シュティルの森
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※時は少し遡ります。
「ルーク、あの計画は順調なのか?」
「問題ない。勘の良いお前の母親がラディッシュのギルドに依頼を出したが無駄なことだ。あのいけすかない破壊者諸共全てを喰らいつくしてくれるだろう」
「俺たちも襲われないのか?」
「安心しろ。俺たちは毎週奉納の儀式をして神への感謝を示している。天空神教の信徒は神から守られているので何も心配することはないのだ」
「それを聞いて安心したぜ。破壊者が来て、俺達の計画が台無しにならないかヒヤヒヤしていたが、お前を信じて正解だったぜ」
「明日はギルドから派遣された破壊者が全滅したとの吉報が届く。そして、明後日には計画が実行されて、キャベッジはお前のものになるだろう」
「遂に……俺が町長か。町長の息子である俺を町の門兵にした裁きが下るのだな。ガハハハハハハハ、ガハハハハハハ。とても愉快で気持ちが良いぜ」
3か月前、キャベッジを出て1㎞ほどの場所に小さな小屋が設立された。小屋の玄関には、【天空神教】の看板が掛けられていた。この臨時の天空神教の教会では、週に1度、10名ほどの若い男性の教徒が集まり、会合が開催されていた。
※時は戻ります。
私たちは1階に降りて食堂で食事を済ませると、シュティルの森へ向かうために町の門を出る。
「これはこれは、破壊者の皆様方、やっとシュティルの森への調査に向かわれるのですね」
ローガンはふてぶてしい態度で声をかけてきた。
「今日、全てを解決してきますので、吉報を期待してください」
ロキは厳しい口調で言い返す。ロキは昨日の私の件で、腹立たしい気持ちになっていた。
「お前達が死んだとの吉報を期待して待っているぞ。ガハハハハハハ、ガハハハハハハ」
「あぁぁぁ~。お前……何か知っているやろ」
トールは何か違和感を感じたようだ。
「……何を……言って……いるのかな。俺は何も知らんぞ」
ローガンは明らかに動揺してルークは俯いた。
「皆さん、今日はとても天気が良いのです。こんな日は元気に挨拶をして出発するのが破壊者なのですわ。門兵の皆さん、いってまいります」
「……」
ポロンは胸に手を当てて綺麗にお辞儀をする。能天気なポロンの淑女の挨拶に、ローガンとルークは口をあんぐりと開けて呆然とした。
「あっかんべ~~~だ」
しかし、私は右目を指で下げ、舌を出して意地悪な態度で2人を見送った。
「ロキ、アイツらがルシスに乱暴をしたヤツか」
「そうよ」
「何ですって!ルシスさんに乱暴をはたらくなんて許せませんわ。すぐに引き返して抗議をすべきです」
ポロンは顔を真っ赤にして怒る。
「殲滅のポロンさん、私は気にしてませんのでシュティルの森へ急ぐのです」
「ルシスさんは心の広い方なのですね。まだ子供ですのに立派ですわ」
今思えば、あの門兵が意地悪をしたからラストパサーのメンバーに出会うことができた。今は感謝しているくらいである。
「アイツら、俺たちが死ぬことを確信してたで。何か裏がありそうやな」
「そのようですが、それを裏付ける証拠はないわ。調査を続行するしかないの」
「まぁ、それは心配ですわ。そんな危険な場所へルシスさんをお連れしてもよろしいのでしょうか?」
「私は全然大丈夫なのです」
「ルシスは問題ないやろ」
「私も同感です」
「お2人がそのように言うのであれば問題ありませんわね」
ポロンは納得する。
「ロキ、ここからシュティルの森へどれくらいかかるねん」
「1時間よ」
「まぁ、そんなにも歩かないといけないのですね。それなら途中で休憩が必要ですわ」
シュティルの森は、私が魔界から人界へと追放された場所だった。もしも、森の奥へ進んでいたら私は魔獣のエサになっていた。
「ロキお姉ちゃん、馬車を使わないのですか」
異世界ファンタジーでの移動は馬車が定番である。前世では馬車に乗ったことがないので1度は乗ってみたいと思っていた。
「ルシスちゃん、ごめんね。トールが私の財布からお金を盗んで使い込んだから、馬車を借りることができなかったのよ」
依頼料の前金に馬車の賃料も含まれていたが、トールが使い込んだので馬車を借りることができなかったらしい。
「筋トレや。筋トレ。普段から足腰を鍛えるのが破壊者や」
「ルシスちゃん、トールがお金を使いこむのは毎度のことなのよ。ラストパサーへ加入したことを後悔しないでね」
「大丈夫なのです。私も筋トレを頑張りたいのです」
「ルシスはわかってるやないか!良い新人が入って俺は満足や。キャキャキャキャキャキャ」
「調査に向かう時間までも筋トレに費やすトールさんの行動は尊敬に値します。ぜひとも、その直向きな向上心に私も協力させて頂きます」
ポロンはそのように述べるとトールの背中に抱きついた。
「私はシュティルの森へ着くまでは重りとなって、微力ながらもトールさんのお手伝いをしたいと思います」
「あ!私も手伝うのです」
私はポロンの背中に抱きついた。
「お……お前ら何しとんねん」
「トール、自分の言葉に責任を持ちなさい」
「……」
トールは渋々と私とポロンを背中に担ぎながらシュティルの森へむかうのであった。
楽チン楽チン。