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第78話 七重奏

 「うっ・・・」

 「お、目覚ましたか。でもそのまま寝て小声で話してくれ」

 「・・・お前、何でここに?」


 妙に息がしづらく、目を覚ました俺は目の前にいるカケルの姿にまずは驚いた。

 そして次に部屋全体にクールを中心として、広がる青い魔法陣が発動していることに驚いた。


 「青ちゃん、助けにきたに決まってんだろうが。んで、早速で悪いんだが青ちゃんとついでにあそこで転がってる二人も助けてここから離れてくれね?後、そこで気を失ってる見覚えある黒いヤツ」

 「何、いってる・・・俺も」

 「お前も青ちゃん助けに来たんなら、最優先でやる事を間違えんな」


 確かに今の俺では足手纏いになるかもしれない。ならば、青や他の奴らを助けてとっととここから離れるのが先決ではある。

 だが、問題はこの魔法陣が何を引き起こすのかだ。


 「お前、一人で何とかなるのか?」

 「正直分からん。だが、あいつを止めてやってこの世界は不条理な事ばっかじゃねえって教えてやんねぇと・・・」

 「お前・・・また」


 また救おうと言うのだろうか。

 あの時の俺の様にこの男は今度も相手の何らかの事情を知ったのであろう。そして勝手に同情して救おうとしているのだろう。


 「へへっ、悪いな俺に出来ることは間違ってる奴らをこの拳で力づくで止めることしか出来ねぇんだよ」

 「別に、そんな事を聞いてない・・・」

 「まぁとりあえず頼んだぜ。俺はこの魔法を発動される前にあいつを止める!」


 そう一言言い残して、カケルは立ち上がりそのままクールに向けて走って行ってしまった。


 「おおぉぉぉぉぉ!」

 「発動する前に倒そうとしてきたか。ならば・・・炎の旋律・水の調べ・風の歌・岩の呼吸・雷の唸り・闇の静寂・光の響き・それぞれを七色の奏でよ。"元素の七重奏"!」

 「うぉ!?何だ!?」


 クールの周囲が光だしだと思った次の瞬間、その周りには七人のクールが出現していた。


 「か、影分身??」

 「呪文をまだ発動するまで時間がかかる。それまで相手しろ。いけ」


 クールの掛け声によって七人の分身クールはカケルに向けて迫ってきており、カケルもそれに応戦する為に走り出した。

 そして一人目のクールが赤く燃え盛る槍を持ちカケルへ向けて刺してきた。


 「焔槍"カリュドン"」

 「ぐっ、これ炎の槍の!?あっつ!!」

 「闇魔法"ダークロウ"」


 さらにその後ろから黒い渦を右手に発生させた分身クールは、炎の槍を受け止めていたカケルとそのクールごと闇魔法を打ち出した。


 「くっ分身ごと!??」

 「"霧傷"」

 「ッッ!?」


 ダークロウを避け体勢を立て直そうとしたカケルは突然、全身に切られたような傷が現れ血を噴き出した。


 「いってぇ!?何だこれ??」

 「岩魔法"地獄の岩弾(ヘル・ロック・ボルト)"」

 「おわっ!?まさかこいつらそれぞれの魔法を使えるのか!?」


 地面から巨大な岩の塊が無数に弾丸の様に現れカケルを襲った。カケルはそれを拳で破壊しながら避け続けたが、突然全身から汗が噴き出して後ろを振り返ってみると天使の輪の様な物をつけたクールが光を全身から溢れ出していた。


 「光魔法"太陽の輝き(サン・シャイン)"」

 「ぐっ!熱ッ!?」

 「光魔法"聖光の双剣(ディヴァインブレード)"」

 「風魔法"旋風剣(テンペスト・ファング)"」


 光と風、それぞれの刃を作り出した分身クールはカケルに向けて斬りかかってきた。


 「ちょ、調子乗んなよコラァァァァァ!!!」

 「ッツ!?」

 「もう一丁!」


 カケルは片足で地面を砕き、光の刃を持つクールを殴って下に突き落とし、砕いた地面の破片を素早く手に取り、今度は風の刃をもつクールへ向けて投げ飛ばした。

 

 「ッ!!?」

 「遅ぇ!」


 投げ飛ばした破片と同じ速さで風の刃を持つクールの背後へ周りこみ、破片を真っ二つに斬ると同時に手刀で鋭い一撃を放ち、風の刃を持つクールを同じ様に真っ二つにして消滅させた。


 「ふぅー、次!」

 「あの男、相変わらず凄いな・・・」


 カケルと分身クールの戦いを横目に倒れていた優希や九条、そして黒曜石に捕まっていた怨月鬼を回収したハヤテは最後に青を助ける為に装置の前に立っていた。


 「何だ起きてきたのか」

 「ッ!?何!」


 クールの声が背後から聞こえたハヤテは後ろを振り返るとそこには魔法陣を作り出しているクールやカケルと戦っているクール達とは別のクールがそこに立っていた。


 「何も分身が七人しか作れないわけではない。分身魔法など俺にとっては赤子の手を捻る様なものだ。こんな風にな?」

 

 クールが指を鳴らすとハヤテの周囲に今度はそのクールの分身達が姿を次々と表した。


 「くっ!」

 「!、ハヤテ!邪魔だお前ら!くそっ!」


 ハヤテは既に戦える状態ではなかった。今立っていることすらギリギリだと言うのにそんな少年の周りには絶望的な状況が映し出されていた。

 カケルは未だ他の分身クールに手こずっており、ハヤテを助ける事が出来る人間は誰一人としてここにはいなかった。


 「お前だけ妙に意思が強いな」

 「何だ、また時間稼ぎか?まぁいいだろう。あいつらは魔法属性を付与し、その代わり自我をなくして作り出された分身。俺は特にこれと言った属性を付与される事なく、だが変わりに自我を付与された分身というだけだ」

 「なるほどな・・・」

 「もういいか?いい加減お前の顔を見るのも飽きてきた。ここで死ッ!?」


 クールが手をハヤテの方に向け、魔法を放とうとした時だった。一発の銃弾がそのクールの心臓部分を撃ち抜いた。


 「ふぅー、まったく落ち落ち寝てもいられないとはな・・・」

 「まだ、生きて、」

 「俺もだ。"猪牙双破"!!」

 「ぐっ!」


 更にもう一人を隙をついて目を覚ました優希が貫き倒した。


 「九条!!あ、後誰だかわかんねーけどありがとよ!!オラァ!」

 「まだそれだけの力があったとは驚きだ」

 「ふぅー、状況が最悪な時に目を覚ましたらしいな」

 「あぁ。どうやらそうらしい」

 「いや最高だ。二人とも俺は青を助ける。それまでその分身達の相手をしててくれ」


 この状況、一人で相手するには流石に不利だが、この二人が少しでも時間を稼いでくれるなら可能性は出てくる。


 「ふぅー、無茶なお願いだが、まぁ仕方ない。その少女をとっとと助けろ」

 「すまん、任せた」

 「ハヤテをやれ」

 「やらせない。"突進連鎖"!」


 ハヤテはクール達の相手を九条と優希の二人に任せ、再度青の入れられている装置の真下へと立ち、そこにあった制御パネルを見た。

 

 「これか今助けッ、ぐあぁぁぁ!?」

 「"猪牙双破"!ハヤテ!?」


 制御パネルに触れた瞬間、ハヤテは全身を痺れるような痛みが駆け巡り膝をついた。


 「ぐっ、これは・・・」

 「残念だったな。それには魔法でプロテクトをかけといてある。勿論、それを解除できるのは俺だけだ」

 「ふぅー、厄介なことをしてくれる」

 「ぐっ、ま、だだ!うわっ!?」


 再度、制御パネルに触れようとしたハヤテであったが魔法によるプロテクトがそれを弾きハヤテは尻餅をついて倒れた。


 「くそっ!だったら、」


 落ちていた自分の刀を拾い、ハヤテは刀を構えて青が捕まっているカプセル状の装置を斬り壊そうと飛び上がった。


 「おぉぉぉ!」

 「無駄だ」

 「ぐ、あぁァァァァァァァァ!!!」

 「そんな目立つところに置いてあるんだ。対策をしてない訳ないだろ」

 「チッ、邪魔だなお前らハヤテ!」


 先程以上の威力を持った痺れがハヤテの全身を駆け巡り、ハヤテは意識を失ってしまいそのまま落ちて行った。

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