巨人と旅人とプロポーズ
昔々、巨人が一体いました。
その巨人は大きな指輪を作りました。そこには大きなダイヤモンドも付いています。
プロポーズに成功した巨人は、妻と小さな町を作りました。
ー100年後ー
巨人町の長老は困っていました。
どうやったら、祖先の想いを遂げることが出来るのだろう、と。
祖先の巨人は死ぬ前に言い残しました。
『この大きな指輪をプロポーズに使っておくれ。そうしないと死ぬに死にきれない。』
それからその巨人は亡くなりましたが、魂はまだその町に居座っていました。
そして一年に一度、生贄としてその魂に人間を1人差し出さなければなりませんでした。
なんとかしてその指輪を使おうとしますが、大きすぎて使えません。
また、年々人のサイズは小さくなっていました。
指輪は縮むことはなく、そのままの大きさで、縦に置いてありました。
下の部分が少し埋まっているので倒れてくることはありません。
また、ダイヤモンドは一番空に近い、てっぺんにありました。
100年も経っているので、ダイヤモンドも輝きを失っていました。
長老は困っていました。
ああ、あと半年もすれば生贄を差し出さなければならない。
どうしたものか。
あんなサイズの女性なんてもう現代いるわけもない。
そう思っていたところに旅人がこの町を訪れました。
旅人は爽やかな青年でした。
青年は長老に言いました。
「プロポーズがしたいのですが、アイデアが浮かびません。何かヒントをいただけないでしょうか。」
「それなら、あそこに巨大な指輪がある。それを使ってみよ。」
青年は驚いた表情で巨大指輪を見ました。
「上にある塊はなんですか?」
「あれはダイヤモンドだよ。昔は輝いていたそうだがな。」
そう聞くと、旅人はハッと何か閃いたような顔ですぐに指輪の元へ行きました。
旅人はなんとか指輪の頂上まで辿り着き、ダイヤモンドを毎日毎日、磨き続けました。
雨の日も風の日も、落ちそうになることがあっても毎日欠かさずに磨き続けました。
そして間も無く、生贄を差し出さなければならない時期です。
旅人が毎日磨き上げた甲斐もあり、ダイヤモンドはピッカピカになりました。
そしてその日の夕暮れ時、旅人は、指輪の影の真ん中に恋人を呼び出しました。
そして夕日の光は巨大指輪のピッカピカのダイヤモンド部分を通過した瞬間、虹となりました。
虹はその指輪の影の範囲全てに降り注ぎました。
そして旅人は言いました。
「指輪は無いけど、この降り注ぐ虹のような日々を約束します。結婚してください。」
恋人は、婚約者となりました。
そして旅人は長老にも感謝されました。
これで生贄を捧げなくて済むとかなんとか。
旅人は、長老が何を言っているか分かりませんでしたが、プロポーズ成功を素直に喜びました。
巨人の魂は、虹の雨を浴びて浄化されました。
おしまい。