第42話 噂
男の子を拾った三人はもう一度、ハヤテの自宅まで引き返すことになった。
ハヤテは反対したが、無影によって男の子と青、緑は今晩はハヤテの家に泊まることになった。
「くそっ!くそっ!」
「ほっほっほっハヤテよ、そう悪態ばかりつくものでもないぞ」
「だって師匠」
ハヤテはリビングにて男の子から話を聞き出そうとする青と緑達とは別で外で剣を振っていた。
「あんな幼子をほっとくわけにもいかんだろう?」
「ぐっ、そ、それはそうですけど・・・」
「「ダメだぁぁぁー!!!」」
無影とハヤテが話をしていると男の子から話を聞き出そうとしていた筈の青と緑が少し大きな声で根を上げているのが耳に入った。
「ねぇーせめて名前だけでも教えてよ〜」
「うるさいブス」
「引っ叩いていい?」
「お、落ち着いてください青さん!!」
「お前もうるさいぞインゲン」
「叩きましょう」
「お前ら落ち着け!」
青と緑の二人を宥めながらハヤテはため息を吐きながら仕方なく男の子と対峙した。
正直、何故だかは分からないが苦手だった。ハヤテはそう思いながら恐る恐る名前を聞き出した。
「あー・・・えーと・・・名前なんて言うんだ」
「・・・優希」
「「名前言った!」」
ハヤテの問いかけに優希は自分の名前を言い、それに対してハヤテは驚いた。
「言えるならもっと早くに名前を言えよ」
「別に・・・あの二人がうるさいから言う気がなかっただけだよ」
「なるほどな」
「納得するなよぉ!」
青はハヤテに詰め寄り、ハヤテはそれを鬱陶しそうに交わしながら話を進めた。
「それで何で子供が一人であんな所に居たんだ」
「それは・・・」
「言いづらいこと?」
「うるさいブス」
「私この子嫌い。ハヤテ後任せた」
そう言った青は立ち上がり部屋を後にした。緑もそれに続いて部屋をでていってしまった。
「あ!おい!・・・お前らが連れてきたんだろ・・・」
「・・・姉を探してるんだ」
「姉?」
青と緑を追おうとした時、優希が姉と口にしたのを聞きハヤテと無影は振り向いた。
「どうゆうことだ?」
「数日前から姉が家に帰ってきてない」
「こころおぼえはないのか?」
「ない」
「師匠」
「うーむ・・・ここいらで最近そんな話を聞いた覚えはないのぉ。別の場所では聞いたことがあるがの」
「それなら私も聞いたことあるよ!」
ハヤテと無影、優希が話している所に突然、先程ハヤテに任せてどこかに行っていた青と緑の二人が戻ってきた。
「お前ら何してたんだよ・・・」
「まぁまぁそんな事より、その話最近噂になってるのと似てるんだよね」
青は部屋へと入りお茶と煎餅を机に広げ緑と一緒に座った。ハヤテは自身の家の物を勝手にだした事を咎めようとしたが、無影が許可をおろしたことを知りそのまま話を進めることにした。
「で、その噂ってのはどんなのなんだ?」
「えーとね赤服女って奴だよ聞いたことない?」
「「「「赤服女?」」」
「うん。都市伝説みたいな奴で、・・・ちょっと待って師匠さんあの・・・」
青は何か思い立ったのか師匠のところまで来て耳打ちをした。そして師匠はそれに対して親指を立てて何かに賛成したらしく、青は勢いよく部屋から飛び出して行ってしまった。
暫くして再び部屋に戻ってきた青は何処から持ってきたのか分からない蝋燭を机の上に置いた。
「どっからもってきたんだよ・・・」
「この家の物置。師匠さんに聞いたらあるって言ったから」
「ほっほっほっ好きになさい青ちゃんにはいつもお世話になってるからのぉ」
「ありがとうございます!」
青は蝋燭に火をつけ部屋の電気を消し、早速先ほどの赤服女について話し始めた。
「赤服女はね、深夜女の子一人で出歩いているとどこからともなく現れた黒い髪を足下まで伸ばして血のように真っ赤な服を着た女の人がその子を連れて行ってその子の皮を剥いだり、肉を削ぎ落として自分の体の一部にするらしい」
意外にも話し下手なのかハヤテはそこまで恐ろしく感じず、あくまで噂程度に流れている話だと思っていた。師匠が次の一言を言うまでは・・・
「うーむ。そう言えば最近、とあるスジからの情報なんじゃが夜外に出た学生の女子達が行方不明になっとるらしい」
「本当ですか?」
「うむ。警察も動いておるらしいんじゃが、どうも手掛かりが全くないらしくての」
「じゃ、じゃあこ、こ、この話はほ、本当に!?!?」
緑は震える声で今にも泣きそうな状態になっていた。一方、姉を探している優希の方はその話に特に何も感じなかったのか先程と変わらない様子でお茶を飲みながら聞いていた。
「まぁ女子が行方不明になっとるからそんな噂が立っとるだけじゃよ安心しなさい」
「・・・でも火のないところに煙は立たないって言う」
優希の余計な一言に場が一瞬で凍りついた。
「ほ、ほっほっほっ!ま、まぁ安心なさい根がなくとも花は咲くと言うじゃろう?」
「そ、そうだよね!この噂が本当だったら私今頃剥ぎ落とされてるしさ!」
「で、で、で、ですよね!?ち、因みに男はどうなるとかは・・・」
「普通に死ぬんじゃないか?」
「ひ、ひぃーーーーーー!!!」
「まぁまぁ今日はもう遅い。皆今日は寝て明日色々考えなさい」
時計を見ると既に十二時を回っており、ハヤテ達は大急ぎで寝る準備を整え無影が用意したベッドで寝ることとなった。
ーー
次の日、ハヤテと青、緑の三人は学校があると言うことから朝から急ぎ家を出て行った。
優希はその間、無影と共にお留守番することになった。
「それにしてもあんな小さな子が夜遅くに出歩くなんて親心配しないのかな?」
「俺は知らん」
「そ、そうですよね」
学校への通学路を三人であるく道すがら優希のことについて話していた三人は少し先に葵が歩いている事に気がつき、青は走って抱きつきに行った。
「葵ちゃーん!」
「重い抱きついてこないで」
「えーいいじゃーん!」
「鬱陶しい」
朝からテンションが高い青を鬱陶しがりながら葵は後ろを振り向きハヤテ達に軽い会釈をして近づいて行った。
「これ貴方達のでしょ。どうにかして」
「ど、どうにか」
「してと言われても」
「「なぁ?」」
珍しく息のあった二人は葵に抱きつきながら頬擦りまでし始めている青の心底楽しそうな表情と葵の心底鬱陶しそうな表情を見比べてそのまま歩いて学校に向かった。
「あ、ちょ、」
「へへっ、私達も行こ?」
いつの間にか離れて隣にいた青に葵は手を引かれ学校へと向かっていった。
そんなハヤテ達の姿を後方からジッと見つめる人物がいた。その人物はハヤテ達が入って行った中学校を見つめながら姿を消した。




