第41話 軽いんだよ
「んっ・・・あれ?」
「起きたか」
「うう・・・なんか気持ち悪い」
上半身だけ起き上がった青は乗り物酔いをしたかのような気だるさに襲われた。
「師匠の気迫に押されてそれだけで済んでるんだマシな方だよ。これ飲め」
「き、はく?・・・そっか、師匠さんの稽古を覗こうとして・・・そこから記憶がなくなってるんだよね。ありがとう後・・・ごめんもう少し休んでてもいい?」
「あぁ」
ハヤテから手渡されたあったかいお茶を飲み少しだけ気だるさが抜けた青はそのまま敷かれていたベッドで横になった。
「好奇心は猫を殺すと言うがその通りだのぉ」
「師匠いつの間に!?」
ハヤテは突然した声に振り返ってみるとそこにはいつの間にか無影がタオルで汗を拭きながら立っていた。
「ほっほっほっ、わしの鍛練を覗き見たのじゃろう、わしが加減せんかったら皆死んでおったぞ」
「「ご、ごめんなさい」」
「まぁよいよい。若いうちはそれくらいの好奇心があるくらいが丁度良い。とりあえず漢方作ってきてあげるからハヤテは二人を見てなさい」
そのまま扉を閉め無影がいなくなり、ハヤテも読書を始めた。
しばらく静寂の時間が流れる中、青は先程家にお邪魔するときにハヤテが取り出していた手紙について思い出した。
「そういえば、ハヤテあの手紙どうしたの?」
「手紙?・・・あぁ捨てたよ」
「え!?な、なんで?」
まるでいつもそうだと言わんばかりな声量で淡々とそう答えたハヤテに青は驚きを隠せないでいた。
「・・・兄貴からの手紙だからだ」
「え!?じゃ、じゃあ尚更、」
「いいんだよ」
それ以上は何も言うなと言わんばかりにハヤテは食い気味に青の言葉に被せて言葉を紡いだ。
「わかった。でもいいなぁお兄さんから手紙が来るなんてさ。私は羨ましいよ」
「・・・なぁ前から思ってたんだが、お前って兄弟いるのか?」
「えっ?」
ハヤテが発した言葉なら青は少し俯いてから答えた。
「うん・・・一応、ね」
「やっぱそうだったのか」
「えへへ、一応一緒に住んではいるんだけどもうずっと帰ってきてなくてさ・・・」
「あっ、いやすまん」
「ん?あ!し、死んだわけじゃないよ!!?」
青は慌てて訂正を行い兄が死んでいないことを伝えた。
「あ、違ったのかすまん」
「私の方こそごめん。お兄ちゃんは今政府の役人さんだから忙しくてさ」
「そうゆうことか」
「ほれ、漢方持ってきたぞ・・・お邪魔だったかの?」
「「いえ全然」」
その後、緑も起こし夕食をハヤテの家で食べた後青と緑は家に帰る事にした。
ハヤテも無影に言われ途中まで送る事になった。
「毎回ありがとうね」
「師匠に言われたからだ」
「またまたぁ〜〜」
青の言葉に若干苛立ちながらハヤテは二人と共に駅まで歩いた。
そんな道中だった。
「だからよぉ。お前がぶつかったせいでザザの兄貴の超高級服によぉ。アイスクリームがついちゃっただろうがよぉ。ねぇ、ザザのアニィ?」
「おう、その通りだ。子分の言う通りだどうしてくれんだ?」
ザザの兄貴と呼ばれるドレッドヘアの筋肉質の男と二人のいかにもな子分達に小柄な少年が囲まれてキレられていた。
「・・・」
「何とか言ったらどうなんだ?あぁ?いいかザザの兄貴はここいらじゃあ、鉄腕のザザと呼ばれてるんだぞ!」
「痛い目見たくなかったらとっととザザのアニィに持ってるもん渡しなぁ!」
「な、なんかまずそうですよ。に、逃げましょうよ」
「ダメだよ!」
そう言った青はそのまま男達の元まで突き進んでいった。ハヤテはため息を吐きながら青の続いていき、緑もそれに続いた。
「あ、貴方達!子供にお金をせびるなんて恥ずかしいと思わないの!?」
「あ?何だテメェは!」
青に気がついた男達は振り返り三人と対峙した。
「何だガキじゃねーか。どうやらこいつと同じように痛い目見たいらしいな?」
「ね、アニィこのガキよく見たら結構可愛くないっすか?」
「おー確かにへへ、兄貴後ろの男共ボコした後にこの女で楽しみましょーよ」
青の全身をジロジロと見ながら二人の男は舌舐めずりをした。
そんな二人を他所にザザはポケットからメリケンサックを取り出して腕にはめた。
「ふん。お前達の年下好きは理解ができんな。こんな貧相な胸のどこが良いんだ」
「んなっ!!?ひ、ひ、貧相って、な、な、な!!!」
「ぷっ」
「おいハヤテェ!笑うなハヤテェ!!!」
思わず笑ってしまったハヤテを振り返り怒鳴っていた青を後ろからザザがメリケンサックで殴りかかった。
ハヤテは直ぐに青を緑の元へと飛ばし刀の鞘でその拳を受け止めた。
ガキンッ!という音と共に当たりに衝撃波が飛ばされた。
「・・・ほぉ、少しはやるようだな」
「お前はこの程度か」
「あ?」
見るからに自分よりも年下のガキに挑発されたザザは怒りに任せて更に拳で殴り続けた。
「オラオラオラオラオラオラオラァァァァァァァァ!!!どうしたどうしたぁ!」
「でたぁ!アニィのメリコミパンチ!相手が地面や壁にめり込むまで殴りつける得意技!!!」
子分の説明通り、ハヤテはザザのメリコミパンチによってどんどん後ろへ下がっていっていた。
「へへっ、このまま後ろの壁にめり込ませてやるヨォ!!!」
「ハヤテ!」
「軽いな」
「あぁ!?」
刀を一瞬、鞘から抜いたハヤテはザザが瞬きした瞬間、いつの間にかザザの後ろに立っていた。
「な!?いつの間に!!」
「・・・あいつの足元にも及ばないな」
そう言いながらハヤテは自分を真っ正面から撃ち破り、あの地獄から助け出してくれたある男を思い浮かべながら鞘を刀にしまった。
「・・・誰かのために振るわない拳なんて軽いんだよ」
「ぐっ!ぐ、く、くそ、がぁぁぁ」
「あ、兄貴!!?」「アニィ!?そんなバカな!」
ザザはそのままいきなり後ろへと倒れ気を失っていた。子分達はザザの側に近寄り両肩を持ち上げた。
「お、お前達!おぼえていやがれぇぇぇぇぇ!」
「あ、お決まりのセリフだ・・・」
どんどんと遠くなる三人を見ながら青達は直ぐに絡まれていた男の子の方へと足を運んだ。
男の子の外見はハヤテ達よりも更に若くまるで小学生かのように思ったが、男の子の瞳がそれを否定するかのように冷徹に煌めいていた。
「き、君大丈夫だった?」
「こんな夜に一人で出歩いちゃいけないよ」
「・・・チッ」
「「え?」」
男の子から一瞬、舌打ちの様な音を聞いた青と緑はお互いに顔を見合わせ、気のせいかと思いもう一度向き直った。
しかし、次の一言でそれが間違いではない事だと知ることになった。
「邪魔しやがって」
「「え、え、え?」」
「あんたらのせいでせっかくの姉の手掛かりを失っちゃったじゃないか」
青と緑はハヤテの方を向いた。二人の注目を浴びたハヤテは肩を上げた。




