プリン
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「ロキお姉ちゃん、今からラディッシュに行って来るのです」
「ルシスちゃん、無理をしなくても良いわ。今日はゆっくりと休んで体を休めるのよ」
昨日から一睡もしていない私だが魔力が戻って元気がみなぎっていた。
「急いだほうが良いと思うのです」
「ありがとう、ルシスちゃん。でも、休息を取るのも大事なのよ」
ロキは私の体を心配してくれている。
「わかったのです。今日は町を探索してゆっくりと過ごすのです」
「そうすると良いわ。町を探索するのならルシスちゃんの分の依頼料も渡しておくわね」
「ありがとうなのです」
私はお金も手に入ったので、ロキと別れて町でゆっくりと過ごす……つもりなど毛頭なかった。異世界の町を探索するのも悪くはない。しかし私には、やらなければいけないことがある。私は町で必要なアイテムを購入してからキャベッジの門を出る。そして、門兵の姿が見えない場所に辿り着くと翼を広げて空へと旅立つ。
「私はプリンが食べたいのです」
私は魔力が戻ったらプリンを作って食べたいと思っていた。異世界ファンタジーの小説やアニメでは、前世の知識を利用して、美味しい料理を作ることは王道だ。この王道を進まずに、異世界転生だと名乗るのは間違っている。しかし、前世の私はごく普通の女子高生だ。お菓子作りが得意だとか、前世の職業がパティシエだったとか、そんなご都合的な設定はない。そんな、ごく普通の女子高生でも、プリンくらいなら作れるだろうと思われるかもしれないが、私は市販のプリンしか食べたことはない。
でも、安心してください。私にはアカシックレコードがあるのです。アカシックレコードには全ての知識が集約されている。アカシックレコードにプリンの作り方を教えて下さいと尋ねると、プリンのレシピを教えてくれるのである。
「美味しいプリンの作り方を教えてください」
私はアカシックレコードに問いかける。すると、アカシックレコードに美味しいプリンのレシピが記載される。
「なるほど、なるほど、なるほどなのです」
私はアカシックレコードに記載されたレシピを完成させるために食材の採取に出かける。最初に目指すのはディスペア山だ。ディスペア山は標高20000mを越える峻嶺で、キャベッジから50㎞離れた場所にある。このディスペア山があるので、ラディッシュへ向かうには迂回路を通る必要があるのだ。ディスペア山は魔獣の生息地であり、Bランク以上の魔獣が闊歩する危険地帯だ。私の目的はディスペア山の山頂に巣を作るAランクの魔獣であるサンダーバードの卵だ。サンダーバードは鷲の魔獣で体長は10mを越える。サンダーバードは大きな銀翼から自在に稲妻を落とす獰猛で危険な魔獣だ。アカシックレコードには美味しいプリンを作るにはサンダーバードの卵を使うと良いと記されてあった。
少しは魔力の操作に慣れた私はディスペア山の山頂へひとっとびした。ディスペア山の山頂付近には、高さ300mを越える大木が連なり、地面には20mを越える魔獣たちが争いをしている。ディスペア山に住む多くの獰猛な魔獣の頂点に立つのがサンダーバードだ。銀翼から放つ稲妻は、大型魔獣でさえも一撃で感電死してしまうほどの威力がある。今もサンダーバードが放つ稲妻で、多くの魔獣がサンダーバードのエサとなっていた。サンダーバードは大木のてっぺんに巣を作りメスが卵を温める。オスは食欲旺盛なメスのために狩りをする。
「えい!」
私はディスペア山の山頂に到着すると、メスが大事に温めている卵を盗むために、メスの首元にチョップをして気絶させた。サンダーバードの卵の大きさは50㎝ほどあり、1個あればプリンが10個作れるとレシピに書いてあった。しかし10個では不安だと感じた私は、手あたり次第にチョップをしてメスを気絶させて卵を盗んでいたら、いつの間にか30羽のオスのサンダーバードに囲まれていた。
「や……やばいのです」
30羽のサンダーバードは一斉に、銀翼から稲妻を雨のように降り注ぐ。
「やられたのですぅ~~~~」
私は全身に稲妻を受けて真っ黒になって感電死した……ってなることを避けるために私は魔法を発動した。
「暗黒球」
無数の稲妻は、私が手のひらの上に作り出した黒い球体の中へ全て吸収されてしまった。ブラックホールは闇魔法であり、闇魔法は魔族だけがつかえる究極魔法である。
「倍返しなのです」
私が黒い球体に命じると、黒い球体は吸い込んだ稲妻を発射させた。すると、稲妻は倍の大きさに変化してサンダーバードに直撃する。稲妻が直撃したサンダーバードは白目をむいて地面に落下した。
「今のうちに逃げるのです」
私は盗んだ卵を魔法袋に入れて次の目的地へ向かった。
卵をゲットなのです。




