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第94話 カケル、海外へ

 「・・・んっ・・・」


 ゴーというエンジンの唸るような音で俺は目を覚ました。

 椅子に座らされており、辺を見渡すと人はおらず、どうやら乗り物に乗っているようだった。


 「あれ?・・・ここは?」


 確か俺は今日、ギンとか言う奴と戦ってそれから・・・思い出せねぇ。


 「お、起きたね。おはよう」

 「おう、おはようじゃなくて!ここ何処だよ!?」

 「僕の家のプライベートジェットだけど?」

 「は!?プライベートジェット??」


 金持ちが持ってると言われているあの空想上の代物をこの女は持っているのか。

 

 「ん?てことは・・・ここ上空じゃねーかー!!」

 「そだよ。君は今から僕らの国へ行ってもらいます。お偉いさん方がどうやら君に会いたいそうで」

 「知るかハゲ!とっとと俺を返せ!こちとら頼まれた依頼・・・はないか、葵との約束・・・もないか、あ、えーと・・・あれ?もしかして俺って暇・・・」

 「じゃあいいね。もう少しで着くからしばらく待ってて」


 そう言ったギンは椅子を倒してアイマスクを装着して眠りについた。

 いきなり拉致られてどっかに連れて行かれるのに待つわけがなく、俺は席を立ち扉らしき場所を蹴り飛ばして開けた。

 

 「うお、高いな・・・」


 プラジェ(プライベートジェットの略)は思ったよりも高く飛んでいた。水面は辛うじて見える程度で、カケルはそっと椅子に座り直した。


 「いやね、あれくらいなら死にはしないんだけどね?まぁせっかくだし、少し行ってやるか的なノリだよね・・・」

 「あの、寒いんですけどって扉壊したね!?」

 「いや出れるかなって思って」

 「馬鹿なの!?早く何かで塞がないと!てゆうかよくなにかに掴まらずに立っていられるね!?」


 扉からは風が外に向かって流れており、次々と荷物が外に出てっている中、カケルは変わらずそのまま突っ立っていた。


 「まぁこの程度は俺からしたらそよ風だからな。てゆうかお前の魔法で塞げばいいだろ?」

 「あー無理だね。僕は雷魔法しか使えないから」

 「はぁ?クールは何か沢山使ってたぜ??」

 

 かつてカケルが戦ったクールは火や水、土等の多彩な魔法を使いこなしカケル達を苦しめていた。

 その為、カケルはギンも同じく色んな魔法を使えると考えていた。

 

 「あの人は正真正銘の天才ですから。通常、魔法の扱える属性は一人につき一つなんですよ。まぁ例外はありますけど、それでも二つか三つがせいぜいですよ」

 「じゃあこれどうすんだよ」

 「いや知らないよ」

 「はぁ、まぁ取り敢えず、よっと」


 仕方がないので側にあった椅子を何個か取り外して、壊してしまった入口をそれで塞いだ。


 「ふぅ、これで何とか何だろ」

 「なるけど、これ壊した分は弁償してよ?」

 「・・・え?いやそうかまぁそうだよな。いくら?」

 「うーん、多分これくらい?」


 ギンから見せられたスマホにはカケルでは支払うことの出来ない程の金額が映し出されていた。

 

 「べ、弁償は・・・」

 「大丈夫。君が僕の言う事を少しだけ聞いてくれるなら壊した事はチャラにしてあげるよ」


 ギンはにこやかな笑顔を俺に向けながら脅しかけてきた。もしかしたら、全部計算していたんじゃないかとさえ思ってしまう笑顔だった。


 「くそっ、分かったよ。言う事を聞くよ」


 肩の力を抜いて俺は椅子に座り込んだ。そもそも何故、俺がお偉いさんに呼ばれているのだろうか。

 魔法使い関連の事で言えば俺は今まで傭兵の奴とクールとしか戦った事はない。呼ばれるような事はしていないはずなのだが。

 まぁ細かい事を考えても仕方ないか。


 「で、これは何処向かってんだ?」

 「僕達、魔法使いの国イギリスだよ」


 イギリス、その言葉を聞いた瞬間、カケルは脱力しきっていた体に力が入り、椅子から飛び上がった。


 「待て待て、俺明日も学校があんだが?」

 「そこは安心して、僕が留学の手続きを済ませておいたから」

 「じゃあいっかってなるかい!!アホかお前!?何で俺がイギリスなんか行かないと、」

 「弁償する代わりと思ってさ」

 「うぐっ・・・」


 そもそも俺は体育以外の成績は一か二しか取ったことがない男だ。英語何て一をつけるのも烏滸がましいとさえ言われたことがある。


 「英語ひでぇのにイギリス語なんて話せるか!」

 「あのまぁ色々言いたいのですが、取り敢えずイギリスは英語ですよ・・・」

 「あぁ」


 ギンの俺に対する評価が今一瞬で地に落ちた気がする。この話題はこのまま続けていては非常にまずい気がしてきた。

 

 「・・・あ!そうだ、なぁ魔法って俺にも使えるのか?」

 「ん?んー多分無理だろうね。君には魔力根が無さそうだし」

 「何だその大根みたいな名前のやつは」

 「根しかあってないよ。魔力根は魔力を生成する器官の事だよ」

 「あーなるほどな。魔力根ね、はいはい何それ」


 英語もそうだが、理科なども俺は成績が一だったので、そんな器官がある事は勿論知らない。と言うか日本では絶対習ってない気がする名前だった。


 「これはあって初めて魔力を生成し魔法を使う事が出来る器官で心臓付近にあるよ?知らないの?」

 「知ってたら聞かねーよ」

 「それもそうか。これがないと魔法は使えないんだ。魔力あっての魔法だからね」

 「その目もか?」


 あの時、クールが魔法を使う度に目の色もその魔法の種類によって変化していた。そして先程、戦ったギンもそうだった。


 「正解。僕は雷魔法を使うから目の色が黄色なんだ。クール見たいに何個も使う人は使う度に色が変わるけど、基本的には一番適正があるものの色になる」

 「へぇ、なるほどな。じゃあイギリスにはお前やクールみたいなのがうじゃうじゃいるってことか」


 そう発した時、微かにだがギンの顔が曇った。


 「あー、それはそうなんですけど。まぁ行けばわかりますね」

 『ギン様、もうじきイギリスへと到着します』

 

 ギンがそう言うのと同時にアナウンスが入り、窓の外を見てみると噂に聞いていたビッグベンが目に入った。


 「さて、じゃあ改めてようこそ!魔法が使える者にとっての楽園、使えない者にとっては地獄である魔法大国イギリスへ」

 「・・・え?使えないよ俺?」

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