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第36話 人心掌握の糸

 メスがカケルに当たる寸前で砕蔵はカケルを押し飛ばした。

 

 「危ない!ぐあっ!!!」

 「砕蔵!?何しやがんだ!!!」


 しかし自身が当たってしまいその場で倒れ込んでしまった。

 それを見たカケルは叩いてきた男を蹴り飛ばし砕蔵に近づいた。砕蔵の肩に刺さったメスだが、幸いそこまで深く刺さってはおらず、カケルは直ぐに持っていたハンカチで傷を抑えながらメスを抜いた。


 「悪りぃな」

 「別に何ともない。それよりもこれはどうなっているのだ?」


 カケルが振り返ると病院内にいた人達が一斉にこちらを向いていた。ただそれだけならばうるさくしすぎて怒ったのだと考えていたが、その人達からは微かだが殺気が漏れ出ていた。


 「ん?ダイ?お前何してんだ?」


 更にその集団にはダイも混ざっていた。あのダイまで様子がおかしいことを不可解に思ったカケルは辺りを見渡した。そして様子がおかしい人達の上から極小サイズの糸が伸びているのに気がついた。


 「あの糸・・・まさか」

 

 カケルが何かに気がついた瞬間、今まで静止していた人達が一斉に動き出した。

 おおよそ人とは思えないほどの動きで迫りくる人達に砕蔵は忍術を使おうとしたが、カケルがそれを止め襟を掴んで逃げ出した。

 しばらくして人気のない部屋で身を隠すことにしたカケルはその部屋に入った。


 「ここなら暫くは大丈夫だろ」

 「くっ、貴様!何故、止めた!あの程度なら忍術でッ」

 「ダメだ。あいつらは操られてる」

 「?、何を?」

 「ダイ達の上に細い糸みたいなのが見えたんだ。多分俺がこの前戦った仮面つけた奴の仕業だ」


 カケルは辺りを見渡して誰もいない事を確認し、廊下にでた。あの時の女が犯人ならばおそらくこの病院内のどこかにいる。そう判断したカケルは身を隠しながらあの女を探し出すことにした。


 「お前はそこで隠れててくれ。あいつの狙いはお前だからさ」

 「そんなわけにはいかぬ!狙われているのが拙者ならば自身で解決するのみだ!」

 「いやだめだ。もし捕まったらどうなるかわからないからな」

 「しかし!」


 砕蔵が勢い余って立ち上がった時だった。病室の窓を割って外から何人もの人達がカケル達が隠れていた部屋へ入ってきた。


 「チッ、そりゃバレるわな!!」


 近くにあったベッドを蹴り上げて自分達に迫ってくる人々にぶつけながらカケルと砕蔵の二人は病室から出た。


 「めんどくせぇなぁ!!!」

 「ならば!拙者が忍術で壁を作るのはどうだ!?」

 「壁を・・・天才じゃん」

 「ふっ、褒めるでない。そうと決まれば!」


 砕蔵は立ち止まり走って迫り来る人達の方を振り向いた。


 「行くぞ!土遁"土流岩壁"!」


 砕蔵は地面に手をつきそう唱えた。しかし、本来なら目の前の地面から壁が出てくるはずだった。

 

 「・・・でてこない?」

 「何してんだ!」

 「じ、術がでないんだ!」

 「はぁ?何言ってんだ?」

 「土流岩壁!土流岩壁!!土流岩壁!!!何故出てこないんだ!!!」


 手を地面に何回も叩きつけ砕蔵は叫び続けた。


 「どうなっているんだ!拙者が土を操れないなどありぬ!?」

 「・・・お前まさか、コンクリートは駄目なのか?」

 「こん・・・くりーと?何だそれは???」

 「お前・・・マジか・・・?」


 砕蔵が生きていた時代。それが何時代だったかは結局わからなかった。

 しかし忍と言うことから、忍が活躍していた時代。つまり戦国時代辺りに砕蔵は生きていたかも知れないとカケルは考えていた。


 「戦国時代にはまだコンクリートはない。だから忍術でも扱えないって事か・・・」

 「何なのだ?そのこんくりーととは?」

 「えーと・・・コンクリートはって来てる来てる!」


 カケルが指をさした方を振り返るともうすぐそこまで操られている人達は来ていた。

 二人は猛ダッシュで病院内を走り回り、そして屋上へと上がって行った。


 「ハァ…ハァ…こ、ここまでくれば安心で・・・」

 「いや、多分誘導されたな。ほれ」

 「気がついていたか」


 砕蔵が前を見てみるとそこには仮面をつけた忍らしき人が立っていた。


 「ここは屋上逃げ場はない。その男を差し出せ」

 「悪いがその答えはノーだ。それにお前俺にこの前ボコボコにされたの忘れたのかよ?」

 「その為にこの男を操り人形にしたのだ」


 仮面の女が腕を上げると女の後ろからダイが現れた。それに続いて次々と屋上の扉から人が現れ、一瞬でカケルと砕蔵は囲まれてしまった。


 「この男はお前の仲間だな」

 「そうだが、それがどうした」

 「ならば、話は早い。この男を殺されたくなければ、その男をこちらへ渡せ」


 女はクナイを取り出し、ダイの首元にクナイを構えた。


 「それからお前の事は色々と調べさせてもらった。お前に近しい人物達には既に私の部下を差し向けてある。私がこのスマホを使って命を下せば直ぐにでも始末にかかるぞ」

 「・・・」

 「さて、どうする?」

 「くっ、カケルこうなっては仕方がない拙者が奴らの元へ行く世話になった」


 そう言った砕蔵は仮面の女の元へとゆっくり歩き出した。しかしそれをカケルが止めた。


 「待て。まだ諦めるにははえーよ」

 「なに?」

 「バカな!何を言ってるてるんだ!このままではお前の大切な人達が!」

 「すぅーーーー。ダァァァァァァァァァァイ!!!」

 「「「!!?」」」


 息を大きく吸い込んだカケルは大きな声でダイの名前を叫んだ。その声はネオ・アストラルシティ中に響き渡り、病院はおろか病院周辺の建物にまでひび割れていった。


 「くぅぅぅぅ。な、い、いきなり何で」

 「くっ、耳がっ、」


 砕蔵や仮面の女はカケルの近くにいたこともあり、その声によって意識を失いかけていた。


 「まぁまぁ見とけ。ダイ!」


 カケルはもう一度叫びダイの後ろを指差した。


 「その仮面の忍、女だぞ。あとめちゃ美人だ」

 「!?、な、何を言ってッ?」


 仮面の女が困惑したその時だった。

 プチンッ、と糸が切れる音がした。


 「何???」

 「お・・・ん・・・なぁぁぁぁ!!!」

 「バカな!?絡新蜘蛛の"人心掌握の糸"だぞ?」


 女という単語によって意識を取り戻したダイは糸を全て引きちぎり仮面の女の方を向いた。


 「お、前・・・女だったんだな!へへっ、どんな素顔なんだその仮面の下に隠した素顔を俺に見せてくれよ〜」

 「な、何なのだあやつは・・・」

 「ん?ただの頭のイカれた変態だぜ?」

 「くっ!こんなふざけた奴に我が糸がッ!?」

 「さぁ!素顔を見せやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


 ダイは飛び上がり仮面の女の仮面を剥ごうと襲いかかった。

 その瞬間だった。飛び上がったダイの真上から何者かが落ちて来た。


 「ダイ!?」

 「何者だ!?・・・き、さまはまさ、か?」


 煙が晴れ現れたのは普段の人間よりも一回り大きい大柄な男が現れた。

 砕蔵はその男が何者なのか知っているのか、その男の姿に驚愕していた。


 「ワ・・・ガナハ・・・シバタ・・・シバタカツイエナリィィィィィィィィィィィィ!!!」

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