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第84話 風紀委員長アテネ③

 「はあぁぁぁ!!」


 アテネは長槍を校舎内で自由自在に振り回し、カケルに迫った。狭い校舎を目一杯使った槍裁きに避ける隙間はなく、カケルはただただ後ろへ下がっていくことしか出来なかった。


 「おわッと、危ねぇ」


 壁まで来たカケルはそのまま右に曲がって階段を飛び越えて窓から出ようとした。


 「逃しません!"ミネルヴァ"!」

 「何だ鳥ぃ??おわっ!!」


 しかし、アテネがどこからか取り出した鳥籠を開けると何羽かの白いフクロウが現れ、カケルの裾を足で掴んで階段を降りて行き壁にカケルを叩きつけた。


 「いっでぇ〜!!」

 「はぁぁぁ裁きです!」

 「いッ!?おわぁぁぁッ!?」


 アテネが鋭い槍をカケルに突き刺そうとした瞬間、カケルは白刃取りでその槍を止めた。


 「ちょ、おまっ、これ殺す気だっただろ!?」

 「その通りです。私もバカじゃありません。貴方が殺す気でやらなければ勝てない事くらい理解しています」


 アテネの槍を受け止めたカケルだったが、アテネの想像以上の馬鹿力によって槍は少しづつ押され始めた。


 「そもそもの貴方はこの異能が蔓延る世界でその異能が通じていない。それだけで貴方は危険な存在です」

 「くっ、・・・人を・・・勝手にぃ・・・危険物扱いしてんじゃねぇ!!!」


 槍の持ち手を掴みカケルはそれを自分に向けて動かした。アテネは自分に槍を刺そうとしているカケルの行為に一瞬、思考が停止してしまいカケルの本来の狙いに気が付かなかった。


 「ッ、しまっ」


 槍があたる直前にカケルは体を横にずらし、そのまま背後にあった消火栓のバルブを開放した。そして消火栓を突き刺してしまったアテネは放出された大量の水に押され反対側の壁にぶつかった。


 「はい、お疲れさん」

 「ぶぶぶぶッ!?ちょっ、これ、と、止めッ」

 「盾は貰ってくぜ、じゃあな!」


 カケルはそのまま渡り廊下を走っていった。

 そしてダイ達、石化された人達を置いてある体育館に戻って来た。


 「お前!まさかアテネさんを」

 「そゆこと。オラァァァァ!!!」

 「ぐわぁぁぁ!?」


 外で見張りをしていた風紀委員達を片っ端から殴り飛ばしカケルは体育館の中へと入って行った。

 体育館の中はすでに数多くの石にされた不良達が置いてあり、カケルは早速盾を破壊しようとした。

 しかし、その背後から一際高い男が現れた。


 「待て、アテネさんを破ったようだな。だがしかぁぁぁし!!この副風紀委員長である飢魔聖(きまひじり)がここにいる限り、貴様に勝利はありえ、」

 「邪魔」

 「ないぃぃぃぃぃ〜」

 「副委員長ぉぉぉ!!」

 「さぁてと改めて」

 「待ちなさい!」


 現れた副委員長の顎を殴り飛ばしカケルは改めて盾を破壊しようとしたが、今度はアテネが扉を開けて再び現れた。


 「またあんたかよ・・・」

 「あの程度の事で私が負ける筈がないでしょう」


 アテネはもう一度、槍を構えた。

 入口からカケルがいる壇上まではそこそこの距離がある。だが、アテネはそんなのものともしない跳躍でカケルの元まで飛び、持った槍で攻撃を加えようとした。

 ただ一点、彼女に落ち度があるとするならば、自分に対して屈辱的な行為を行ったカケルが許せず、冷静さを欠いていたことだろう。


 「せやぁぁぁ!!!」

 「ふんっ!」

 「えっ、?」


 アテネの渾身の一撃はカケルには届かなかった。

 物理的にはその攻撃は届いていたが、カケルはまだ破壊していなかった盾を使い、アテネの槍の一撃を受け流した。

 アテネはカケルが自分の盾を未だ持っているとは思わなかった。石化を解除されるまでは時間がかかる。それを知っているのはアテネだけだった。

 だからこそアテネはカケルが既に盾を破壊しているものとばかり思っていた。


 「そんなっ!?」

 「女殴るのは気が引けるけど悪いな」


 そう一言だけ言ったカケルは盾事、アテネの腹部を殴り飛ばした。アテネはそのまま壇上からその下の床に倒れ、着ていた鎧はカケルの拳によって盾事砕かれ制服姿に戻った。

 そのまま床に倒れアテネは咳をしながらお腹を抑え、それでもまだ立ち上がろうとした。


 「まだ、です・・・貴方達を更生させるよが・・・わた、しの・・・」


 それだけ言ったアテネは力尽き、倒れようとしたが、カケルはそれを受け止めた。


 「あんたのやる気には負けるよ。なんかあんた俺の知り合いに似てるしさ」


 自分の拳を受けても尚、自分の正義を貫こうとする彼女に何を言われても自分を通すミサの姿を重ねたカケルはそのままお姫様抱っこで体育館を後にした。


 ーー


 「ここ、は?・・・」

 「あら?起きたのねアテネちゃん」

 「み、さ?」


 アテネは起き上がり周りを見てここが保健室である事に気がついた。

 

 「何故、貴方がここに?」

 「心配で見に来てたのよ」


 恐らく、その心配というのは私のことだろう。とアテネは今になって思った。

 アテネはこの学校に少し前に転校してきた転校生だった。その時に自分よりも少しだけ早く転校して来たミサと知り合い友人という関係を築いた。

 そして少し時間が経過した頃、アテネはこの学校は自由を校風としている事からか、問題児が多いことを知り、生徒会に申請して風紀委員を設立し、不良達を更生させて配下に加えて行った。

 そして今日、この学校で一番の問題児だとミサから聞かされていたカケルとダイの二人を更生させようとしたのだが、結果はこの有様だ。


 「どう?強かったでしょあの二人」

 「ええ。一人はすぐに石化させましたが、カケルはダメでした。彼は何者なのですか」


 自分の力が通じなかった事は今までに一度も無かった。だが、彼には何も通じなかった。

 何よりも彼は最後まで本気を出してすらいなかった。まるでこちらのお遊びに付き合ってあげると言った感じで終始、こちらと戦っていた。


 「そうね、あいつはただの・・・何でも屋よ。今もほら、外でダイと喧嘩してるし」


 外ではカケルとダイの二人が掴み合いの喧嘩をしており、それを金髪の男が止めようとして殴り飛ばされていた。

 

 「カケル、盾壊した後、貴方を恨んでいた風紀委員の一部と不良の人達を一人で止めてたのよ」

 「えっ、」

 「貴方のやり方は正しいけど、少し強引過ぎたのよ」

 「どうゆう・・・」

 「貴方の風紀委員の一部は、貴方の目を盗んで、その権力を使って色々と悪事をしてたのよ。貴方はそれ言っても信じないでしょ?だから、今日貴方からドロケイやるって聞いてたからカケル達もどうって進めたのよ」


 そう。実は今回のドロケイにカケルとダイが参加する事になったのはミサがアテネを唆しだからであった。ミサは風紀委員の悪評を知り、それが何故なのかを突き止め、後はカケルに任せる事にした。


 「貴方はこうでもしないと話すら出来ないからごめんなさいね?」

 「い、いえ。私もまさかそんな事になってたなんて・・・ミサ、貴方の言葉を聞いていればもっと早くに・・・」


 自分の未熟さを恥じるばかりだった。自分は絶対に正しい。自分の行いは間違っていないと思い他の人の言葉に耳を貸そうともしなかった。


 「ま、これに懲りたら今度からはもっと融通が聞くようにするのね。貴方少し真面目すぎるのよ。もっとあの二人みたいにはっちゃけなさい」

 「ええそうかもしれません。ありがとうミサ、目が覚めました。今度からは少し緩くしてみます!」


 本当に分かったのかどうかは定かではないが、ミサはアテネの表情を見て挫けたわけではないことを確認して静かに保健室を出て行った。


 「よぉミサ。あいつの体調はどうだった?」

 「大丈夫だと思うわ。それよりも不良達はどうしたの?」

 「ん?風紀委員なら任せた。あの副委員が後は我々がやるって言ってたぜ」

 「そ、なら安心ね。あんた達もそろそろ帰るわよ」

 「「あいあいさ〜」」


 こうして三人は夕日を後に黄昏荘へ帰って行った。 因みにその後、風紀委員会はアテネが大改革を行った事によって、悪事を働いていた者は悉く処罰を受けた。

 そして処罰もただ石化させるのではなく、手と顔だけを残して後は石化させ、反省文を書かせると言ったマイルド?なものへと変更された。

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