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第93話 異邦からの来訪者②

 「あーあ、びしゃびしゃじゃないか」

 「そりゃお前が悪い」

 「酷いこと言いう、ねっ!!」


 濡れた手を俺の方に向かって、野球のオーバースローのように振りかぶった。

 最初は何をしたのか分からなかった。しかし、その意図は直ぐに理解できた。


 「いっでぇぇ!?」


 先程と同じ静電気の様な痛みが今度は複数にわたって全身を駆け抜けてきた。


 「さぁ!どんどん行くよ!」


 更に続け様にオーバースローを行い、カケルは次々と全身にイナズマが走ったような痛みを感じた。


 「くっ、何が・・・」


 痛みを感じる手のひらを見てカケルは、自分の手が少しだけ濡れている事に気がついた。


 「まさか・・・水を投げ飛ばしてんのか?」

 「ご名答。せっかく濡れたからね。活用させていただきましたっと」


 だが、水を投げただけであの痺れが来るのか?いやさっきからあいつの攻撃を喰らうたびにピリッとした痺れがきていた。


 「雷か」

 「正解。私は雷魔法を得意とする魔法使い名はギン。よろしくね?」

 「なるほどな。だったら、痺れる水を放つのも分かる。水は電気を通すからな。後よろしくはしたくない」

 「小学生でも分かることをドヤ顔で言って恥ずかしくないんですかぁ?」


 ・・・ドヤ顔してたのか俺。少し恥ずかしくなったが、まぁつまりあいつが濡れてる限りアレが来るというならやる事は決まってる。


 「逃げるっ!!」


 そう一言言い残し、ファミレスを背にカケルは走り逃げ出した。


 「えー・・・」

 「とにかくあいつが乾きゃいいんだからな」


 今は夏休み終わりと言ってもまだ夏。太陽は変わらず俺たちの上でギラギラと輝いてる。

 ならあいつに日の光を当てさせればその内乾く。


 「逃さないよ?」

 「えっ?」


 しかし振り向くと後ろには依頼人が笑顔で追いかけていた。

 マジか、俺はこう見えて足には結構自信があったのだが、ギンは更にスピードを上げ俺に並んだ。


 「お前、足速いのね?」

 「まぁ走るの得意だからね」

 「そうか、よッ!!!」


 並走して走るギンの足を止めるためにカケルは地面を強く踏みつけ、大地を砕き足場を悪くさせた。


 「おっとっとと、なるほど、力は聞いてた通り異常だね。これが噂に聞くnoiseと言う奴ですか」

 「へへっ!悪いな!先行くぜ!」


 ギンを振り切ったカケルはそのまま走って人が多い大通りに飛び出した。

 理由は一つ目は人混みに紛れて時間を稼ぐためだ。


 「なるほど、この人混みで逃げ切るってことだね?」


 少し遅れて現れたギンは周囲を見渡した後、両手をそれぞれ前に出し、指先からバチッバチッという音を立たせ、それは大通りにいる人達が持つスマホへと流れた。


 「おわっ!?」「え、なにこれ!」「いった!静電気?」「何だいきなり!?」「あいたー」


 スマホからスマホへと流れていき、人混みの中を走るカケルの背中を襲った。


 「がッ!!?」


 全身を先程以上の痛みが走りカケルはその場で転がり倒れ込んだ。


 「う、ぐっ・・・なにが・・・」

 「みっけ!」

 「お前、さっきからバチバチって、いてーよ!」

 「仕方ないでしょ。雷なんだもん」


 全身を未だ駆け巡る、痺れが俺を先程から動きを鈍らせてしまっている。


 「敗北、認めてくれるかな?この街は電気が至る所に通っているからね。雷魔法が得意な僕にとっては独壇場という訳だね」

 「くそ、場所選びミスったな・・・」


 逃げるために来た場所がまさか相手の得意エリアだとは、今日はケツにかんちょうされたりして運がない日の様だな。


 「・・・んっ?」

 「?」

 「オラァァァァァ!!」


 地面に転がっている石ころを拾い上げ、毎度お馴染みのやり方でギンに投げ飛ばした。


 「ちょっ!?危な!」

 「ついでだ!」

 「くっ!?目に土が!?」

 「もういっちょ!!」

 「がはッ!!」


 カケルは土を掴み、ギンの目に向かって投げつけた。隙ができた瞬間、腹を蹴り飛ばし、ギンが仰け反るのを確認すると、直ぐに走り出した。


  ◇


 「うし、ついた」


 走って向かった先はカケルが通う高校だった。ちょうど今は下校時間ということもあり、学生の数はさっきの大通りよりも少なくなっていた。


 「ここなら俺が欲しいものが全部ある。まずは」

 「逃がさないっていっただろ!」

 「来たか」


 カケルの後方から物凄い速さで走りながらギンが迫って来ていた。


 「こっちだ!追いついてみろ!」

 「何のつもりか知らないけど!」


 ギンはポケットからスマホを取り出し、カケルが気がついた時にはその姿を消していた。


 「あいつどこに・・・?」

 「ここだよ!」

 「うしグッ!?」


 カケルは自分の背後に移動してきていたギンに背中を蹴り飛ばされ、またしても全身に痺れが駆け回った。


 「お前、自分も移動出来るのかよ!?」

 「体を雷へと変換する魔法だよ。ミスをしたらそのまま消滅する魔法だけどね?」

 「チッ!」


 回転しながら起き上がり、カケルは直ぐに目的の場所に走り出した。

 逃げてばかりのカケルに対し、ギンは少し苛立ちを覚えながらもそれを再び追いかけた。

 

 「図書館発見!!」


 校内に入ったカケルは二階にある図書館の扉を開け、本棚から一冊の本を取り出しページをめくった。

 

 「お、これだ。悪りぃこれ借りてくな!」

 「あいよ〜」


 図書館を出たカケルは直ぐに次の場所に移動しようと右を向くと、階段方面にギンが立っているのを目にした。


 「いい加減、逃げずに戦え!雷魔法"雷獣砲"」

 

 ギンは両手を前に出し、手から黄色い閃光を放った。それはまるで獣の雄叫びのような音を上げながらカケルに向かっていった。


 「よっと」

 「ッ!?窓の外に?まだ逃げるのか!」


 カケルはそれに対して窓を開け、素早くそこからプールに向かって飛び降りていった。

 プールの中央辺りに落ちたカケルは直ぐに出るために泳いで上がろうとした。


 「残念だけど、これでチェックメイトだよ?」

 「・・・お前、本当に早いな」


 しかし、カケルが上がろうとした場所には既にギンが立って、プールの中に指を入れていた。


 「君は逃げてばかりだね?本当にあのクールを倒したの??」

 「うるせーなー。てか、プールから出たいからそこ、どいてくんね?」

 「残念だけどそれは無理だね?君は今水で濡れてる。この意味がわかるかい?」

 「・・・」

 「僕の言うことを聞いたら電気は流しませんけど、どうしますか?」

 「はっ!クソ喰らえだボケ」

 「残念」


 濡れた腕をプールから出し、中指を立てながらカケルそう返答した。

 ギンはそんなカケルを冷徹な目で見ながら、雷をプールへ放った。バチッバチッと今日一番の大きな音を立てながらプールの水面には電気が飛び跳ねた。

 雷が消え水面に煙が立ち上がり、カケルが浮かび上がったのを見て、ギンは勝利を確信した。


 「これで、」

 「終わり、なわけないだろ!!」

 「なっ!?」

 「オラァァァァァ!!」


 ザバンッと言う音が上がり、雷を喰らって死んだと思ったカケルが不敵な笑みを浮かべながら、ギンに向かって拳で殴りつけた。

 傭兵すら二撃で倒すカケルの剛腕をモロに受けたギンはフェンスを凹ませながら、そこに激突した。


 「くっ、何で・・・雷は、プールを・・・水を、」


 たった一撃で立ち上がる事は愚か、言葉を発する事さえ上手く出来なくなってしまった。


 「お前、イオンって知ってる?スーパーの事じゃないぜ?」

 「い・・・おん・・・?」

 「えーと、ね・・・この本を見てみな」


 ギンの元へとプールから上がり、近づいて来たそカケルはそう言って、服の中に隠していた一冊の本を取り出した。


 「それ・・・は・・・?」

 「"バカでも分かりすぎる科学の本"って奴だよ。これによるとな、えーと・・・プールとかには電解質って奴が含まれていて・・・何かね、それがあるから水が電気をね・・・通すらしいよ」


 本をチラチラと読みながらカケルはギンに向かって得意げに説明した。


 「つまり、それが無くなれば水は電気を・・・通さなくなるんだって」

 「そん・・な・・・」

 「何だ知らなかったのか?そして、これがそのイオン?って奴を分解させた装置だ」


 カケルはポケットから四角い装置を取り出した。


 「これは俺の知り合いが作った装置でな。これを起動させたらなんか、分解できるらしい」

 「それを、使って・・・」

 「正解。俺もよく分かって無いんだけどな。補習の時にそんな感じの事聞いたのを思い出してな。確認するための本と実行できる水場があるここまで誘導したってわけ」


 魔法を使うギンにとって科学というものは多少かじれば充分な代物だと教えられてきた。

 しかし、その魔法使いが誰しもが持つ認識そのものが敗北へと繋がったのだなと思い笑みを溢した。


 「なるほど・・・それで、今もまだ効果は持続中なの?」

 「ん?いやもう元に戻ってると思うぜ?」

 「じゃあこれで僕の勝ちだね?」

 「ん?・・・あ、」


 カケルは自分が勝ったと思い完全に油断し、自身の靴にギンの靴のつま先が当たっている事に気が付かなかった。

 濡れた体にギンは自分が出せる最大威力の電撃をカケルに向かって放ちカケルはその場で倒れ込んだ。

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