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第49話 信じてやるか

 天辰の訃報。それはネオ・アストラルシティ中で話題となっていた。

 政府側にとっても天辰の死は突然の出来事であり、宗一郎総理と十二司支は緊急会議を開いていた。

 

 「えぇい!どうなっているのだ!何故だ?何故あれほどの男が亡くなるのだ!」


 牛の十二司支である牛次は机を力強く叩きつけ憤怒の感情を強く露わにした。


 「落ち着け。ここで怒っても何も変わらない」

 「しかし総理!」

 「総理のおっしゃる通りですよ牛次さん。今やるべき事は天辰さんを殺した奴を見つける事です」

 「黙れクール!そんな事はわかっておる!」


 完全に頭に血が昇ってしまっている牛次を諌めながら総理補佐である若い青年、クールが口を開いた。


 「皆さん一旦、整理してみましょう。天辰さんは第三次世界大戦を生き抜いた戦士の一人です。その中でも英雄とされているアーサー・アルトグレイアスを除けば五本の指に入る実力者です」

 「ふんっ!そんな事、言われんでも分かっておるわ!」

 「つまりです。そんな方を倒せる可能性がある人はかなり絞れる筈です」


 クールは自身の手に持つ資料を十二司支の一人一人に渡した。


 「うわーよく調べましたねぇ」

 「すんません漢字にルビ貼ってくれませんすかね?」

 「えぇい若い者共は黙っておれ!」

 

 その資料には数名の顔とその人のデータが載っており、第三次世界大戦時においてその人達は大きな戦果を挙げた人物ばかりだった。


 「私が個人的に調べた天辰さんを単独で、もしくわ複数人で倒せる人達です」

 「若造の癖にいつの間にこんな物を・・・」

 「いつも君にばかり任せてしまってすまないなクール君」


 宗一郎は資料を見ながら、常に自分の仕事のサポートをしてもらっているクールに対して感謝の意を述べた。


 「気にしないでください。貴方には拾ってもらった恩がありますから」


 青年は見る人によっては一撃で恋に堕ちるであろう優しい笑みを浮かべ答えた。

 そんな二人を牛次は面白くないという表情で見ていた。


 「ふんっ!」

 「おや?あまり面白くないって感じですかメェ〜」

 「うるさい!ともかく、天辰を殺したのがこいつらの誰かならば、片っ端からリストの奴ら捕えさせろ!」

 「いやいや、」

 「それは・・・」

 「牛次、流石にそこまでやるわけにはいかない。仮に彼らの誰かが犯人だったとしても、犯人ではない者まで捕らえてしまうことになるぞ」


 牛次は再び机を強く叩きつけ十ニ司支全体に支持を下した。

 しかし十二司支はおろか、総理である宗一郎も行き過ぎだその支持には反対の意を示した。


 「しかし!?」

 「落ち着くんだ。クール君、この件は君に任せてもいいかな?」

 「なッ!?何故ですか総理!!こんな若造なんかよりも、この私に!」

 「お前は今冷静じゃない頭を冷やせ。後は任せたぞクール君」


 宗一郎は今回の事件をクールに任せ、席を立ち次の仕事へと向かっていった。


 「ぐっ!何故、、、」


 今までどんな時でも宗一郎に尽くしてきた。それなのに宗一郎はどうだ?

 たかが少し優秀で総理補佐の役職につかせてもらっているだけのあんな若造に全てを任せ、頭を冷やせだと?

 ふざけるな!自分に任せてさえくれれば全てが上手くいき、天辰を殺した相手を確実に捕える事ができる。

 頭の中でそんなことを考えていた牛次の元へ、クールが席を立ち話しかけてきた。


 「牛次さん」

 「何だ!この俺をバカにしに来たのか!?」

 「いえ。そうではありません。今回の件、自分の様な若輩者に総理は託してくれたのですが・・・本当の話、自分では荷が重いと思うんです」


 当たり前だ。お前程度の少し頭のいいだけの男に何ができるというのだ。


 「ふんっ、よく分かってるではないか」

 「そこで提案なのですがこの件、牛次さんに任せてもいいですか?」

 「・・・何?」

 「宗一郎総理はああ言っていましたが、牛次さんの提案は正解だと思います。そもそも天辰さんが何故、狙われたのか私はそこが重要だと思うんです」

 「何故、天辰が狙われたのか・・・総理の命を狙ってるのか??」

 

 あり得ない話ではない。宗一郎総理が主体となっている現政府は、実は国外との関係は必要最低限としている。

 総理は現日本がまとまっていない状態で各国の政府を相手にしては必ずその穴を突かれると考えている。そうならない為にも今は国外との関係よりも内政の基盤を整える必要がある。話はそれからだと話していた。

 その事もあり、宗一郎総理の退席を望む声が内外問わずに一定数いる。

 その為、命を狙われやすい立場にある。


 「そうか。天辰は総理の命を狙う者達にとっては一番の脅威だ」

 「ええ。だからこそ天辰は真っ先にやられたんだと思います。そして天辰さんがやられた今、総理の命はとても危険な状態にあります」

 「ふざけおって!」

 「ですから変わっていただきたいのです。天辰さんがいなくなった今、総理の命を守れるのは牛次さんしかいません。だからできるだけ速くに犯人を見つけてもらいたいのです。それはまだ経験が浅い自分では出来ないことですから・・・」


 確かにこの男の言う通り。犯人を見つけるのならば経験豊富な自分がやった方が速く、そして確実に見つけることが出来るだろう。

 しかし、もし自身で動いたとすれば問題が一つある。


 「この俺が動いている間、総理は誰が守るのだ?」

 「自分が命に変えても守ります」

 「はぁ?貴様がぁ!?」


 冗談ではない。今さっき経験が浅いと言った若造に任せる?

 そんな事が出来るはずがないだろう。しかし、現状を考えてみるとそれが最善でもある。

 

 「うぅむ・・・」


 辺りを見渡し、自分よりかは歳が下ではあるが決して若造ではない者達は勿論、この十二司支には何人かいる。


 「はぁ。相変わらずウチがおる意味あるんかねぇ。こうゆう会議、肩凝ってしゃーないわぁ」

 「もう歳なんじゃないですか?、かくゆう私も昨日まで海外の方に飛んでいたので疲れが取れてなくて」


 後は酉の十二司支である研究者の男がいるが、そいつは今回諸事情により欠席している。ネオ・アストラルシティのほとんどのシステムを作り上げている男だ、何かトラブルでもあったのだろう。

 

 「牛次さん」

 「何だ。今考え事を・・・」

 「俺にやらせてください!」

 「はぁ!?貴様の様な若造にか?」


 突然頭を下げてきたこの男に内心、少しビビリはしたが直ぐに平静に戻り、いつもの様に嫌味を口にした。


 「確かに俺はまだまだ若造です。ですが!総理を守りたいたと言う気持ちは牛次さん、貴方にだって負けてないつもりです!お願いします牛次さん。この命に変えてもあの人の事は守ります!!」


 そう言った男の真剣な眼差しと目が合った。

 この男は本気で総理の事を考え、守ろうとしている。気持ちだって俺に負けないくらいあるだろうとも思わせるその眼差しを信じてみることにした。


 「・・・わかった。総理のことはお前に任せる。俺は出来るだけ速くに犯人を捕まえる、それまで命に変えても守れよ!」

 「言われなくても」

 「ふんっ!若造が生意気言うな」


 そして牛次は部屋を後にした。

 若造は若造でもあそこまで芯があるのならば信じてみても良いかもしれない。自身がまさかそんな事を考えるとは思わなかったと考えながら、少し冷静になれた事をクールに感謝した。


 「やーと行きましたね〜」

 「あぁだがこれで日本政府は手にしたも同然だ。後はあの男に邪魔になりそうな奴らを捕らえさせればいいだけだ」

 「ですね〜。あ、東部の方とも話は付きましたよ?あなたのやる事には口出しないと約束させました」

 「流石だな。後の事は全てやっておく。お前達はいつでも動けるようにしておけ」


 クールはフェイスマスクをつけた男とその場にいた十二司支達にそう命令をして自室へと足を運んだ。


 ーー

 自室

 

 会議室を出てその足で宗一郎総理からいただいた自室へと足を運ぶ。

 今のところ、全ては順調に事が運んでいる。後は計画に支障をきたす可能性がある奴らを牛次に捕らえさせ、あいつの力を完全に取り戻させれば後は簡単だ。


 「その前に報告をしておくか・・・」


 自室に戻り、直ぐに父と連絡を取る為、壁に魔法陣を描き、その魔法陣で魔法を発動させた。

 映像が映し出され、そこにはまるで全てを見透かしているかの様な冷徹な目をこちらに男性がいた。


 「現代に現存するあらゆる魔法を極めた偉大なる魔術王、アルカディウス・クロノス・アウレス。息子のクールです」

 『・・・』

 「今のところは計画は順調に進んでおります。後はかつて父が封じ込めたあいつの力を取り戻させるだけです」

 『ならばいちいち報告をするな。お前には期待している計画が順調であるのならそのまま進めろ』


 父はそう言って直ぐに連絡魔法を切った。

 相変わらず自分の魔法以外、何も興味を示さない男だ。自分の子であってもそれは例外じゃない。


 「あんたにこうするのもこれで最後だ。せいぜい高みの見物でも決め込んでいろ」

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