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第80話 否定し合う者

 地下では激しい攻防が繰り広げられていた。既に地面は崩壊しかけており、カケル達が立っていられる足場は殆どなくなっていた。更には下からはマグマが溢れる出てきており、少しでも踏み外せばマグマの中で生涯を終える可能性すらある危険地帯へと様変わりしていた。


 「オラァァァァ!」

 

 そんな中、カケルは音速を超える拳を繰り出しつつ、そこら辺にあった石を投げながら距離を着実に詰めながらクールを攻め続けていた。


 「無駄だ。炎魔法"焔獄"」


 対するクールはマグマから発せられる熱を操り、炎の玉を作り出しカケルに繰り出した。

 炎の玉はカケルが投げた石ころを跡形もなく消し炭にし、迫り来るカケルに向かって炎の玉を差し向けた。


 「んなもんきくか!!」


 迫り来る炎の玉を拳で殴り消滅させ、カケルは少し立つ場所が広い足場に着地した。


 「くっそ、やっぱ魔法便利だな。にしてもあっちぃ〜」


 既に装置があった場所は呼吸をするだけで肺が焼けるのではないかと思うくらい熱く、汗は止まることがなかった。


 「どうした?早く俺を殺さないと魔法は止まらんぞ?既に第二段階は本格的に動き出している」

 「うるせーな!俺は別にお前を殺すつもりなんて無いんだよ!・・・俺はどちらかと言うとお前を止めたいんだよ。気づかせてーんだ」

 「何を今更、俺はもう止まらない」

 「そうかよ・・・わかったよ。なら、」

 「!?、消え、だッ!!?」


 カケルは一度頭を下げ、一呼吸吸った次の瞬間、クールの目の前から姿を消していた。ほんの一瞬、瞬きをしただけだったクールは直ぐに警戒したが、気がつくと壁まで殴り飛ばされていた。


 「がッ・・・あッ・・・な、に・・・」

 「お前が言っても聞かないことはよく分かった。ならまずはボコボコにしてから話を聞いてもらうことにするよ」

 

 何が起きたのかクールには分からなかった。ただ気がついたら顔に痛みを感じ壁に激突していた。

 

 「ぐっ・・・なるほど、お前もまだ全力を出してなかった、ということか・・・」

 「気を変えるなら今のうちだぜ?」

 「いやその必要はない」

 「そうかよなら!ッ!?」


 カケルが動こうとした時、突然部屋全体が大きく揺れ始めた。


 「何が!おわっ!?」


 そしてカケルの目の前にいきなり火柱が出現し、天井を突き破っていった。


 「これって、まさか!?」

 「あぁ、そのまさかだ」

 「!?、お前まッ、ぐあぁぁぁぁ!!!」


 完全に勝負はついたと思い込んでいたカケルはクールの声が聞こえ、殴り飛ばした場所を向いた途端、火柱のようなものが下からカケルの右腕に打ち出され、まるで焼けるような痛みを感じカケルは叫んだ。


 「ぐっ、これは、」

 「そうだ。本格的に第二段階である噴火が始まった」

 「くそっ!?」

 「そう焦るな。どの道お前はここで死ぬんだからな」

 「あ?別に焦ってなんかいねーよ。お前地下に引きこもってたから知らないだろうがな、この街には諦めの悪いバカがそこそこいるんだよ」


 ーー


 第二段階である噴火が始まった事でネオ・アストラルシティでは次々と地面からマグマが噴き出し、人々は本格的な避難を開始していた。

 人々は皆、我先にと走り大人達の悲鳴と子供達の鳴き声が黒く濁った空に響き渡っていた。


 「急げぇ!」「早く逃げないと!」「邪魔だどけ!」「何が起きてるんだよ!!」

 「ままぁ!!」 「おい!そこ危ないぞ!!」


 そして一人の泣いている少女の近くからマグマが噴き出し少女が犠牲になる瞬間、一人の男が割って入り反射のnoiseでそれを吹き飛ばした。


 「よぉ、可愛いお嬢さん無事かい?」

 「ふぐっ、えぐっ、ままぁ」

 「安心しな。お母さんの元へこの俺が送ってあげるさ。将来美人になりそうだし」


 多くの人々が逃げ惑う中、そんな中でも誰かを助けようとする者達はいた。

 ダイ達はそれぞれが散り散りになり、少しでも多くの人を助けるべく走り回っていた。


 「にしてもコレは早くしねぇとヤバいぜ」


 人を助ける為に動く。それを行うのは決してダイ達だけではなかった。


 「おい!?看守の奴ら俺達をほっといてさっさと逃げやがったぞ!?」

 「か、カケさーん!ダイさーん!ヘルプミー!」

 「おい!お前ら監獄の外で女がマグマ止めてるぞ!!?」


 監獄では自身のnoiseで炎を操り、囚人達を守る為マグマの進行を止める者もいた。


 「早く皆さん!出来るだけ船に乗ってください!」

 「安心しなさい!船は大きいですから沢山入れますよ!」

 「まさか、この船がこんな形で役に立つとは」


 海沿いでは警察によって没収されていた豪華客船を無断で開放し避難させる者もいた。


 「みんなぁー!急いで南側はまだ安全だよ!!」

 「怪我してる人は出来るだけ助けて、皆んなで生き残るんや!」

 「安心して、こっちはまだ噴火は起きてないわ!」


 噴火が起きている場所でアイドルとしての自分たちの力を精一杯発揮する者もいれば、


 「ひぃっ!?マグマ!」

 「ね、ねぇ!早く逃げよ!」

 「うるせぇ!そんなの分かってんだよ!ひっ!?来た邪魔だ!」

 「きゃっ!ちょっと!」


 女子高生が突き飛ばされ、大学生らしき男はそのままnoiseを使って地中に潜り姿を消した。


 「最低!って言ってる場合じゃなか痛ッ、嘘今ので足挫い、だ、誰かぁぁぁ!」


 女子高生が叫んでも逃げ惑う人達はそれに耳を傾ける事なく、噴き出したマグマが迫ってきていた。


 「い、いやっ!だ、誰がぁぁぁ!」

 「だ、大丈夫ですか・・・?」


 逃げ惑う人の中を通り抜け、一人の髪が長く、赤い服を来た男が彼女の手を握った。


 「あ、あなたって」

 「・・・今はとにかく逃げ、」

 「危ない後ろ!!!」

 「くっ!!」


 マグマが男のそばで噴火し、二人を巻き込もうとした時、男は女子高生を守る為、自分の体を盾にした瞬間、現れた老年の男性によってマグマは跡形もなく消え去った。


 「ほっほっほっ、無事のようじゃな。・・・ハヤテが言った事は主に響いていたのじゃな。では失礼」

 「な、なに?幽霊みたいに消えた・・・?」


 かつて罪を犯してしまいそれを償おうとする者や影ながら人々を救う者もいた。

 そしてカケル達が通う高校でも避難してくる人々を生徒会が主体となり多くの生徒が保護し、案内やマグマの侵入を防いでいた。


 「風紀委員!私は少しでもマグマの侵入を防ぎますから貴方達は生徒会と協力して来た人達のサポートをしてあげてください!」

 「はっ!ッ、アテナ様危ない!!!」


 マグマの侵入を防ぎに行こうとした大きな盾を持ったアテネと呼ばれた女性の前に、真下からマグマが噴き出したことによって宙に浮かばされたトラックが飛んできていた。


 「ふえッ!!?」


 それはアテネ目掛けて飛んできており、咄嗟の事で判断が遅れたアテネは目を瞑った。


 「あの・・・大丈夫ですか??」

 「うっ、・・・あれ?」


 死んだかと思ったアテネが目を開けると、黄色いスカーフを巻いた少年がトラックを両手で持ち上げていた。


 「あの、えっと、風紀委員の人ですよね?学校周辺は僕がここ言う大きな物を置いて固めているので、来た人を助けてあげてください」

 「え、あ、は、はい」

 「お願いします」


 少年はニコリと笑いそのままトラックを担いで校門を出て行った。


 (カケルさん、多分また事件の中心に首突っ込んでるんですよね。ここは僕が守りますから早く解決しちゃってくださいね)


 病院でも患者の避難が始まっており、院内の人々は急いで避難を行っていた。

 そんな中、病室で一人窓の外を眺める少女は自分との約束を果たす為に、恐らく今も戦っている少年を想い続けていた。


 「カケル・・・」

 「あ、葵ちゃんも早く避難しないとここも危ないわよ!!」

 「大丈夫。私はここで待ってる」

 「何を言って、」


 そこまで行って看護師は葵の表情を見て言葉を詰まらせた。


 「だって私のヒーローは必ず解決してくれるもん」


葵の表情には恐怖も不安も微塵も無かった。今この場にいない誰かを信じきっているその表情に看護師は何も言えなくなった。


 ーー


 そして地下ではクールが手をカケルの方に向けると下から再び、マグマの火柱がカケル目掛けて打ち出され、カケルはそれを避けて別の足場へと移動した。


 「お前マグマまで使うのずりぃぞ!」

 「才能の違いだ」


 クールは立て続けにカケルに向かってマグマの火柱を打ち出し、それを避け続けていたカケルだったが今度は左足が火柱の餌食となり、焼ける痛みにカケルは叫びながら次の足場で倒れた。


 「ぐっ・・・いってえぇぇぇ!」

 「どうした?こんなものか?」

 「ぐっ、」

 「足をやったか。なら逃げる事も出来んかつまらん決着だな。炎魔法"火災龍"」


 マグマが龍の形を形成し、龍は次々と足場を破壊しながらカケルに襲いかかった。


 「ぐ、やべぇ」

 「終わりだ」


 そして龍はカケルの足場に辿り着き、そのままカケルに向けて突っ込んでいった。

 足場はそのまま崩れ去り龍もマグマの中へとその姿を消した。


 「死んだか。なら、第三段階に、」

 「誰が死んだってぇ!!」

 「!?、何!」


 クールはカケルの声を聞き周囲を見渡したが、その姿は何処にもなかった。


 「下だ!下下!」


 クールはそう言われて下を覗き込んでみるとそこには崖に掴まっているカケルの姿があった。


 「バカな、あそこからここまでどうやって」

 「あの龍が来る直前に自分からあの足場を壊して崖を壁キックしていってここに辿り着いたんだよ!」

 「まぁいい、そこで死ね」

 「やらせるかオラァ!」


 クールは直ぐ様、カケルに向けて魔力弾を放とうとしたが、それよりも早くカケルはクールが立つ足場の崖を殴って破壊して足場を崩壊させた。


 「チッ、やってくれる」

 「まだ、まだぁぁぁ!」

 「何ッ!?がッ!!」


 直ぐに別の足場へと移動しようとしたクールだったが、カケルは崩れた足場や崖の欠片を使ってクールの元まで登りそのままクールの顔面を殴った。

 クールは別の足場まで飛ばされ地面を二転三転し、起き上がった。


 「くっ、ッ!」

 「おぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 「ぐわッ!!!」


 しかしカケルがすかさず崩れた足場を蹴りクールの元まで飛び、そのまま蹴りをクールの腹部に入れ地面にめり込ませた。


 「がはっ!?」


 カケルの拳と蹴りをモロに喰らったクールは何ヶ所かの骨を砕かれ血を吐きながらカケルを睨みつけた。


 「ハァ…ハァ…」

 「ゲホッ、ゲホッ、ハァ…ハァ…」


 既に二人は限界に近づいていた。カケルはクールと闘い始めてから休みなく動いた事による体力の消費に加え、マグマによる手足の火傷による今にも気絶しそうな痛みに耐えながらも戦っており、クールはハヤテ、カケルとの連戦でほぼ魔力を使っており、更にはカケルの拳を何度も受けた事によって体は既にボロボロになっていた。


 「ハァ…ハァ…どうだ!少しは喰らったか!?」

 「痛ッ、何故だ・・・何故お前がこんな世界の為にそこまで、」


 クールにはやはり理解出来なかった。目の前の男が何故ここまで自分の体を張ってこちらの計画を邪魔しようとしているのか。

 ボロボロになりながらも何故、大切だと言う人達を守ろうとするのか理解出来なかった。


 「お前がそんなのになってまで本当に救う価値はあるのか?助けにさえ来ない奴らを助けて何になる?」

 「あ?んなもん適材適所だろ。俺はコレしか出来ない。だから、あいつらを守る為に拳を振るうんだ。助けたいもん助けんだ!お前を止めるんだよ!」

 「くだらん!そんなことをしてもいつかは絶対助けられない時が来る!そんな時お前はどうするんだ!」


 現にクールは母親を助けることができなかった。そのせいで家庭は崩壊同然となり、家族というものすら失った。


 「大切なものがあれば失うんだ!そんな世界ならばいっそ、」

 「んなもん知るかぁぁぁ!!!」


 カケルは中指を立てながらクールに怒鳴り声で返答した。


 「んなもん知るか!守れない時のこと考えてどうすんだよ!?それで強くなれんのか!?」

 「お前以上の存在はこの世界には沢山いる。そんな中でもお前は同じことが言えるのか?」

 「言える!もし俺より強い奴がいて、そいつが全部奪い去ろうとすんのなら、その瞬間に俺はそいつよりも強くなって守る!それだけだ!そしてまずはお前を止める!以上!」


 それだけを言ってカケルは再び走り出した。クールは一瞬、反応が遅れてしまいカケルの拳を避けれず、殴られ膝をついた。

 大切なものがあるから世界が醜く、醜悪なものだとクールは思えてしまう。だが、目の前の男は違った。そんな世界で生きていく為に守るのだと言った。

 

 「・・・なら俺から世界を守ってみろ!」

 「がっ、!」


 クールは立ち上がり、そしてカケルを殴った。今まで魔法に頼り生きてきたクールにとってそれは人生で初めての事だった。

 それは既に魔力が底をつきかけているという事もあったが、それ以上にクールは目の前の男と同じ土俵に立って見たいと思った。

 自分とは違う考えを持ち、こんな世界に希望を持っているバカな男を正面から否定するべきだと感じた。


 「ぐっ、おぉぉぉ!!」

 「ッツ!、はぁぁぁぁ!」

 

 二人は何度も何度も殴りあい、膝をつく度に立ち上がり、目の前にいる男を止める為、そして否定する為に殴りつづけた。

 既に第二段階から最終段階でもある三段階目、地面から噴き出したマグマによる煉獄の津波が発生しようとしていた。


 「ハァ…ハァ…」

 「げほっ、ハァ…ハァ…」


 そんな中、遂に二人の体力は限界を迎えた。

 お互いもう、腕がほとんど上がらず立つ事さえままならない状態となっていた。

 二人は一歩一歩ゆっくりと互いに歩いていき、そして、


 「ハァ…ハァ…うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 「ぐっ、はあぁぁぁぁぁぁ!!!」


 両者の最後の力を振り絞った一撃は同時に放たれ、互いの頬を殴った。

 少しの間、時間が止まった様に二人は動かなかった。そしてクールが先に口を開いた。


 「・・・わか、っていた・・・世界が、悪意、だ、け・・・じゃ、ないことは・・・それ、でも俺は・・・」


 それはクールの本音だった。理解していた。自分にもまだ守るべき人がいる事も分かっていた。

 だが、クールはどうしても憎しみを捨てる事が出来なかった。

 

 「・・・あぁ、分かってるよ」


 カケルは葵のように心は読めない。だが、同じ傷を持つ者として理解していた。


 「ふっ、・・・俺の・・・負け・・・だ・・・」

 「あぁ・・・俺の・・・勝ち・・・」


 二人はマグマが煮えたがる中、意識を共に失い同時に倒れた。

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