置は1㎞くらいです。風は追い風1m。目を射貫くにはまだ距離は遠いですが、今日の私なら射貫くことができると思うのです」



 理由はわからないがポロンは、体中からみなぎる力を感じていた。

 ポロンは弓を構える。するとポロンの体から七色のオーラが湧き上がる。これはエルフ族が持つ固有のスキル【弓の達人】であり、魔法のバフ効果に似ている。



 「いっちゃえ~」



 ポロンは掛け声を上げて矢を放つ。その矢は虹色の軌道を描きながら一寸のブレもなく飛んで行く。



 「いっちゃえ~」



 ポロンは次々と矢を放つ。



 「ロキ、ポロンのヤツもう矢を打ち始めてるやん」

 「今日は追い風だからかしら?でもいつもの倍の距離はあるわね……」



 ロキたちはポロンの行動に不安を感じていた。しかし2人の不安とは裏腹にポロンの放った矢は1㎞先にいた魔獣の目に貫通していた。



 「ロキ、ヘンテコな魔獣の正体は合成魔獣や」

 「そうね。でも……ひどすぎるわ」



 合成魔獣は人間の胴体に狼の手足、顔はクマを合成した歪な姿をしていた。そして、ポロンの矢が目に突き刺さった合成魔獣は悲鳴を上げながら突進する。


 

 「目に的中してるやん。ポロンは腕をあげたようやな」

 「そうね」


 「合成魔獣は片目を失って錯乱しとるで。ロキ、きばれや」

 「了解よ」



 ロキは魔力をロングソードに伝達して炎を纏わせて、突進する合成魔獣の頭を焼き斬る。トールは片手で大きなハンマをぶん回しながら、次々と合成魔獣の頭を潰していった。



 ラストパサー(最後の晩餐)が大活躍しているのです。


 

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