第86話 海②
こちらも昨日、投稿予定でしたものになります。
「か、カケル!?」
「あんた達、この私を忘れて海で遊ぼうとするなんて、いい度胸してるじゃないの!!?」
「あ、ミサ・・・」
カケルが立っていた場所に、ミサは仁王立ちをして現れた。
女性陣は皆やれやれと言った様子でそれを見ており、ハヤテとダイはミサを完全に忘れていたため、カケルが自分だったらと思い背筋を凍らせていた。
「あ、やべ・・・」
「完全に忘れてたyo・・・」
「す、すごい怒ってでごわす」
「み、ミサ・・・落ち着けぇぇぇぇッ!?」
殴られたカケルは体を震わせながら起き上がり、ミサに冷静になるように言ったが、当のミサは忘れ去られていた事に憤慨しており、そのままカケルを掴んで海の遠くの方まで投げ飛ばした。
「全く、この私を忘れるなんていい度胸してるじゃない!」
「落ち着けよミサ。忘れ去られるのも無理ねぇだろ?よく周りと自分を見比べてみろよ。青ちゃんですら、少し膨らみがあるってのにお前はペタ、ペタ、ペタとそんなペタグミボディじゃ、忘れ去られても無理バベブッ!!?」
ダイが言い終わる前にミサは距離を詰めて、ボディブローをかましてカケルと同様、海の遠くへと殴り飛ばした。
「誰がペタグミボディよ」
「何で、あのダイとかいう奴は要らない一言をいったんだ?」
明らかに殴られるであろう発言を息を吐くかのように言ったダイに対してハヤテは理解ができずに困惑した。
「ふぅー。アホだからだな」
「カケルさん達大丈夫かな?」
「あんな奴ほっとけばいい」
「葵ちゃん、な、なんか機嫌悪いね?」
「別に悪くない」
明らかに不機嫌な葵を見て青は何かがあったのだろうと察し、ハヤテの肩を叩き、耳打ちで何があったのかを確認した。
「いや、確認したじゃなくて、何で俺なんだよ」
「だってさっきから葵ちゃんと一定の距離とってるし、ハヤテ面倒くさい事にはそうやって距離置くじゃんか」
「・・・」
「後たまに図星ついたら黙る。でも私だけはそうならないよね?」
「・・・」
自分の癖を全て見抜かれたハヤテは、青からも一歩距離を置こうとしたが、青は構わず詰め寄って来た為、ハヤテはため息をついて葵のことを話す事にした。
因みに青がこうして詰め寄ってくる為、どうしても距離を置く事ができないのが青の時だけそうならない真実なのだが、面倒く思ったハヤテは黙っておく事にした。
「多分だが、カケルがあの女の子の水着を褒めたのに自分のは褒めてくれなかったからキレたんだと思うぞ」
「あーなるほど。気持ち分かるなぁー、偶にいるよね、そうゆう鈍感な人。ね!ハヤテ!」
「?、あぁそうだ、な??」
妙に圧のある笑顔を向けられたハヤテは、理解していないまま取り敢えず同意した。
「・・・理解してる?」
「そうゆう奴がいるって事だろ?」
「そいやっ!!」
「ぶっ!?お前いきなりをッ!」
「ミサさーん!一緒に遊びましょー!」
それを察した青は、ハヤテの顔に目掛けて砂を思い切りぶつけて、そそくさとミサの方に走っていった。
「ふぅー。・・・彼氏、作るかな」
一連のやり取りを隣でずっと見ていた九条はタバコを一吸いしてから、雲ひとつない青空に向かって小さくそう呟いた。
その後、海の藻屑へと消えた二人をほっといて、ミサ達はハヤテを巻き込んでビーチバレーをする事にした。審判の葵がホイッスルを鳴らし、ミサと白、ハヤテとガガの二チームがネット越しに並んだ。
「これから試合始める。ルール無用」
「はーい!」
「おう!いつでもこんかーい!」
「ハァ…何で俺が・・・って待て待て、ルール無用って何だ!?」
ルール無用、その言葉に引っかかったハヤテであったが、葵はそれに反応する事なく試合を無理矢理開始させた。
「じゃあ開始」ピィィィ
「聞けよ!!?」
「いっくぞーオラァァァァ!!!」
「お、おわっ!?」
「ッ、おい!いきなりスパイク叩きつけるのは無しだ!!危ないだろ!!」
試合のホイッスルがなると共にミサはボールを高く上げてハヤテとガガのチームの方へスパイクを打ち放った。当然、ハヤテとガガは反応出来るはずもなくミサのボールは砂浜の深くまで埋まっていた。
「なんつー危ないスパイク打つんだよ・・・」
「こんなのスパイクでもないだろ。人殺せるぞ」
「頑張ってーハヤテぇー!!」
「ふざけるな!こんなの棄け、」
「おっし!次はこの俺だ!」
ハヤテが言い終わる前に今度はガガがボールを投げた。ボールはミサに向かってネットの下を掻い潜りながら差し迫った。
しかし、小学生の投げたボールと言うこともあり、ミサはそれを苦もなくキャッチした。
「おい!ルール守れ!」
「えー、だって俺ルールしらねぇーしー」
「何でやったんだよ!?」
「次行くわよー。オラァァァァ!!」
「あっ、」
再びミサが投げた殺人スパイクは、今度はハヤテの顔面に直撃し、ハヤテは鼻血を出して意識を失った。
「対戦相手が意識失ったのでミサさんチームの勝利」
「白ちゃんいえーい!」
「・・・いえーい」
「あー、負けちゃったハヤテ」
ビーチバレーをやっている場所から少し離れた所ではイリスといつの間にか帰って来ていたダイの二人が、バナナフロートで遊んでいた。
「どうだいイリスちゃん。俺の立派なバナナフロートは?」
「はい、とても楽しいです!波も心地よくて気持ちいいですね。ダイさんは乗らないのですか?」
「はっはっはっ、今乗ると俺の本当のバナナが君を襲っちゃうから今は波に揺られて落ち着かせているのさ」
「そうなのですね」
イリスはバナナ型の浮き輪に乗ったことが無かったのか楽しそうになって動かしており、ダイはそれを見ながら満遍の笑みを浮かべていた。
「あ、ダイさん」
「何だいイリスちゃん?まさかこの俺に見惚れ、」
「ボール来てます」
「え?ぶばッ!!?」
イリスに言われて後ろを振り返ったダイは、それと同時に顔に思い切りボールが直撃し、そのまま水面を二、三回跳ねながら海の中へと消えていった。
「ダイさん!」
「あーごめーん!手が滑ってー!」
遠くから聞こえて来たミサの声には微塵も謝罪の感情は込められてなく、イリスは急いでダイの救援に向かった。
「ふぅー。まったく若いな」
「お前、そう悲観するほどババァでもねーだろ」
「何だ、戻って来ていたのかカケル。何だその髪の毛、増毛でもしたのか?」
「海藻だ」
ダイと同様、いつの間にか戻って来ていたカケルは頭に海藻を被りながら九条の隣に座り込んだ。
「混ざらないのか?」
「あぁ、ミサに殺されたくないしな。それに少し気になる事があってな」
カケルはおちゃらけた雰囲気から一変して、真剣な眼差しで九条を見て口を開いた。
「それで何が目的なんだ?」
「何のことだ?私はただこの前の件の労いの為に」
「それだけの為にあんたがわざわざ二時間もかけてまで海に連れて来てくれるわけないだろ?労いなら市民プールになるだろうし、後強引過ぎたんだよ。あんたなら「そうかならいい」とかいうだろ?」
「流石だな正解だ」
「あんたなぁ」
悪びれる様子がない事はいつも通りのことであった。しかし、素直に白状した九条を見てカケルは只事ではないのだと感じた。
「話せよ。俺が何とかしてやる」
「助かる。実はな、最近この海で何百という人が行方不明となっているんだ」
「おい待てコラ、んなとこにあいつらを連れて来たのかテメェ」
「落ち着け、行方不明になる奴らは決まって人気のない所にいった奴らだ。後は湿った場所とかな」
「なんだじゃあ大丈夫か。でもよそれで何で俺が来なきゃいけないんだよ?警察だけで十分じゃね?」
「来たさ一度」
九条は淡々と答えた。
一度来たならば調査は終わっている筈なのに何故、また今度は俺や他の奴らを連れてここに来たのだろうか。そもそも行方不明者はそこで見つかっている筈なのではとカケルは思いますます、自分が呼ばれた意味が分からなくなった。
「じゃあ何で、」
「見つけたさ。行方不明者とその原因の一部を」
「一部?」
「その通りだ。そしてそれを見た瞬間、私達も海の中に連れ去られた」
「は?」
海の中に連れ去られた?いきなり何を言っているのだろうか。まるで行方不明者は皆んな海に住む生物に連れ去られたとでも言うのだろうか?
「まぁ私は幸い、直ぐに拳銃で奴の足を撃って抜け出せたんだが、他の奴らはダメだった」
「ちょっと待て、まさか海の生き物に連れ去られたのか?」
「そのまさかだ。カケル、お前はクラーケンを知っているか?」




