キャベッジの危機
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ローガンが目にしたのは灰色の祭服を着たルークであった。
「この無礼者が!」
シンクは大きな腕を伸ばしてローガンの顔を殴りつける。殴られたローガンは2mほど吹っ飛んだ。
「このお方は天空神教の司祭様だ。お前ごとき一信徒が気やすく声をかけるなど無礼千万だと思い知れ」
「シンク、コイツの振る舞いは許してやれ。コイツは頭と態度は悪いが俺の作戦の協力者だ。多少の無礼は大目に見てやれ」
「わかりました」
「ローガン、付いて来い」
「あぁ」
ローガンは反省の色を見せずにぶっきらぼうな態度で返事をした。
「この無礼者が!」
シンクは大きな腕を伸ばしてローガンの顔を殴りつける。殴られたローガンは3ⅿほど吹っ飛んだ。シンクは反省しないローガンの態度に苛立ちを感じていた。
「ハーメルン司祭様の慈悲深さに甘えるとはなんてふてえ野郎なんだ」
「す……すみませんでした」
ローガンはやっと理解した。自分がルークだと思っていた人物が天空神教の司祭であり、自分よりも立場が上であったことに。ハーメルンは顔を腫らしたローガンを連れて天空神大教会の中へ連れて行き、小さな小部屋に案内した。
「ローガン、パースリへ何しに来たのだ?」
「あの破壊者たちが、キマイラを討伐したようなのです」
ローガンは言葉使いに気を付けながら喋る。
「ふっ、そんなことはありえないだろう。どうせキマイラに恐れて逃げて帰ってきたのではないのか?」
「違うと思ます。アイツらの自信に溢れた表情から察すると嘘ではないと思います」
「……ありえないだろう。あの破壊者たちはDランクのはずだ」
「俺……いえ、私もそう思いたいのですが、嘘だとは思えません」
「そうか……。これはジュピター様に報告する必要があるな。お前はこの場で待っておけ」
「は……い。わかりました」
ハーメルンは天空神大教会にある小部屋から急いで出て行った。
ここは全面の壁に金箔が張り詰められた黄金の部屋。全ての家具は金箔もしくは金で出来ている。
「失礼致します」
ハーメルンは大声を上げて黄金の部屋に入る。黄金の部屋には絶世の美女を侍らかした白の祭服を着たジュピターがキングサイズのベットで横になってニヤついていた。
※ 創造の力を授かった創造神ジュピター 身長160㎝ 体重70㎏ 中肉中背の無精ひげの生やしたおっさん。ジュピターが持つ天地創造の神力はCランク以下の合成魔獣を作成して、自在に命令をだすことができる。合成魔獣の数には限りがあり、Cランクは50体 Dランクは100体 EFランクは200体となる。
「ハーメルン、俺はお楽しみのところだ。邪魔をするな」
英雄は色を好む。
「お楽しみのところ誠に申し訳ありません。しかし、緊急事態が起きたのです」
「フッ、神の使徒に緊急など存在しない。だが、俺はとても気分が良いからお前の話を聞いてやろう」
「ありがとうございます。さきほどキャベッジの協力者が私の元を訪ねてきたのですが、キマイラが討伐されたと言っているのです」
「グハハハハハハ、グハハハハハハ、それは嘘だ。お前も知っていると思うがあのキマイラは、天空神5枢機卿から授かったAランク相当の合成魔獣だ。パースリを通過してキャベッジに向かった破壊者はDランクだったはずだ」
「私も嘘だと思うのですが、ローガンという男はバカなので嘘をつく知能は持ち合わせていません」
「……まぁ、良い。俺は初めから天空神5枢機卿の力など借りたくはなかったのだ」
「私も天空神5枢機卿様の力など借りる必要はないと思っています。創造神ジュピター様と酔漢神バッカス様のお力をもってすれば、キャベッジなど一瞬で制圧できるでしょう。いったい法王様は何を考えているのでしょうか」
「ハーメルン、図に乗るな」
突然、黄金の部屋の扉が開き1人の男性が大声を出して入ってきた。
「も……申し訳ございません」
ハーメルンは地面に頭をつけて失言を詫びる。
「ケレース、何しに来た!」
黄金の部屋に入って来たのは、豊穣の力を授かった豊穣神ケレースだ。
※ 豊穣神ケレース 身長170㎝ 体重65㎏ 特徴のない平凡な男性 ケーレスが授かった天然果実の神力は、人間を魔獣人へと変化させる神の果実を作ることができる。しかし果実の制限は3時間。3時間を経過するとしわしわの体になり半日は動けなくなる。
「俺は法王様の命令でお前たちの監視を任されているのだ」
「ふっ、法王様へ伝えておけ、俺はやる時にはやる男だ」
「笑わすな。お前はいつも女にうつつを抜かして仕事をさぼるし、バッカスは酒ばかり飲んで二日酔いで仕事に来ない。法王様はお前ら2人が作戦に穴を開けても問題がないようにキマイラを預けたのだ」
「ぐぬぬぬぬ」
ジュピターは何も言い返せない。ジュピターはこれまでも幾度も仕事をさぼった実績があるからだ。
「ハーメルン、キマイラが討伐された話は本当なのか」
「確認はできていませんが本当だと思います」
「俺は信じないぞ」
「黙れジュピター!にわかには信じがたい話だが確認をする必要はあるだろう。ハーメルン、お前は神具を預かっているよな」
「はい。魔笛を使ってキマイラの飼育を任されています」
魔笛とはジュノの神力を笛に宿した神具である。笛の音色を聞いた魔獣は奏者の命令に従う。ハーメルンは魔笛を使ってシュティルの森へ入りキマイラのエサやりをしていた。
「今すぐ自分の目で確認して来い」
「今からでしょうか?」
「そうだ。今すぐだ」
「わかりました。もしもキマイラが死んでいたらどうすれば良いのでしょうか?」
「その可能性は0に近いが、作戦を中止することはできない。お前には神具があるから問題はないだろう」
「もちろんです。潜入捜査をして準備も完璧にしてあります。もしもキマイラが討伐されていたとしてもシュティルの森の魔獣を使役して必ずや作戦を成功させてみせましょう」
「心強い言葉だな。でも万が一のためにジュピターも同行しろ」
「断る」
ジュピターは即座に大声で返答する。
「これはお前達が受けた作戦だぞ」
「作戦は明日だ。それまでは美女と楽しむ時間だ。しかし、もしも俺が寝坊した時のためにハーメルンには俺の作った合成魔獣を貸してやる」
「ありがとうございます」
ジュピターは寝坊する気満々だ。
「ハーメルン、あの2人はキャベッジへ行かない可能性が高い。念のために俺からも天空神軍200名と神の果実を渡しておいてやる」
「はい、ありがとうございます。ケレース様」
キャベッジがとっても危険なのです。