第40話 気迫
時はカケル達がメイド喫茶へいく前日に遡り、森林が生い茂る道を進んだ先にある一軒家に三人の人影があった。
「葵ちゃん来れなくて残念だね」
「し、仕方ないですよ。よ、用事があったらしいし」
「いやお前らも帰れよ」
「えーいいじゃん。ハヤテ勉強得意なんだから教えてよー」
ハヤテはため息を吐きながら青と緑の二人を連れて家に帰ってきた。
玄関に入る前にハヤテはポストに一枚の手紙が入っていることに気がつきそれを無造作に取ってから玄関の扉を開けた。
「お邪魔しまーす!」
「お、お邪魔します」
「ただいま」
三人がそう言って靴を脱いで家に上がろうとした時、部屋からハヤテの祖父であり同時に剣の師匠でもある男性、無影と12司支の辰の称号を授かっている天辰の二人がリビングから出てきた。
「おやっ?ほっほっほっお帰りなさい。青ちゃんと緑くんもゆっくりしていきなさい」
「はい!これつまらないものですけどどうぞ!」
「あ、ありがとうございます。あ、あの僕もこれどうぞ」
「おやおや、すまんねぇ」
持ってきたお菓子を渡して二人は早速靴を脱ぎリビングへと足を運んだ。そんな二人を見てハヤテは少し困った顔をしながらそんな光景に微かに笑みを浮かべて部屋に入った。
無影と天辰の三人はその姿を見て玄関へと足を運んでいった。
「じゃあの」
「はい。ではまたいつか」
無影は天辰を見送った後、ハヤテ達に出すお茶を作るためにキッチンへと足を運んでいった。
リビングではいつものように青と緑の二人がハヤテに勉強を教えて貰うため早速勉強を始めていた。
「ハヤテ〜ここ教えて〜」
「この問題はこの形式の式を使え」
「は、ハヤテさんあのこれ・・・」
「声が聞こえないんだよ・・・もっとハッキリ話せ」
「ひっ!ご、ごめんなさい・・・」
「あ、いや別に怒ったわけじゃ・・・」
「ハ〜ヤ〜テ〜」
「ああもう!お前は逆に少しくらい黙れないのか!!!つーか何で毎回俺の家で勉強やるんだよ!?お前らの家の方が近いし絶対そっちで勉強した方がいいだろうが!!!」
本来ならば帰って直ぐにランニングに出かける筈の時間を最近は二人の勉強を見ることに時間を割いていた。
「ば、僕の家はが、学生寮なので・・・」
「アハハ・・・私の家も結構遠いんだよね・・・」
その時、ほんの一瞬ハヤテは青の表情が曇ったのを見逃さなかった。
それを疑問に思い声をかけようとした時だった。
「ほっほっほっ、待たせたのぉ」
「あ、いつもいつもすみません」
「ほっほっ気にするでない。ハヤテよわしはしばらく道場に籠るからの」
「あ、はい。わかりました」
お茶を机に置き無影はそのまま部屋を後にした。
「はぁー疲れたー」
「アハハ確かに今日はここまでにしときましょうか」
「じゃあお前らとっとと帰れ」
無影が道場に行ってからかなりの時間が流れた。その間に三人は小休止を挟みながらも勉強を続けて人通りの区切りがつき休んでいた。
「師匠さん結局戻ってこなかったね」
「そういえばそうですね」
「当たり前だ。師匠が道場に籠ると言った時は本当に何週間も籠る時があるくらいだからな」
「な、何週間もですか?す、すごいですね」
「そんなに籠っていつも何してるの?」
青の質問に対し、ハヤテは少しだけ考えて首を傾げた。
「知らん」
「え?」
「暗黙の了解ってやつだ。師匠には迷惑かけてるしなるべくなら邪魔したくないんだよ」
ハヤテは昔、迷惑をかけないように道場にいる間は自分が全部やろうとして毎回失敗していたことを思い出して少し微笑んだ。
「あっ、ハヤテ今何かいいこと思い出してるでしょ?」
「はぁ?そんなわけないだろ馬鹿なこと言ってないでとっとと帰れ」
席を立ち上がりハヤテはそのままキッチンにコップなどを置きにいってしまった。
そんなハヤテの姿を青は眺めながら少し羨ましそうにしていた。しばらくしてハヤテが戻ってきたところで青と緑の二人は帰るため玄関に足を運んだ。
そして外に出た時、ふと青が口を開いた。
「師匠さんって・・・道場でどんな稽古してるんだろうね?」
「「え?」」
青の発言に二人は驚き振り向いた。
「いきなり何言ってんだ」
「だって気にならない?ハヤテだって見たことないんでしょ?」
「それは・・・そうなんだが」
「ねぇ・・・見に行ってみない?」
青の提案にハヤテと緑の二人は顔を見合わた。
そして三人は道場前までいつの間にか来ていた。
「少し覗いたら直ぐ戻るぞ。師匠の邪魔しちゃ悪いからな」
「分かってるよ」
青達が道場の扉を少し開けた瞬間だった。
ドサッという音がし見ると緑が倒れていた。
「りょくッ、」
「ッ!?まずいっ!!?」
緑に続いて青もいきなり気を失ってしまい、ハヤテは最初は分からなかったが何故なのかそれは直ぐに分かった。
師匠である無影から発せられる強烈な気迫が二人を気絶させたのだ。それが分かった時、ハヤテ自身もすでに気迫に当てられ気を失いかけていた。
遠くなる意識の中で気力を振り絞りハヤテは震える手で何とか扉を閉めることができた。
緊張が無くなったからなのか、ハヤテはその場で扉を背に座り込んだ。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
ギリギリで呼吸が出来るだけで話すことは愚か、立ち上がる事さえも全く出来なかった。
初めてだった。師匠からあそこまでの気迫を感じるのは今までになく、ハヤテは震える手で自分の頬を触りまだ自分が生きているかを思わず確認してしまった。
少し時間が経ち、やっと正常に呼吸が出来るようになったハヤテは立ち上がり青と緑の二人を見た。
どうやら二人は運良く呼吸困難になる前に気絶したようでスゥスゥいいながら眠っていた。
そんな二人を見てハヤテは安堵しながら二人を持ち上げてリビングまで運んでいった。




