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第89話 無職の猿

 どうも皆さんこんにちは元申の十二司支の猿條沸です。

 あの時、侵入してきた奴らの一人に殴られてから完全に気を失って、目が覚めたらまさかの全部終わって俺は指名手配を受けて、NouTubeも大炎上からの閉鎖、現在絶賛逃亡生活を送ってます。


 「はぁ〜、俺の人生どこで間違えたんすか・・・」


 元々、クールの元にいたのは自分がもっと目立つ為だけだった。それだけなのにまさか世界を終わらそうとしていた組織だったなんて。


 「ありえねぇよ、そりゃねぇすよ」


 あの時、あの場所にいたメガネ、桜花の二人は多分計画を知っている感じだった。つまり、一部の人達はそれを知っていた。


 「それって俺みたいに事情知らない奴は最初から捨て駒だったって事じゃないっすか。はぁーどう思います??」

 「うっ・・・」「あっ・・・がっ・・・」

 「ゲホッ、ゲホッ!」


 猿條は床に転がる数人の不良達を見て、質問をしたが誰もそれに返答する者はいなかった。


 「質問の返事くらいしっかりとして欲しいっすよ。まぁいいや、とりあえず財布の中身は全部貰いますね〜」


 考えても仕方ないと猿條は立ち上がり、不良達の持っていた財布の中身を全部取り上げて、その場を後にした。


 「はぁー、最近ため息ばかり吐くようになったっすね。それにしても財布の中身今回はしょっぱいすね」


 猿條は既に何人もの不良から金を盗んではその日を凌ぐといった生き方をしており、その界隈では少しずつ有名にもなってきていた。


 「んーこれから先、どうするっすかね」


 公園のベンチで座って今後の事を考える。

初めは自分をここまで陥れた、あの時の侵入者に復讐してやろうと思ったが、そもそも誰なのかも覚えてないし、顔だってそんなに見ていなかったから探す手が全くない。

 もういっそ銀行強盗でもしてやろうかと考えていた時だった。猿條の足元に青いボールが転がってきた。


 「あ、すんませぇーん!おっさんそのボールとってぇー!」

 「あの人どっかで見た事ないかyo?」

 「そうでごわすか?」

 「いてててて、って誰がおっさんすか!!」


 ボールを投げたと思しき少年たちはボールを自分から返してもらう為に近づいてきた。


 「ん?あんたどっかで見た事あんだけど気のせいか?ミュー、ズズ来てみろよ!」

 「確かに見た事ある気がするyo」

 「オラも確かに見覚えが、ある気がするごわす」


 やばい、子供とはいえ俺はNouTube登録者200万人を持っていた男だ。

 気が付かない筈がない。


 「あ、えーと、そう!そうなんすよ!よく誰かと間違えられるんすよ!!本当にもう困っちゃうすよね!!あははは!」

 「あっそ、なぁいいからボール返してくれよ」

 「こんのガキッ!」


 最近のガキはどんな躾をされているのかと思う程、生意気だった。

 思わず手が出そうだったが、これ以上の厄介ごとはごめんだったのでボールを渡して、そのままその場を後にした。


 「なぁ、あいつ怪しくね?」

 「確かにだyo」

 「追いかけるでごわすか?」


 その場に残された三人は歩いて去っていく猿條を見て、尾行する事にした。

 公園を出た猿條は三人の尾行に気がつかないまま、空を見上げながら歩いていた。


 「・・・いっそ自殺でもするっすかね」

 「おい、あいつ今物騒な事いったぞ?」

 「確かに自殺とかいったyo」

 「危ない奴でごわすかね?」


 空を見上げながら歩いていると猿條の前に黒いバンが現れ、中から数人の黒い服を着た男達が出てきて猿條を取り囲んだ。


 「なんすか?あんたら?」


 猿條が怪しんでいるとその後ろから先程、財布を奪った不良達が現れた。


 「あーなるほど、仇討ちって奴っすか?」

 「お前さんに随分とこいつらが可愛がられたって言うからな」


 黒いバンから最後に出てきたモヒカン頭でイカつい顔をした、いかにもの姿をした男性がタバコを吸いながら現れ声をかけてきた。


 「一応、言っとくっすけどそっちが最初っすよ」

 「そうなのか?ならそいつら埋めとけ」

 「え!?ちょ、あ、マガツの兄貴!待っ、」


 突然、そんな事を言われた数人の不良は頭を後ろから殴られ倒れた。

 それを黒服達は車に放り込んだ。


 「じゃあ、お前さんも乗って貰おうか?」

 「え?何で俺も?」

 「連帯責任じゃアホ。どの道最近いい取引先を失ってオヤジに怒られて腹たっとんねん。だから頼むわ、なぁ申の十二司支はん?」

 「ッ、」


 知られていた。いやNouTuberだったのだから当然だろう。

 それに恐らく取引相手はクールだったのだろう。あの人は色んな所の奴らとよく取引を行っていた。今にして思えば、あれはあのでっかい装置を完成させるためだったのだろう。


 「行くと思ってんすか?」

 「おたくが行かないと後ろのガキ共を代わりに連れてって売り捌くだけやぞ?」

 「後ろ?」

 「離せよタコ!」


 後ろを振り返るとさっき公園であった三人の子供達が黒服の奴らに捕まえられてこちらに連れて来られていた。

 自分には関係ない子達だ。ほっといてそのまま帰ればいい。そう口に出そうとした猿條だったが、何故か声が出なかった。


 「どうする?」

 「うっ、、、」


 いったら確実に責任を取らされてあの世行きだ。見捨てる一択しかないに決まっている。

 それなのに猿條は捕まっている子供達を見てため息を吐いた。


 「はぁー、そうすね。じゃあ第3の選択で!」

 「あぁ?うおッ!」


 マガツの兄貴と呼ばれていたモヒカンの男は突然、後ろに何かによって飛ばされ、車に背中を強打した。


 「「「「「「兄貴!!!」」」」」」

 「おたくらもよそ見しててええんすか?"念力"」


 猿條は飛ばされた男を心配して近づいていた男達を自身のnoise"念力"でまとめて吹き飛ばした。

 続けて、後ろで三人の子供を捕らえていた男に向けて、いつの間にか手にしていた棒を使って喉仏を叩きつけて子供達を解放させた。


 「つ、いてぇ〜。なるほどあんたはんもnoise持ってたって事かいな」

 「そうっすよ?降参するなら今がちゃんすっすよ?」

 「そんな勿体無い事するわけないだろ?noise保持者はいい金になるんだからなぁ」


 男は手を二回叩いた。

 猿條は何だと思い一応警戒していたが、突然上から降ってきた痛みに地面に倒れた。


 「ツッッ!!??」

 「ようやった」


 上から降ってきたのはどうやら先ほどの子供達と年の変わらない少女だったらしく、手に鉄パイプを持っていた事からそれを使って殴られたのだろうと猿條は思った。


 「ようやった、ようやった。どうだ?これはうちで買ってるnoise保持者だ。まだ九歳、だったかまぁ忘れたんだが、中々いい戦闘センスしていてな」

 「ぐッ、こ、子供の年齢忘れるなんて、クズっすね?」

 「お、おい大丈夫かよ?」

 「いいから君たちはとっととここから逃げるっす!!」


 頭を抑えながら何とか立ち上がった猿條は、後ろにいた三人の子供に向かって逃げるようにと声をかけた。


 「あのガキも逃すなよ。やれ」


 男の命令を聞いた少女は素早い動きで猿條に迫り、鉄パイプを振り回して殴りつけてきた。


 「くっ、こんの、舐めんなっすよ!"念力"!!」

 「無駄や」

 「ッ!?noiseが発動しない!??」


 猿條がnoiseを使用した筈だった。しかし、猿條のnoiseは何故か発動する事なく、それに戸惑ってしまった猿條は先程と同じ場所を少女に再び、今度は何度も叩かれ続けて倒れ込んだ。


 「あ、おい!」

 「どうなってんだyo!?」

 「オイラ達もやるでごわす!」

 「何やあいつらもnoise保持者か。丁度いい捕まえとけ」


 ガガ、ミュー、ズズの三人が猿條を助ける為にnoiseを使おうとしたが、何故かまたも使うことが出来ず、猿條が最後に見たのは三人が少女によってやられる姿だった。

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