第62話 酉の十二司支
カケルがメガネの示した道を真っ直ぐに進んでいる頃、ダイは砕蔵と共に長い道をひたすら進んでいた。
二人は別れた後、直ぐに道が繋がっていたのか合流し、共に進む事になった。
「それにしてもダイ殿、この道はいつまで続くんでしょうなぁ」
「・・・ずっと気になってたんだがよ。お前、何つーかそんな感じだったか?」
あの時はもっとこうもう少し威厳っぽいものがあるような喋り方をしていた気がするんだが何があったんだこいつ?
「ん?あぁこの喋り方でござるか?」
「それだ」
「これはでござるな、あの日逃げ出した後、付近にあった施設で身を隠している時にたまたま手に取ったまんがと言うものお話にあった忍者の主人公がこうゆう喋り方だったもので真似してるんでござる」
この野郎は俺たちが監獄に入っている間に満喫かブックオフにでも行ってやがったのか。
そんな会話をしていると俺達は何かの機械や水槽などが置いてある薄暗い空間へと出た。
「あぁ?何だここ??」
「・・・この場所、、拙者、知ってるでござる」
砕蔵は一歩、二歩と進んでいき辺りを見渡した。ダイもそれに続いた。
場所は思ったよりも広く奥行きがわからないほどだった。
「オイコラ、テメェいい加減教えろよ。どこだよここ」
「拙者が・・・目を覚ました場所でござる・・・」
「へぇーじゃあ、あいつがお前を蘇らせた野郎か?」
ダイが指を刺した方向には、白衣を着た痩せこけたトサカ頭の男が立っていた。
「待っていたぞ!この俺の計画を邪魔した者どもよ!」
「誰だよお前」
「俺の名前は難波チキン!天才科学者だ!」
突然現れたチキンと名乗る男はメガフォンを使い俺たちに自己紹介をしてきた。
「貴様!よくも拙者の前にぬけぬけと現れたな!」
「お前こそ!この俺の研究材料の癖に勝手に研究所を抜け出しといてよくこれたな!」
「黙れ、引導を渡してやるわ!土遁"岩龍爆土の術"!」
地面に手をつけ、土遁を発動をした砕蔵だったが地面、壁はコンクリートでできており忍術は不発に終わった。
「おっと、貴様の忍術に関しては既に対策済みだ。お前らがここに来る事は既に予想済みだったのでな、全てをコンクリートに変えといたわ!」
「な、何と!!貴様、卑怯だぞ!」
「たっく、下がってやがれ。俺が相手してやるよ鶏肉野郎」
「願ってもないことだな」
願ってもない。と言う事は始めから俺が狙いだったと言うことか。
通りで俺の事も知ってる感じな訳だ。
「貴様の事も調べさせて貰ったぞ。武久ダイ、武久重工の社長武久真美の息子」
「・・・」
武久重工、第三次世界時の日本の銃火器、戦闘機など様々な戦略に必要な武器を開発し、日本を支えた工場。
戦後は能力者の研究に注力していたが、突如その名は歴史の表舞台から姿を消した。
「そんな所のご氏族がまさか黄昏荘などと言う辺ぴな所にいるとは驚いたぞ」
「おーけー。なるほどお前はぶっ飛ばされたいって事でいいなぁ!!!」
ダイは反射の能力を使い地面を蹴り上げ、一気にチキンの元へと飛んだ。
「ほほう。それが"反射"のnoiseと言うわけか」
「ぶっ飛べや!!」
一気に間合いへと入ったダイはチキンに向かって思い切り殴りつけた。
チキンのいた場所は反射の能力によって一気に吹き飛ばされ砂煙がまった。
「その名を出さなきゃテメェはぶっ飛ばされずに済んだんだッ!?」
「ダイ殿!?」
「ふむふむなるほど。貴様の反射は自分の意思とは関係なくではなく、貴様が意識していないと発動しないのだな」
ダイは痛みを感じた腰を見てみると、腰には蠍の尻尾のようなものが刺さっていた。
「電磁塔の時間の時は予め銃弾が来ると意識していたから反射が出来た、と言うわけだな」
「ぐっ、いってぇ、、、お前、何で?」
「少し黙っていろ。お前の能力の研究で私は忙しいんだ」
「ぐあぁ!」
刺さっていたサソリの尻尾のような物が抜け、それと同時にまっていた砂煙も晴れた。
そして先程まで痩せかけた男がいた場所には二足歩行で立つサソリがいた。
「なん、だそりゃ!?」
「ん?これか?これは私の研究の賜物だよ。それよりも早く別の能力も見せたまえ」
こいつ、俺のnoiseが何なのかまで調べがついてんのかよ。
反射の能力についても当たっていやがる。俺の使う反射はオートじゃなくマニュアル。そりゃある程度はオートでも行けるがスナイパーとかの遠距離や意識外からになると途端に無力になる。
つーか誰だよ俺の能力バラしたやつカケルか!?
「チッ、お望みなら見せてやる、よッ!!」
「おっと、何故能力を別のにしないんだ?」
ダイの不意打ちを後ろに飛んで避けたチキンは能力の穴がバレた筈の力をそのまま使い続けるダイに対して疑問を持った。
「ほっとけ、テメェにはこの力だけで十分なんだよボケが!」
「強がりなのか、それとも変更できない理由があるのか?ふひっ!ふひひひひひ、研究のしがいがあるなぁ」
サソリの姿から元のトサカ頭の姿に戻ったチキンは今度は両腕から羽のようなものが生え、空を飛び始めた。
「あぁ!?何だお前びっくり人間かぁ??」
「ふひひひっ!残念ながら違う!私の力は"動物"あらとあらゆる動物の姿に変身出来るnoiseを持っている!そして今の姿はハヤブサ!」
「そうかよぉ、ペラペラありがとな!反射の嵐」
ダイが腕を横に振り、風の渦巻を発生させた。
「無駄だ"旋翼烈風"!」
「あ?おわっ!!?」
しかし、上空で全身を回転させながら、その風を利用して自身に向かってきていた渦巻をダイに向けて跳ね返した。
渦巻に巻き込まれダイはそのまま砕蔵の後ろ、ダイ達が入ってきた入口の上に激突した。
「クソがっ!」
「ダイ殿!ご無事で??」
「どうだ!見たか!?この俺の研究の邪魔をした上にその研究を辞めさせられた、この俺の悔しさを少しでも味わったか!!?」
幸い反射の能力のおかげでダメージはないが、反射の能力のネタが割れてるのならやりづらいのは確かだ。ならば、
「お望み通り、次の能力使ってやるよ!」
ダイは腰から鎖に繋がった二本の短剣を取り出し、その内の一本を空を飛ぶチキンに向かって投げ飛ばした。
「そんな短い鎖で繋がった剣が俺に効くものか!!」
「それはどうだろうなぁ!」
砕蔵は見た。ダイが投げた剣に繋がっている鎖はダイが両手を広げた時くらいの長さだった筈だった。しかし、ダイが投げた瞬間、その鎖はみるみるうちに伸びていきチキンを絡め取った。
「なんと!?伸縮自在の鎖か!」
「正解だ鶏肉野郎、上から見下ろしてないで下に降りてこいや!」
鎖に絡め取られたチキンはそのままダイによって地面にドカンッと言う音と共に振り落とされた。
「どうだぁ?少しは答えたかよ?」
「ふんっ!この程度でか?こんなもん屁でもないわ!」
ダイが近づこうとした瞬間、チキンは高速でダイの元まで移動し、周囲を走り回り始めた。
「チッ!今度は何だ!?」
「チーターだ!そしてこれは!」
「右かッ!?」
「残念!左ぃ!」
ダイの愚痴に対しての返答が聞こえてきた右を振り返ったダイは左からきたチキンの突進をモロにくらい、飛ばされた。
「サイさ!さらにこれはゴリラぁぁぁ!」
「がはッ!!?」
サイの姿に変えていたチキンは今度はゴリラへとその姿を変え、ダイに渾身の一撃を決めた。
ダイは壁を何枚も破壊しながら別の部屋まで飛ばされた。
「うぐっ、、、」
身体中の骨と言う骨が砕かれ、腕や足、首などは変な方向へと曲がっていた。
幸い、反射からもう一つの能力である不死身に能力を切り替えていたため、痛みはあるが再生はするからこっちは心配はない。
問題はあの鶏肉野郎が思った以上に厄介だと言う事だ。動物の能力全てを扱える力に加えて、科学者の性分なのか観察力にも優れている。
「チッめんどくせぇなぁ・・・もう逃げちまうか」
あいつの相手を砕蔵に任せて、俺はそのままイリスちゃんを助けに行くか。いやそれで砕蔵が死んだりしたら、それはそれでめんどくさいことになる。
「くそ、来るんじゃなかったぜ」
俺が今持つnoiseは全部で三つ。一つは反射、二つ目は不死身、三つ目は透明化。
透明化は触れたりしたら能力が解かれ、しばらく使えなくなってしまう。非戦闘向きの能力だ。
ならあいつを倒す最後の手段はこれしかない。
「巻き込みやがって恨むぞカケル・・・」
ダイが壁をぶち壊し飛ばされた頃、砕蔵はチキンの猛攻から逃げ回っていた。
「こらぁ!逃げるな実験体!!」
「戦えぬのだ!逃げるに決まっておるだろ!!」
「ならばこれでどうだ!タコ!!」
今度は八本の足を生やしたタコのような姿に変わり、砕蔵の四肢を捕らえた。
「捕まえたぞ!実験体!」
「は、離さぬかこのハゲぇ!」
「さぁて貴様には逃げた罪をたっぷりドッ!?」
砕蔵を捕らえて近づけようとした時、チキンは突然吹き飛ばされた。
起き上がり、砕蔵のいる方向を見るとそこには先程、自分が殴り飛ばした筈の男、ダイが瓦礫の上に立っていた。
「よぉ鶏肉野郎、また相手してやるよ」
「ふんっ!先程負けた癖によく言うわ!」
「ばーか、ここからが本番なんだよ二重能力」




