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第79話 最害魔法

 「くそっ!ハヤテ起きろ!お前らいい加減消えろよ!あと二人!」

 「無駄だ。神経に直接電撃を喰らわす魔法だ。むしろあの体で二度も耐えた奴を称賛するべきだ」

 「突進連鎖!くそっ、ハヤテ目を覚ませ!ツっ!?」

 「チッ、まずいな」

 「行かせはしない」


 頭から地面に落ちるハヤテを受け止めようと九条と優希は動いたが、更に分身体を増やしてきたクールにそれを阻まれハヤテは頭ごと地面に激突すると思った瞬間、直前で黒い影の様なものがハヤテの身を隠した。


 「あの黒いのって確か・・・」

 「そうじゃ!妾じゃ!」


 ハヤテの身を包んだ黒い影は人の形を成し、怨月鬼が現れた。


 「ははっ!妾をよくも黒曜石などで封じ込めてくれたな!!ハヤテが意識を失った今、この体は妾の物!たーぷりとお返しをしてやるのじゃ!!」


 怨月鬼は意識を失ったハヤテの体を乗っ取り、今度こそ自分が復活したと思い込んでいた。

 

 「さぁて!妾に殺さッ、れ、うぐっ!?」

 「何・・・人の、体を・・・勝手に・・・使ってる・・・怨、月鬼!」


 怨月鬼も予想していなかった事だった。今のハヤテは既に意識を持ち堪えることすら出来ない状態なはずなのに、ハヤテは意識を取り戻したどころか、体の主導権も取り返そうとしていた。


 「ま、まさかまだ、こんな、力が」

 「そのままでいい・・・お前の力を、貸せ」

 「妾が素直に力を貸すと?今の主ならば簡単に、」

 「お前こそもうほとんど力は残ってないんじゃないか?」


 怨月鬼はその気になればいつだって俺の体を奪う事ができた。それをしなかったのはあくまで強者との戦いを約束したからである。だが、今の俺はいつ気を失ってもおかしくない状態だ。

 それなのに直ぐにでも奪おうとしないのはあいつも黒曜石でかなり弱っているからだろう。


 「お前も俺も、殆ど力は残され、ていない。そうだろ?」

 「・・・ふむ。それで主は何がやりたいんじゃ?あの女子を助けるつもりか?」

 「あぁ。そのつもりだ。一撃だけ頼む」


 ハヤテと怨月鬼ら今現在、同じ体を共有している関係にある。そんな怨月鬼だからこそわかる。ハヤテがどんな気持ちで自分に頼み込んでいるのかも。


 「そうか・・・人間というのは変わろうと思えば変わるのだな・・・」

 「怨月、鬼?」


 そんな言葉を発した怨月鬼からはどこか後悔の念をハヤテは感じとった。

 

 「ははっ!よかろう!妾と貴様、今宵最後の大技と行こうぞ!!!」

 「そんなのわざわざやらせると思うか?」

 「ふぅー、しまった何人か突破されたか」


 ハヤテと怨月鬼の前には四人のクールの分身体が九条と優希の二人の間を縫って辿り着いて装置の前に立ち塞がっていた。


 「さて、どうする?七重奏で分身した俺達よりも俺達は相当弱体化されてはいるが今のお前に負ける程ではないぞ?それが四人だ」

 「何人いても同じだ」「ははっ!その通り!」

 「「全部まとめて叩き斬る!!!」」


 俺が今打てる技で最も強くそして速い剣技、魔刃。

 本来の魔刃は不死破滅といった怪物でさえ問答無用で殺せる剣技だとあの女は言っていた。だが今日覚えたての俺にはそれだけの洗練された技は打てない。

 だが、怨月鬼がいるならば話は別だ。細かな調整は全て怨月鬼に任せる。

 ハヤテは刀を構え、迫り来る四人のクール、いや九条達が戦っている分身体達まで狙いを定め刀を振り抜いた。


 「行くぞ」「うむ!ふるぱわーじゃ!!」

 「やらせはしなッ!」

 「「"魔刃」月光"」


 その一撃はハヤテを中心として全方位に放たれた。そして九条と優希を除く分身体である全てのクールと青が捕えられている装置を瞬く間に一刀両断し青を解放した。


 「ふぅー。驚いたな私達は斬らずに敵を斬るとは」

 「あいつ、あんな技持ってたのか・・・」

 「うっ・・・ハヤテ?」

 「あぁ、久しぶりだな」

 「うん・・・ありが・・・」


 装置から解放された青はそのまま気を失い、抱き抱えていたハヤテは静かに地面に着地をした。


 「チッ、直ぐに青を、!」

 「やらせるかよ!!」

 「ぐっ!?邪魔をするな!」

 「遠慮すんなよ!テレ屋さんか!?」


 解放された青を直ぐに回収しようと動こうとしたクールだったが、それはカケルの拳によって塞がれてしまった。


 「ははっ!ハヤテよ見事だ」

 「あぁ・・・後はあいつらに・・・まかせ・・・」


 二度の魔刃の使用に神経に直接攻撃を加える雷撃、その他の戦いの傷、ハヤテは青を抱き抱えたまま今度こそ目を閉じ意識を失った。


 「ははっ、まぁ今回だけはその活躍に免じて体は乗っ取らん・・・妾も疲れた・・・」

 「ふぅー。後は私達がやっておく、よくやった」

 「ははっ、偶には・・・信じて・・・やる・・・」


 そして怨月鬼もまた全ての力を使い果たし、札の中へと戻って行った。

 九条と優希の二人はハヤテと青を抱えた。カケルに声をかけた。


 「カケル!」

 「後は俺がこいつをぶっ飛ばしとくから九条達ははやて連れて先に地上戻ってろ!」

 「分かった。・・・死ぬなよ」

 「ふざけんな。死ぬ訳ないだろ」


 九条と優希の二人はそのままカケルの言う通り、来た入口から出てそのまま地上へと向かって行った。

 そして残されたカケルとクールの最後の戦いが始まろうとしていた。


 「さぁて終わりにしようぜ」

 「あぁそうだな。まったくどいつもこいつも俺の邪魔ばかりする。度し難い馬鹿どもだ」

 「そりゃお前が世界壊すなんて厨二臭いことやろうとしてるからだろ」

 「まぁいい。どの道お前はここで終わる。術式は今完成した」

 「ん?おわっ!?」


 カケルとクールの足元にあった魔法陣が突如、青から赤色へと変化し、大きな地響きが起きた。


 「くっ!こんなもん破壊して」

 「無駄だ。この魔法陣を破壊したとしても最害魔法は一度発動すれば止まることは無い。そしてこれが俺の持つ中でも最高位の魔法」


 「名を最害魔法"終末灼界(マグナロク)"」

 「マグ、なんだッおわっ!?おぶね!?」


 カケルが聞き返そうとした時だった。足元の地殻がひび割れていって、カケルは危うく落ちそうになった。更に先ほどの地響きもだんだんと大きくなっており、次々と地下にあるこの空間はひび割れを起こし崩壊を始めていた。

 更に・・・


 「おわっ!?ま、マグマ!!?」


 ひび割れ崩壊し始めた大地から次々とマグマが噴火し始めており、入口付近は既にマグマが噴き出し、通ることが困難になっていた。


 「これが最害魔法だ。一度発動すれば段階的なプロセスを踏んで終焉へと導く究極の魔法。俺くらいなら日本全土を終わらせるなど造作もない。そしてこれは一段階目の地殻崩壊だ。既に二段階目のマグマの活性に移っているがな」

 「ふざけんな!直ぐ止めろ!こんな事したら街の人達も犠牲に、」

 「それがどうした?どの道世界を終わらせるんだ。たかだが数万人の人間なんてどうでもいいだろう」

 「お前ッ!」

 「止めたければ俺を殺してみろ」

 「上等だ!行くぞオラァァァァ!」


 ーー


 地響きは日本全土で起き始めており、ミサや宇佐美を連れて上に戻っていた霞と合流した、ダイ達先に地上へ戻っていたメンバーは突然起きた不自然な揺れに何かが起きていると感じ始めていた。


 「んだこのいきなり起きた揺れは」

 「わからないでござる。カケル殿達の身に何かあったのかも知れませぬ」

 「ふぅー。恐らくクールの仕業だ」

 「九条ちゅわん!と誰だそのガキ」


 そして先程、クールの元からハヤテと青を連れて、優希の突進連鎖によって最短距離で地上に上がってきた九条は今起きている事を手短にダイ達に話した。


 「その魔法陣がなんかやったってことね。もう私全身ぐちゃぐちゃだから走れないわよ」

 「何言ってんだお前普通に歩いてたじゃねぇか・・・」

 「とにかく、今はカケルさんを信じて待つしか無いのですね」

 「大丈夫だよ。イリスちゅわん、あのバカなら何とかするだろ」

 (じゃねーと殺すぞカケル)


 ダイは深く開いた穴を見ながら心でそう呟いた。

 そして地下では既にマグマが吹き出し始めている中、カケルとクールの最後の戦いの火蓋が切って下された。

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