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幼女無双~魔王の子供に転生した少女は人間界で無双する~  作者: にんじん
クラーケン討伐編

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ビックウェーヴ

 港に戻ると、フリューリングは駆け寄ってきた。


 「ロキさん、作戦は成功したのでしょうか」

 「はい、クラーケンは退散致しました」

 「よくやったぞい」

 「力戦奮闘だったな」



 フリューリングたちには私たちの戦いの様子は見えてはいない。クラーケンが暴れ出すと大波が発生するので、かなり離れた場所で待機していたからである。もしも、港の側から見ていれば、クラちゃんが手を振った様子など一部始終を見られていただろう。安全な場所へ避難させておいて正解だった。



 「明日は海鮮丼祭りやで」

 「そうです。今回の報酬は海鮮丼祭りの開催を要望致します」



 トールとポロンはフリューリングとゲーネンに直訴する。



 「ゲーネン様、今日はキューカンバに平和が戻った記念すべき日となりました。お2人の要望を叶えることはできるのでしょうか」

 「もちろんだぞい。今から漁は解禁するぞ~い」

 「重見天日だな」



 誰も異論などない。むしろ歓迎すべき提案だ。



 「さっそく、各店へ出向いて参加者を募りたいと思います」

 「費用はワシが持つぞい。盛大に海鮮丼祭りを開催するぞ~い」

 「迅速果断だな」

 


 明日の海鮮丼祭りの開催のためにフリューリングは素早く行動した。



 「ポロン、俺達も明日の海鮮丼祭りへ向けての最終調整をするで」

 「もちのろんの助です」



 トールとポロンは颯爽と飲食街へ姿を消した。



 「ルシスちゃん、私たちは宿屋へ戻りましょう」

 「はいなのです」


 

 私とロキは宿屋へ戻る。こうしてクラちゃんのわがままで振り回された決戦も無事に終結したのであった。


 次の日、クラーケンが港から去ったとの知らせを受けた町民たちは歓喜に沸いた。そして、今日の夕刻に海鮮丼祭りが開催されると発表されると漁師たちは、我さきと漁船に乗り込み漁へ出る。一方、フリューリングを主体として、町を守る自警団(ノブレスオブリージュ)が海鮮丼祭りを開催する港での出店の設置作業を開始した。町は海鮮丼祭りの開催のためにとても活気づいていた。



 「暴食さんのおかげで町に活気が戻りましたね」

 「そうだぞい。クラーケンが出てからは町の雰囲気も悪くなっていたぞい。だが今日はみんな生き生きとした顔つきで楽しそうだぞい」

 「雲外蒼天だな」



 もう海鮮丼祭りはトールとポロンを喜ばすための祭りではない。海鮮丼祭りはキューカンバに活気を取り戻す奮発剤となり、町の住人たちを笑顔にする特別な祭りへと変貌していた。



 「すごい祭りになりそうね」

 「はいなのです」



 お昼を過ぎる頃には、港にはたくさんの出店が立ち並ぶ。まだ海鮮丼は用意できていないが、ステーキ串や焼き鳥、ヤキソバなど前世でなじみのある食べ物を販売する出店が並んで、海鮮丼祭りの前祭りが開催されていた。私とロキは昼飯を食べていなかったので、出店のお食事を楽しんでいた。



 「美味しいゲソ。これも美味しいゲソ。これもまた美味しいゲソ」



 私の背筋が凍る。この声は……。



 「ロキお姉ちゃん、少し席を離れるのです」



 私はヤキソバを口に頬張った状態で、急いで席を外して走り出す。もちろんあの声が聞こえた方向へ。



 「これも欲しいゲソ。これも欲しいゲソ。あ!これも欲しいゲソ」



 道場破りの如く立ち並ぶ出店の食事を食べつくす白髪のツインテ―ルの女の子を発見した。もちろんこの女の子はクラちゃんだ。



 「クラちゃん、何をしているのですかぁ」

 「わ~い。ルシスちゃんゲソ」



 クラちゃんは私のお腹へダイブしてお腹をギュッと握りしめる。私は思わずヤキソバを吐き出しそうになる。



 「クラちゃん、苦しいのです」

 「ルシスちゃん、昨日はありがとうゲソ」



 クラちゃんは私の話など聞いていない。私は強引にクラちゃんを引き離してから、クラちゃんに尋ねる。



 「港から離れる約束だったのです」

 「私も海鮮丼祭りに参加したいゲソ。除け者は嫌だゲソ」



 クラちゃんは子供のように地団駄を踏む。人間の姿なので地面が揺れることもなくただの駄々っ子だ。



 「約束は守って欲しいのです」



 私は少し大きめの声でクラちゃんを叱りつけた



 「ゲソン……」



 クラちゃんは瞳に大粒の涙を浮かべて悲し気な顔をする。



 「わかったなのです。海鮮丼祭りが終わったら海底まで潜って、誰にも見つからないように帰るのです」



 クラちゃんの悲しそうな顔を見た私はすぐに帰るように言えなかった。



 「ルシスちゃん、大好きゲソ」



 クラちゃんは満面の笑みを浮かべて喜んだ。



 「私は仲間の元へ戻るので、ちゃんと海鮮丼祭りが終わったら帰るのですよ」

 「ゲソ――――」


 

 私はクラちゃんと別れてロキの元へ戻る。



 「ルシスちゃん、おかえり」

 「ただいまなのです」


 「ちょっと聞いてよ、ルシスちゃん。また大食い少女が出没しているそうよ」

 「そ……そうなのですか?」



 私は知らないフリをする。


 「海鮮丼祭りまでに少女の胃袋が満足してくれるといいわね」

 「はいなのです」


 私はロキと一緒に食事を終えるとキラキラと輝く海を見ながらたわいもない話をしていた。



 『ヒュルルルルル、ドォォォォン!パチパチパチ』



 急に打ち上げ花火が上がった。


 

 「今から海鮮丼祭りを開催致します。町長からご挨拶をしていただく予定だったのですが、皆様の要望をお聞きして、町長の挨拶は無しとさせていただきます」

 「ひ……酷いぞい」

 「取捨選択だな」



 時刻は18時になり、一斉に海鮮丼が並ぶ。海鮮丼祭りということで、器からはみ出すほどの約10種類以上の肉厚刺身を盛り付けた海鮮丼など店によってオリジナリティあふれる海鮮丼が選びたい放題である。



「みなさん、海鮮丼はゲーネン様のおごりとなりますのでお腹いっぱい食べてください」

「うぉぉぉぉ~~」



 町民たちは歓喜の悲鳴を上げて、我さきへと出店に走り出す。



 「私たちも呑気にしていられないわね」

 「はいなのです」



 私たちも急いで海鮮丼ビックウェーブに乗った。




 

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