第51話 崩れゆく日常
赤服女事件が解決した後、ハヤテがどこかに行って再び、こちらへ戻って来た時にそれは起きた。
警察や野次馬が大勢いる中、ハヤテはひっそりとこちらへ戻って来てた。
そして私にとって一番触れてほしくない話題を出して来た。
「青、あの時の赤服女の腕が無くなったのはお前の仕業か?」
「そ、そういえば緑君どこ行ったかな?さ、探しに、」
「誤魔化すな。お前も能力者なのか?」
「い、言いたくない」
そう。言いたくないのだ。
私にだって触れられたくない事は一つや二つあるものだ。たとえば、最近体重が少し増えたとか。
「は、ハヤテこそ、言ってくれてない事あるんじゃないの!」
「ああ、勿論ある」
「ぐっ、」
この人はこうゆう所が卑怯だ。普段は何も言わないくせにこうゆう時に限って正直に話してくる。
「わ、私にだって知られたくない事もあるの。もういいでしょ!」
「人の領分に土足で上がる癖にか?」
「うぐっ、」
痛いところを刺された。確かに私はこの性格のせいで昔から人との距離を測りかねる所がある。
そのせいで中学一年生の頃は軽いいじめにあった事だってある。・・・嫌な事を思い出した。
「と、とにかく!私のことはハヤテには関係ないでしょ!もういいから迷惑なんだよ!!」
「ふぅー。おーいそろそろやめろ私も忙しいんだ」
私が怒鳴り声を上げたのをまずいと思ったのか、タバコを吸い終えたから来たのか分からないが、私達から事情を聞いていた若い女刑事さんが私たちの間へ入って来た。
「喧嘩をするな。まったくこれだから最近のガキはめんどくさいんだ。今日は送ってやるから帰るぞ」
「ふんっ!ハヤテが悪いんだもん!」
「・・・あぁ、そうだな」
あの時の顔は今でも忘れる事ができない。まるで自分自身に罰を与えているかのような悲しそうな顔をしながらハヤテはそのままパトカーへと乗った。・・・ほんの少しだけ犯罪者に見えた。
ーー
「青、青起きて」
「んあぁ??」
放課後の教室、葵ちゃんによって肩を揺すられ私は目を覚ました。どうやら寝てしまっていたようで机には涎が垂れており、私は急いでそれを拭き取り目を覚ました。
「葵ちゃん?どうかしたの?」
「ついて来て」
「??」
葵ちゃんに言われるがまま私は席を立ち、彼女の後ろを歩きながら屋上に上がった。
扉を開けるとそこには緑と共にハヤテがそこには立っていた。
「あ、ハヤテ・・・」
「・・・」
お互い、この前の事があり、少しだけ気まずい空気が流れていた。
それもそうだ。あの事件から既に三日経っている。土日を挟んでいるとはいえ、私は彼にひどい言葉を浴びせたんだとてつもなく気まずい。葵ちゃんは何故、こんな所に呼び出したのだろうか・・・
「ど、どうするんですか?」
「青、ハヤテ何があったのか知らないけどいい加減仲直りして」
「ちょ、直球ですね!?」
緑君と葵ちゃんが二人でこそこそと話をしていたと思ったらいきなりそんな事を言われた。
ここだけの話、私は葵ちゃんのこうゆう所が好きだ。彼女は常に自分を持って生きている。
恐らくだが、それは周りの影響なのだろうとあの日、彼女の家で出会ったカケルという人を見てすぐに分かった。
そのおかげで私は葵ちゃんによって一年生の頃、いじめから救われたんだ。まぁ本人は何にも覚えてなかったのだけれど・・・
それでも今この状況で彼女のこれはとても困る。それでもこうゆう場を設けてくれた彼女と緑君には答えたい。何よりもハヤテとは仲直りはしたい。
「あのっ!」
「すまなかった青」
「え?・・・」
意を決して私はハヤテに謝罪しようと思い、声を張り上げようとした時だった。私よりも早くにハヤテが頭を下げて謝罪しできたのだ。
「誰にだって知られたくない過去はある。俺にだってな。それを考えてなかっただから・・・ごめん」
完全に先を越されてしまった。
我ながら自分勝手な女だ。普段は人の心の領分に勝手に上がる癖に自分の事となると怒ってしまう。
本来なら見放されてもいいはずなのにそんな私に向かって、彼は頭を下げ、謝ってくれた。
「あ、いや私の方こそごめんね」.
私も急いで頭を下げて謝った。
互いに謝りあった後、私達は少しだけ間を空けてから笑い合った。
「ごめんね葵ちゃんも緑君も私達の問題に付き合わせちゃってさ」
「べ、別に構いませんよ?ぼ、僕は青さんの為なら何でも!」
「青、聞いてないよ」
「あ、あれ!?ま、待ってくださいよぉー」
ハヤテとのわだかまりも消え、私自身の抱えている秘密もいつか必ず話す事を三人に約束をした。
そして私達は学校を後にして通学路を四人で歩いていた。
「え!?カケルさん捕まったの!!?」
「うん。今牢屋にいるって」
「ほ、本当なんですか??」
「カケル達が連れて来た変な忍者がそう言ってたから多分本当だと思う」
とてつもなく嘘くさい情報源だが、私達が赤服女を解決した後にどうやら別の病院が破壊されたらしく、カケルさん達はそれに関与しているという。
「大丈夫なの?」
「あの二人なら大丈夫・・・なはず」
「何でも屋のあいつなら大丈夫だろ。そもそも警察なんかにどうこうできる男じゃない」
「あれ?ハヤテってカケルさんと知り合いだっけ?」
カケルさんとハヤテが会ったのはあの時、葵ちゃんを迎えに来た時が初めてだった筈だが、何故かハヤテは知っているような口ぶりで話していた。
「あの後、知り合ったんだ。・・・スーパーで」
「え??す、スーパー??」
何で二人がスーパーに行っているのかが疑問に思ったが、ハヤテはそれ以上何も言うつもりがないらしかった。
思えば、ハヤテには出会った時から何故か妙な親近感が湧いていた。更に言うならば理由は分からないがハヤテが考えている事などが手に取るように分かるのだ。
「・・・ハヤテ、話す気ないでしょ?」
「よく分かったな。そもそもこの話にそれ以上も以下もないしな」
当たっていた。
それにしても何故なのだろうか?まさか彼の事が好きなのだろうか?いやそれはない。
私の好きな人のタイプは過去に大きな罪を犯したがその罪を償う為に生きていく感じでもう一つ付け加えるなら顔が濃いダンディな男の人がタイプだ。
「ハァ…我ながら渋い」
「「「???」」」
そうこうしている内にハヤテとの分かれ道へとたどり着いた。
私を含めた三人は更にここから少し行ったところまでは帰り道が同じだが、ハヤテはかなり遠くに家があるのでここでいつもさよならをする。
「じゃあね!ハヤテまた明日学校でね!行こ緑君、葵ちゃん」
「はい。ハヤテさんまた明日」
「じゃ」
「ああ」
ハヤテと別れた後、私達三人はしばらく雑談をしながら道を歩いていた。
赤服女や電車での出来事など少し変わった日常もあるのだが、こうして友達と関わっていく日常がずっと続いていければいいなと思う。
「探したぞ青」
「え?」
しかし、その願いは一瞬にして砕け散ることとなった。
「なん、で、ここ、に?」
目の前に現れた男性を見た青は一歩後ろへ引き下がり、怯えた目でその人を見ていた。
「遊びの時間は終わりだ。俺達の夢を叶えるぞ」
「わ、私はやっぱり嫌だ!」
「はぁ・・・いつからそんなわがままを言うようになったんだ」
男性はこちら向かって歩きながら私に対して手を差し伸べてきた。足がすくむ、差し伸べられて来た手が過去の記憶を呼び起こす。
「ちょ、ちょっとま、待ってください!」
「・・・君は?」
「り、緑です」
恐怖で動けなくなっていた私と兄の間に突然、緑君が両手を広げて現れた。
「こ、怖がっているように見えるんですけど、あなた誰ですか!!」
「・・・そうかそういえば自己紹介を忘れていたね。これは失礼した。私の名はクール。青の兄であり、現内閣総理大臣である宗一郎様の補佐官をしています」
物腰の柔らかい態度に女性ならば一撃で恋に堕ちるだろう柔和な笑顔、兄が相手に何の敬意も興味もない相手と接する時に現れる表向きの顔。
ああ、そうだ。兄はある日を境に変わってしまった。昔は誰に対しても優しく分け隔てなく接する尊敬できる人だったのに・・・
「お、お兄さんだったんですか?ご、ごめんなさい!不審者かと思って・・・」
「気にしなくていい彼女が怯えていたから助けようと思ったのだろう?青、いいお友達を持ったね」
「は、はい」
息が上手く出来ない。震えた足が今にも崩れ落ちそうになる。今にも崩れ落ちて吐きたい気分だった。
「さて、そろそろ行こうか青?」
「は、」
「ダメ!緑!青を連れて直ぐに逃げて!」
差し伸べられた手に身を委ねてしまいそうになった時だった。
今度は葵ちゃんが私と緑君の前に出て来た。葵ちゃんは普段見せないような焦った顔をしており、私と緑君に向かって怒鳴りつけるような声を出して逃げるように指示を出してきた。
「君は?」
「あなたの敵」
「そうか」
兄が笑顔を見せたと同時だった。グチャという音が唐突になり、葵ちゃんが地面に倒れた。
「あ、おい、ちゃん?」
下を向き、彼女を見ると腹部に大きな穴が開いており、その中心に肉団子のようなものが転がっていた。
「友達は選べ青」
私は今まで感じたことのない怒りの感情を兄に叫びながらぶつけた。
ーー
「なぁ、あの女の人の下着の色は何だ?」
「あ?あぁーありゃ上は黒、下は赤だな」
「あぁー!くそっ!また色違いかよ!」
「へへっ、カケさんまた外したな!じゃあダイさんあの人はどうですかい?」
「あ!それ俺も気になってたんだよ!」
監獄生活がすっかり身についてきた頃、カケルとダイは囚人達といつの間にか仲良くなり、現在はダイの特技、女性の下着当てでゲームをしていた。
「お?あの人履いてねぇよ」
「「ひゅー!ひゅっー!最高ぉー!ウェーイ!」」
「・・・なぁダイ。俺達なんか忘れてねーか?」
「さぁ?」




