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第65話 羊の十二司支②

 「ん?霞!?」

 「安心してください。彼女は寝ているだけだメェ」

 「お前も能力者なのかよ。めんどくせぇな」

 

 カケルは目の前にいるタキシード姿で白い長髪の男性を見て霞を倒すくらいの相手には見えないと感じていた。


 「羊が一匹、羊が二匹」

 「何いきなり羊数えてんの??」

 「うっ、・・・ッ!それを聞くな!」


 最後の力を振り絞りカケルに声をかけた霞はそのまま今度こそ意識を失ってしまった。


 「あ、おい霞」

 「羊が五匹、・・・ふむ、中々しぶといですメェ。実力行使と行きますかメェ!」


 羊を数えるのをやめたヒツジは霞の時と同じく、その鋭い手刀を喰らわせるためにカケルに向かって走ってきた。

 カケルは霞がただ気を失っているだけだと言うことを確認した後、迫り来るその手刀を片手で受け止めた。


 「うおっ、見た目と違ってあんた結構力強いな」

 「ッ、」


 ヒツジはかつて海外の執事養成所で執事になる為に数多くのことを学んできた。

 そして、そんな中でも優秀な成績を収め、尚且つ戦闘の才能があると判断されたもののみが学ぶことを許される特別カリキュラムさえも突破した。

 その特別カリキュラムの中で手に入れたのが己の体を主人を全ての外敵から守るために四肢を鋼のように硬く、刀剣のように鋭くする力であった。

 そんな腕が凄まじい速度でくるのだ、本来なら交わしようがない。筈なのだが、目の前の男はそれを平然と掴んでいた。

 

 「あなたは先ほどの方よりも相当お強いようですね」

 「ん?そうか??」

 

 この男、最初に出会った時からそうだったがわたくしの力が全く効いていない。既に羊の数は三十になっている。だが、この男意識が遠のくどころか身体機能を失っている様子もない。


 「・・・貴方のような人がまだこの世界におられたのですね」


 目の前で対峙している自身でさえ、よく聞こえない声で呟いたその言葉は対峙している自身ではなく、別の人に言っているようにカケルは感じていた。


 「メェッ!」

 「おわっ!」


 鋭い手刀を更に連続でカケルに向けて放った。寸前のところで避け続けるカケルは、霞を安全な場所まで運ぶ為に担ぎ上げ大地を蹴り上げ上げた。


 「何だあいつ。羊数えたかと思ったら今度は殴りかかってきやがるし・・・お、あそこいい感じじゃんか」


 少し先に見えた芝生までカケルは更に空気を蹴って辿り着き、芝生の上に霞をそっとおいた。


 「とりあえずここで寝ててくれ。さて、と行くか」


 先程の男の元へと戻る為に再び大地を蹴り、飛んだカケルは下に見える森林を見て改めてこの場所の不思議さに感心していた。

 さっきの場所もピンクだらけで地下にしては変だったが、この場所も森林が生い茂ってたり、芝生があったりしてあそこに負けず劣らずの変な場所だ。


 「ガーデニングの趣味でもあったのか??」

 「ご名答!このわたくしの趣味はガーデニング!そんなわたくしは羊の十二司支!名をヒツジと申します!」


 カケルよりも更に上に飛んでいたヒツジは上空からカケルに自己紹介を行い、そのままカケルに向かって踵落としを繰り出した。

 しかし、その攻撃は虚しくも空を蹴っただけで終わった。


 「がはっ!!?」


 その代わりと言わんばかりにヒツジの腹部にはカケルの拳がめり込んでおり、そのまま天井まで吹き飛ばされた。


 「がッ!?ま、さかカウンターをきメェるとは」

 「何なんだあいつ?」


 本来、相手が相手ならばヒツジのnoise"羊百まで"だけで勝敗は決まっていた。それこそ、侵入してきた者達ではその力の前にはなす術がない筈だった。

 だが、今目の前にいるあの男はどうだ?既に羊の数は九十を数えた。それなのに一向に意識を失う素振りもない。それどころかその力はおおよそ人智を超えたと思わせるほどの力だ。


 「こ、この男は、危険で、すメェ・・・」


 直前に防御姿勢を取っていなければ今の一撃で確実に死んでいた。

 それほどまでにあの男は危険だ。


 「ま、まぁい、いいでしょう・・・既に羊の数は九十七になっている。後三回、後三回だ!それで貴方の命は尽きる!!さぁ!この戦いを終わらせてあげましょう!」


 天井から下に落ちる間にヒツジは最後の三回を数え始めた。


 「羊が九十八ぃ!羊が九十九ぅぅぅ!さぁ!これで最後ですよぉぉぉ!羊がひゃぁぁぁくぅぅぅぅ!」


 言った。言ってしまった。羊百までを初めて全て数えてしまった。だが、これであの男は永遠の眠りにつく!

 下を見るとカケルその場から一歩も動いておらず、能力が効いたと考えたヒツジは勝利を確信し、喜びのあまり笑みを浮かべた。

 そして大地に降り立った後、自分に初めて百まで数えさせた敵の立ったまま死んだ姿をじっくりと確認する為に近づいていった。


 「ん?待て立ったまま、だと?」


 それはおかしい。羊百までは百数えるまでの間に意識と身体機能を奪う能力だ。つまり今の状態では立っていることは絶対に不可能な筈だった。


 「ま、さか!?」

 「オラァァァァァ!!」

 「はうわッ!?」


 不用意に近づいたヒツジはカケルの蹴りを股間にモロに喰らった。

 股間でぐちゃりという音を立てながらヒツジは潰された股間を押さえながら飛び回った。


 「ぐっ、くぅぅぅぅぅ!」

 「どうだ見たか!近忌"玉潰し"!近づいてきた相手の急所を蹴り上げる禁断の技ぁ!」


 白目をむいて涙を流しながらヒツジはそのまま木に激突し、線が途切れるように気絶した。


 「って、結局こいつの能力何だったんだ??」


 ヒツジは確かにnoiseを使っていた。しかしカケルには何一つとして変化は最後まで訪れなかった。

 戌十二司支との戦いの時もそして今回も自身に起こっている変化について本人であるカケルは全く気がついていなかった。


 「んっ・・・」

 「お、起きたのか。大丈夫か?」


 目を覚ました霞は辺りを見渡し、木の下で股を押さえながら倒れているヒツジを見た。


 「倒したのかあいつを」

 「ん?おう」


 ヒツジを見ていた霞は今度はカケルの姿を見た。

 あの男も決して弱くはなかった。むしろ能力だけ見れば最初に現れたチャラい男よりも危険な人物でだった筈だ。だが目の前のこの男は傷一つついていない。

 

 「・・・お前あいつの能力が効かなかったのか?」

 「え?あいつ能力使ってなかったぜ?」


いやそんなはずは無いと霞は感じていた。そもそも意識を失う前にヒツジは羊の数を数えていたのだ。

 更に言うのならば、この男の力は一撃でも貰えば確実に後に響く。そんな相手に対して途中で数えるのをやめる筈がない。


 「羊を数えてなかったのか?」

 「え?羊?・・・確か数えてたわ」

 「それが奴の能力だ。数が増える事にこちらの意識と身体能力を奪う」

 「でも俺、そんな事なかったぜ??」


 二人は頭を横に向けながら考え込んだが、結局分からずじまいだった為、ヒツジを木に縛り付けた後、先に進む事にした。


 ーー

 その頃、とある場所では中央にリング台が置かれ、そこに二人の女性と審判らしき男が立っていた。

 更にその周りには大勢の観客らしき人々がおり、熱い歓声をリング台に送っていた。


 「さぁ!お待たせしましたぁぁぁ!世紀の対決が今ここに!赤コーナー!あらゆる格闘技に参加し、あらゆる賞をその手にしてきた超人!強すぎるが故に男性、女性どちらからも恐れられた怪物!我らの伝説が今ここに蘇るぅぅぅ!馬場ぁぁぁ薫ぅぅぅ!!!」

 「オラァァァァァァァァ!!!」


 赤コーナーから現れた180センチはある巨体の女性に観客達は熱烈な歓声を盛大に送った。

 そして、


 「青コーナー!地下アイドルからグループユニットto swapを結成!しかぁし、メンバーの不祥事により表舞台から地下へ逆戻りぃ!だがしかし!不死鳥の如く蘇った女ぁぁぁ!ミサぁぁぁミサぁぁぁ!!!」

 「はぁい!」


 青コーナーから現れたおおよそ格闘技というものとは無縁、馬場薫と比べればアリと人間のように感じられる女性、ミサが現れ現役アイドルの登場に会場は更に盛り上がった。


 「さぁ、楽しもうじゃないかお嬢ちゃん」

 「ふふっ、やぁだぁおばさんそんなに興奮すると毛穴開いちゃうよ?ただでさえ、そんな体なんだもんもっと男にモテなくなっちゃうよ?」

 「いいねぇやり甲斐があるよ」

 「さぁ!両者がリングに上がったそして今!」


 カァン


 「ゴングの鐘がなったぁぁぁ!」


 その音ともに二人の女性は挨拶と言わんばかりに互いに頭突きを喰らわした。

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