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第71話 寅の十二司支②

 「へぇー刑事さんなんだ」

 「・・・なぁダイ、タバコないか?ニコチンが切れそうだ」

 「んなもんあるか!」

 「無視すんなよ!戦闘ノミ!」


 右手でデコピンを打ち、巨大な鎧と槍を武装したノミが三匹、九条に向けて放たれた。


 「気持ち悪いな」


 九条は着ていたコートから拳銃を素早く取り出し、迫り来るノミに銃弾を放った。しかし銃弾は鎧と槍により塞がれ、九条は壁を破壊して通路へと出た。


 「なるほど厄介だな、なら」


 九条は周囲の壁を見渡し銃弾を放った。

 弾丸は壁を跳弾し、ノミ達の鎧の隙間を縫ってノミ達を撃ち殺した。


 「まったくタバコくらい吸わせてほしいものだ。とゆうかタバコは持ってないか?」

 「九条だってお姉さん?中々やるね」

 「当たり前だ。こう見えてお前達のようなガキよりも修羅場を潜っているからな」

 「じゃあこれならどう!」

 「その前にこれをくれてやる」


 莉猫が再びノミを繰り出そうとしたデコピンを放とうとしたが、それよりも速く九条は懐から取り出した三つの手榴弾を莉猫に投げつけた。


 「いっ!?」

 「なんと!?」

 「ちょっ!爆弾!?」

 「ドカンッだな」


 手榴弾が地面に落ち大爆発を起こした。


 「ゲホッゲホッ!まさか躊躇なく手榴弾投げるなんて、狂ってるでしょ」

 「まぁ私の家でもないしな。さて、親玉の元まで案内してもらおうか」


 起き上がった莉猫の目の前には、いつの間にか目の前に立っていた九条が銃口を突きつけていた。


 「子供は寝る時間だ」

 「くっ、舐めるな!!守衛ノミ!」


 九条の立っていた場所の真下から今度は分厚い盾と先ほどと同じ鎧を着たノミが二体現れた。


 「さっきの戦闘ノミと一緒にするなよ!この守衛ノミは守りに特化したノミ、跳弾を狙う隙もないよ!」

 「なら」


 守衛ノミに自身を守らせ莉猫は立ち上がり、体勢を立て直そうとしたが、それは叶うことがなかった。

 ぐしゃりという音が莉猫の後ろから聞こえ、振り返ると守衛ノミの頭部だけが牢獄であった場所の壁に叩きつけられており、身体は首から血を噴射して倒れた。


 「一瞬で終わらせるだけだ」

 「うっそ・・・」


 銃を使った様子はなかった。そもそも銃では絶対にあの鎧は貫通することは出来ないし、何よりもあんな風には絶対にならない。


 「な、何したの??」

 「ん?普通に蹴っただけだぞ」


 もっとあり得ない回答が返ってきた。

 守衛ノミの防御力はたとえミサイルが飛んできたとしても後ろにあれば完全防御ができる程、鉄壁なはずなのに、あの女刑事はあろうことか蹴ったといった。


 「そ、そんな嘘通じると思ってるの?」

 「嘘も何も事実だ。銃弾が効かなそうだったのでな、蹴らせてもらった」

 「だから!蹴りだけで倒せるようなノミじゃないの!?わかる?」

 「ならもう一度、だしてみればいいだろ」


 これだから子供はすぐにムキになると呆れながら喋る九条にそんなわけがないとムキになった莉猫はもう一度、守衛ノミを作り出して九条の元へと放った。


 「いけ!」

 「聞き分けのない奴だ」


 盾を前に構えながら迫る守衛ノミを九条は何の苦もなく、平然と回し蹴りを行いそのまま先程と同じように守衛ノミの頭を蹴り飛ばした。


 「そんな、化け物すぎない!?」

 「失礼だな。私は落下とした大人だぞ?そんな事よりも居場所を吐いてくれ。それかタバコをくれ」


 九条はタバコを長時間吸っていないことから少し禁断症状が出ており、身体中が震えていた。


 「タバコは体に悪いよ刑事さん」

 「それしか楽しみのない私からこれ以上、何を奪うというのだ。禁煙反対、路上吸い推奨派だ私は」


 本当にこいつは刑事なんだろうかと疑問に思った莉猫の頬に銃弾が掠めた。


 「次は本当に打つ。ニコチンが切れそうなんだ」

 「ッつ!?」


 この女は自分のニコチンが切れそうで苛立っていたから撃ったのだろうか?そうだとしたらこれを採用した警察も警察で頭が狂っている。


 「でも、これならあなたも手が出せないんじゃないの!女刑事さん!」

 「!?」


 九条は背後に何者かの気配を感じとり、直ぐに後ろに銃口を向けた。しかし、そこにいたのは現内閣である宗一郎総理その人であった。


 「総理ッ!?」


 その一瞬、九条の拳銃を握る力が弱まった。そして更にそれに追い討ちをかけるかのように宗一郎の隣から丑の十二司支の牛次が飛び出して九条に強烈なタックルを喰らわした。


 「チッ」

 「残念だったね女刑事さん!私のノミの本来の使い方はこうやって人を操るのが正式な使い方なんだよ!」


 莉猫の背後には先程まで普通の会話をしていたダイとそして砕蔵、イリスが立っていた。


 「女刑事さんの相手は私を含めたここにいる人全員なんだよ?」

 「なるほどな、使い方によってはめんどくさい相手と言うわけか」

 「そうゆうこと。さぁ!女刑事さんをやっちゃって!!」


 莉猫の指示を受け、五人は一斉に九条に襲いかかった。比較的、戦闘力がないイリスと宗一郎はナイフを片手に持ち九条を襲ったが、難なく九条によってそれは押さえつけられた。


 「ブルース・バーブ!」

 「がはっ!うっ、この頑固ジジイが簡単に操られるなよ」


 牛次の強烈な突進を再び受けた九条は直前で後ろに飛び退き何とか威力を最小限に抑えた。


 「土遁"岩針雨"」

 「チッ、めんどくさ、お前が一番厄介だなダイ!」

 「死ね」


 地面から発射された小さな岩の針を避け、その先にいた鎖で繋がれた剣を持ったダイと九条はぶつかり合った。


 「ほらほらぁー!どうしたの女刑事さぁん!さっきみたいにボコボコにすればいいじゃーん!」

 「それが出来たら苦労しないんだよお嬢さん」

 「ふーん、ならやられちゃえ」

 「ブルース・ビート!」

 「うぐっ!」


 牛次が叫び、その衝撃波によって九条は吹き飛ばされた。


 「はぁ〜くそ、タバコがないと調子が出ないな・・・」


 かなり遠くまで飛ばされた九条は起き上がり、寅の十二司支を名乗ったあの女の元まで戻る道すがらタバコがないかと微かな希望を抱いて探していた。

 が、結局見つかる事なく莉猫の元まで戻ってきてしまった。


 「さぁて女刑事さんにもそろそろこのノミを寄生させないとね」

 「はぁ、悪いが私はそう言ったプレイには興味はないんだ。他をあたれ」

 「ぷ、プレイじゃないし!まだそんな減らず口が聞けるんだ!あんた達やれ!」


 五人が九条に向けて迫りきた時、九条は目を見開いた。


 「?、よそ見みてたら死んじゃうよ女刑事さん!」

 「はっ・・・いやもうお前に勝つ算段はついた」

 「はぁ?」


 九条は五人に向かって迷わず走った。

 莉猫は驚いた。九条はその五人の中でも特に近接特化の能力を持つ牛次に向かって走っていたからである。勿論、その結果は牛次の強烈なタックルによって壁に激突する事になった。


 「び、びっくりした。まさか一番ガタイいい人の方に走るなんて・・・」

 「すぅー・・・はぁーーーー」

 「?」


 その時、莉猫は確かに見た。先程からずっとタバコを探していた筈の九条が、何故かタバコを吸っているのだ。


 「ふぅー。生き返る。これだこれ、まぁ私の好みとは少し違うがな」

 「え、それどこから」

 「そこの小太りの男の胸ポケットにチラッと見えてな。ふぅーーー」

 「え、まさかた、タバコ取る為だけに突っ込んでいったの!?」

 「そうだが?何か問題でもあるか?」


 狂っている。いや守衛ノミを蹴りの一撃で絶命させる女だ。普通の人間ではないと思っていたが莉猫の常識からは理解できない考えだった。


 「あ、頭おかしいんじゃないの?」

 「それはこっちのセリフだ。人を操る気分はどうだ?偽りの主従関係などいつか破綻するだけだぞ」

 「くっ!?うるさい!」


 牛次とダイの二人を差し向けた莉猫だったが、それはタバコを吸っている九条相手には完全に誤算となってしまっていた。


 「もうこの手は通じない」

 「え?」

 「がっ!」

 「ぐふっ!?」


 九条はタバコに夢中だからなのか二人の方を一切、見ていなかった。

 だが、しかしその銃弾は容赦なく二人の脳を撃ち抜いたのである。


 「ん?あれ??俺・・・何してたんだ?」

 「ん、んん・・・ここは?は!宗一郎総理!」

 「え、そんな洗脳が解けた!?一体どうやって!」


 自分のノミによる洗脳を解かれてしまった莉猫は怒りを露わにしながら九条を睨んだ。

 当の九条は未だタバコに夢中になっており、莉猫の怒りなど素知らぬふりをした。


 「く、でもまだこっちにッ、」

 「こっちに何だって?」


 宗一郎を人質にしてこの場からは一旦、逃げおおせようとした莉猫だったが、それは九条が再び放った弾丸によって阻止された。


 「ふぅー。さて、もう一度聞くぞ?クールとかいうやつがいる場所を教えろ」

 「くっ、誰が!」

 「そうか、残念だ」


 莉猫の額に拳銃を突きつけた九条がそのまま引き金を引こうとした時だった。


 「ちょっと待ってくれ!」


 通路の奥から少年が突如として現れ、銃口を突きつけられている莉猫の前に立ち両手を広げた。


 「ふぅー。お前は、確か」

 「何で、こ、ここにきたの優希!」

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