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第50話 少しは寂しい

「はぁー??カケルとダイが捕まったぁ〜??」


 早朝、ミサさんの声が黄昏荘中に響き渡った。

 昨日まで地下アイドルの営業に行って、黄昏荘を離れていたミサさんは帰ってきた矢先、私から開口一番にそれを伝えられた。

 因みに本来は期末試験がある時期だが、ミサさんはアイドルと言うこともあり、特別に試験日をずらしてもらっていたらしい。


 「はぁ・・・あいつら今度は何やらかしたのよ?」

 「病院破壊した」

 「呆れた。なんであのバカ達は問題しか起こさないのかしら」

 「ミサさん。新聞で地下アイドル演奏中に邪魔してきたファン半殺しにってあるけど?」

 「はぁやっぱ私がしっかりしてないと駄目ね。あいつら帰ってきたらお仕置きね!」


 恐らくというか確実にこの件がネットで炎上しているから、こうして戻って来たのだろう。本来は期末試験期間丸々使うと言っていたから。


 「じゃあ、行ってくるわね」

 「あ、うん行ってらっしゃい」


 ミサさんが家を出た後、黄昏荘の皆んなが食べた朝食の後片付けをして、私も急いで準備を行って学校へ向かった。

 いつもの通学路を進み、学校へ到着し、教室に入り席に着く。

 そしていつもの様に青が後ろから抱きついてくるのが私の日常だ。しかし、何故かこの日はそれがなかった。


 「・・・」


 おかしい。本来ならいつもの様にここで「おっはよぉぉぉ葵ちゃーーーん!」と言いながら抱きつきに来る筈だ。

 それなのに今朝は全く来る気配がない・・・。

 少しだけだが、気になった私は伸びるふりをしながら後ろを振り返って見た。


 「・・・」

 「・・・」


 ・・・何か、気まずい空気が青とハヤテの間に渦巻いていた。青は俯いており、ハヤテは普段と変わらないように見えるが、感情にモヤがかかっている。

 先程から教室が静かすぎると思っていたが、なるほどこうゆう事だったのか。


 「あっ、・・・」

 「・・・」

 「ん??」


 この空気に耐えられなくなったのか、ハヤテが席を立ち教室を出ようとした。

 青はそれに気がついて声をかけようとしたが、そのまま、俯いてしまった。


 「・・・あれか」


 どうやら私が知らない何かが起きているらしい。少し気になってはいるが私には関係のないことである事は確かだ。そのまま小説を読み進める事にした。

 昼放課、いつもの様に屋上に上がり昼食を取る事にした。いつもならそのまま青達がついてくるのだが、どうやら今日はこないらしい。


 「久しぶりの一人・・・やった」


 そもそもあの場所は私が使っていたところだ。私は昔から一人で何かをする事が好きだった。

 そしてそれは今も全く変わっていない。

 それなのに何故、あの三人と関わっているのか。それは少しだけだが、前に遡る。


 ーー


 青と出会ったのは二年へ進級し数週間が経ったくらいだった。当時の私もいつもの様にここでお昼を食べようと屋上に上がって座っていた。

 しかし、そんな時に彼女が現れた。


 「あ!いたいた!おーい!」

 「・・・誰」

 「私?私の名前は青、よろしくね!」


 青との出会いはこれが初めてだった。いや同じクラスではあるから初めてと言うわけではないのだが、心底クラスメイトには興味がなかった。・・・今も変わらないけど。

 そんな私を青は探していたらしく、見つけられた私の隣に青は座って来た。


 「ふふっ」

 「っ、何??用がないならどっか言ってくれない?」

 「あ!そうだった。先生がね、次の時間の授業の準備手伝ってくれだって!」

 「そうなの。ありがとう」

 「・・・」

 「・・・」


 あの時、そうだった。そのまま昼放課が終わる三分前くらいまで隣に座ったままコチラをじっと見つめてきていた。


 「はぁ・・・、何?まだ何かあるの?」

 「え?いやほら私の名前と葵ちゃんの名前ってさ、青色だなーって思って」

 「それだけ?」

 「?、うん、そうだよ」


 それを言うためだけに青はここでずっと私を見ていたらしい。


 「ぷっ、ふふっ。何それ何で、ふっ、そんなのの、ふふっ、為に・・・ふふっ」


 思わず笑ってしまったのだ。そんな事を言うためだけに数十分隣に居続ける人なんてカケル以来だ。

 今思えば何でこんな事で笑ってしまったのだろうかとも思うが、そんな私を見て青はとても喜んでいた。


 「やった!葵ちゃんが笑うところ初めて見た!ずっとお話ししてみたかったんだよね。同じ青の色の名前だしさ」

 「その為だけに私探して、見つけてからもここでじっとしていたの?」

 「うんそうだよ?」


 イカれてると思った。と言うか自分から話しかけに来いよと思った。・・・まぁ私は無視するだろうけど。

 ただ、そう言った点が少しだけだが、カケルに似ているなとも思った。


 「何で私にそこまで、」

 「友達になりたいからだよ?」


 私と友達になりたい。まさかそんな事を言う人がここにもいるとは当時は思っても見なかった。いや私自身が見ようとしていなかっただけかも知れない。

 私はその時から彼女のそんな真っ直ぐで素直な姿に憧れている。鬱陶しいと感じる事もあるがそれでも彼女は誰に対してもこうやって素直にあるがままに接している。

 それは私にはとても真似できない事だ。私はこの力の事もあり、昔から誰かと接する事が苦手だった。だから彼女と関われば自分も変われるのではないかと思った。


 ーー


 「そこからだ。あの子達と関わるようになったのは」


 それからまだ数ヶ月しか経っていないが、随分懐かしく思えた。その後直ぐに知った事だったのだが、どうやら青はその少し前に私に話しかけていたらしく、私はそれを完全に無視していたらしい。

 だから先生を理由に話かけて来たらしい。もちろん先生のは嘘だった。


 「・・・そう言えばあの時、嘘が見抜けなかったな」


 私の力は嘘を見抜く力だ。その派生として少しばかりだが、感情を見る事だって出来る。しかし、その力には例外もあるらしく、青のように感情を見抜けなかった事が昔、カケルと出会った時もあった。

 

 「いや今はそんなこと考えてる場合じゃないや」


 食事を済ませてから本を読もうと思ったが、やはり青達の事が気がかりだ。

 私は何があったのか知る為に立ち上がり屋上を後にした。


 「今も変わってないなんて・・・嘘」


 やはりどうやら少しは寂しいらしい。だからこそ知るべきだ。何があったのかをそして、それを知っているのはただ一人だ。


 「見つけた」

 「え、え?あ、葵さん?」


 緑だけだ。彼は昔から青と一緒にいる。更に言うのなら青に惚れている。だからこそ、青の事は何でも知っている気がする。

 事情を知る為に緑を引っ張って再び屋上へと上がった。


 「え、えーと・・・ま、まさか、こくはっ、」

 「青とハヤテに何があったの?」

 「え?あ、・・・何だそれか」

 「何があった?」


 緑を両肩を押さえながら壁際まで迫り、事情を聞いた。どうやら、青の事に関してらしい。

 緑が言うには赤服女の件があった直ぐ後にハヤテが、自分が赤服女に襲われそうになった時、突然腕が消えた事について聞き出そうとしたらしい。

 初めは青も誤魔化そうとしていたらしいが、ハヤテには通じなく段々と口喧嘩になってしまったらしい。


 「それで今朝あんな感じだったんだ」

 「はい。何があったのかは僕も知らないんです。ハヤテさんも青さんも何も話してくれなくて・・・」


 それだけ青にとっては触れられたくない何かだったのだろうか?


 「僕も何とか仲直りして欲しくて頑張ったんですけど、全く効果なくて・・・」

 「・・・お互い仲直りはしたいと思ってると思う」

 「本当ですか!?」

 「うん。青のようは様子見寺はまだそうだって直ぐわかる。ハヤテの方は感情にモヤがかかっていたけど、謝罪の気持ちは見え隠れしてた」


 さて、どうしたものか。一応お互いに仲直りはしたいらしい。

 だが、問題はどうやって仲直りさせるかだ。

 こうゆう時、カケルはどうしているだろうか。

 いや恐らくあの人なら、「なるほどな。めんどくさいから直接二人っきりにさせて、葵が二人の思ってる事をそのまま教えてやればいいんじゃね?」とかデリカシーのない発言をするだろう。

 気遣いは出来るのだがあの男はそこら辺のデリカシーが致命的に欠けている。

 因みにダイならば、事情を知った上で「そんな男なんか忘れて俺と一緒に暮らさないかい?」と青をそのまま堕としにかかる。


 「・・・全く参考にならない」

 「え??」

 「うんでもそうだ。放課後、私は青、あなたはハヤテを屋上に連れて来て」

 「え?それでどうするんですか??」

 「簡単。無理やり和解させる」


 やはり時には直球で行く事も大切だ。・・・決してめんどくさくなったからでは断じてない。

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