第26話 理由
俺の家にあいつらが来てから数週間が経った。
学校に行って授業を受けて帰って鍛える為筋トレをする。
今日も何も変わらない一日を過ごす・・・はずだった。
「おはようハヤテ君」
「おはようございます。ハヤテさん」
「・・・」
この数週間、あいつらは俺に毎日のように突っかかるようになった。授業中だろうが休み時間だろうがとにかく隙あらばこちらに来て話しかけて来た。
「ハヤテ君お昼一緒に食べよう?」
「・・・何で俺が、」
「あ、葵ちゃーん!葵ちゃんも一緒に食べよう!ってあれ葵ちゃーん!おーい何で逃げるのー」
この二人も厄介だが、一番厄介な奴はこいつだ。葵と呼ばれている女。こいつは師匠曰く、嘘を見破れるらしい。こいつといることはリスクが高すぎる。
「あ、どこ行くんですかハヤテさん?」
「食事をしたいなら勝手にしろ。俺は別の場所で食べる」
「えー駄目だよー!一緒に食べようよー」
「あの、私も別の場所で、、、」
「駄目だよ!一緒に食べよ!」
「「え、えぇー」」
このように俺は毎日のようにこいつらに絡まれ続けている。
放課後、あいつらを巻くために一人教室に残って宿題をしていた。
「はぁ…何であいつらは」
「あれ?ハヤテ君?」
「げっ!?」
教室に入って来たのは今一番会いたくない相手の一人だある少女、青だった。
「何でお前がここに?」
「え?生徒会の仕事で少し遅くなっちゃって、荷物取りに来たんだけど」
青の席を見てみるとバッグがかかっており、ハヤテは頭に手をつけながらため息をついた。
「くそっ、俺としたことが何で気がつかなかったんだ・・」
「え、えっと・・・だ、大丈夫?」
「何でもない。早く帰れ邪魔だ」
「そんなこと言わずに一緒に帰ろう?」
わからない。
何故、目の前にいるこいつは俺なんかを構うんだろうか・・・。自分で言うのも何だが俺は人付き合いがそんなに得意じゃない。と言うか嫌いだ。
だからこそ今まで人を遠ざけて来た。・・・遠ざけて来たはずだったんだ。
「なのに何で俺はッ!」
「え?ど、どうしたの???」
あの日、寝坊して乗った電車で怪異に襲われていたこいつを助けてしまったのだろうか。普段ならどんな事があっても見捨てていたはずなのに。
「俺が今更人助けなんて、」
「え?え?あ、あのハヤテ君???」
人助けなんて今更しても何もない筈なのに俺は助けてしまった。
しかもそのせいで今こうして苦労している。
「慣れないことはするもんじゃないな・・・」
「は、ハヤテくーん?おーい?」
おっといけない話がかなりされてしまった。何故こいつは構うのか。何で俺を仲間に引き入れようとするのか。
「わかりきったことを考える」
「え?わかりきったこと???」
そうだ簡単なことだろうこいつらもあの男のように俺を都合よく利用しようとしているんだ。人は誰しもがそうだ誰かを利用する為にそいつに近づく。そして用がなくなれば捨てる。それはこいつらだって同じだ。
そう考えていたハヤテは突然、チクリと胸に何かが刺さったような感覚に襲われた。
「?、何だ?」
「ハ、ヤ、テ、君!!!」
「ん?お前まだ居たのか」
「いるよ!ずっと声掛けてたじゃんか!」
もぉ!と言いながら少し怒っている青を見てハヤテは無意識のうちに語りがけてしまった。
「なぁ、何で俺なんかを構うんだ?」
「え?」
青は勿論のこと、ハヤテ自身も自分でも思いもしない言葉を口にしていた事に驚いた。
「あ、いや、違う、すまん何でもない忘れろ」
「友達だからだよ?」
「は?」
「だから友達だからだよ」
「何を言ってるんだ俺に友達なんてものいら、」
「嘘だ」
俺の言葉を遮り断言したような口ぶりでこいつは真っ直ぐに俺の目を見てそう答えた。
「・・・何が嘘だ」
「今まではそんなこと思ったことも無かったけど、ハヤテ君と関わるようになって、たまにハヤテ君を見てるとわからんだ。ハヤテ君本当は寂しいんでしょ」
「・・・寂しいだと?」
意味がわからなかった。的外れもいいとこだ。俺が寂しい訳がない一人であることが好きな俺が何故それを寂しいと思うんだ。
「バカか、俺は一人が好きなんだよ」
「それも嘘。ハヤテ君は好きなんかじゃないよ」
「・・・れ」
「ハヤテ君もきっと本当は皆んなでいる方が好きなんだよ!」
「・・・まれ」
「だって私達といる時のハヤテ君、怒ってるように見えるけど、それ以上に楽しそうに、」
「黙れ!!!」
その一言で教室に静寂が戻った。
しかし青は先程と何も変わらない目でこちらをずっと見て来た。それを見ていた俺に言いようのない怒りが込み上げて来ていた。
「俺が寂しい?お前達といて楽しそうだと?勘違いするな!俺はお前達といて楽しかった事なんて一度だってないむしろ迷惑なんだよ!!!いつもいつも俺の邪魔ばかりして、それで何だ楽しそうにしてる?よくそんな図々しい事が言えたな!?」
「ごめん、でも私は、」
「そう思っただけだろ?残念だが俺は迷惑したことしかない!それがわかったんなら二度と俺に近づくな!いいな!!?」
席を立ち扉を強引に開けて俺は学校を後にした。
その日の夜、教室のことを思い出しながら俺は師匠と共に食事をしていた。
「・・・ハヤテよ。何かあったのか?」
「いえ、別に何も」
「ほっほっほ、青ちゃん達と何かあったんじゃな」
「ッ!?し、師匠には関係ないです!」
バンッ、と机に箸を勢いよく叩きつけ俺は立ち上がり部屋に戻ろうとしたがそれを師匠によって止められた。
「ハヤテ」
「何ですか師匠」
ハヤテを普段とは違う感情が垣間見える声色で呼び止めた師匠に気がついたらハヤテは振り向いた。
振り向いたハヤテに向かって師匠は一通の白い封筒を投げ渡した。
そして二人はそれ以降一言も発する事がなかった。
ーー
その日、とある施設内にて大勢の人の血が流れた。
そしてその血溜まりの上には黒武者の姿があった。
その奥にいた小太りの男に向かって黒武者は歩き出した。
「く、くそ!貴様が最近我々政府の要人を何人も殺してまわっていると言う黒武者か!?」
「・・・」
「なんで私の元に!?私はまだ死ぬわけにはいかないんだぁぁぁ!!!」
男は床に転がっていた拳銃を黒武者に向かって放った。しかしその銃弾は黒武者の鎧を貫通する事なく床に落ちた。
「死ね」
「う、うわぁぁぁ!!!」
黒武者の刀が小太りの男に向かって真っ直ぐに振り落とされた。
小太りの男は全てを諦めて目を瞑っていたが、いつまで経っても痛みを感じる事がないことに違和感を覚えて恐る恐る目を開けた。
「よぉまた会ったな」
「またお前か!何でも屋ァァァ!!!」
黒武者は小太りの男との間に割って入って現れたカケルの脇腹に蹴りを入れて吹き飛ばし、そのまま吹き飛ばしたカケルに近づいて斬りつけた。
「あっぶね!?やんじゃねぇか!」
「ッ!?」
寸前で刀を避けたカケルは刀を破壊するために拳で殴りつけた。
刀を殴られる直前に後ろに飛び衝撃を受け流した黒武者はそのまま壁を突き破りながら施設の外へと出された。
「くっ、何故またお前がここに!?」
「お前を助ける為だよ」
「・・・何の事だ?」
「こっちの話だよさぁて決着つけようぜ?」
「邪魔をするならお前も死ね!」
カケルと黒武者、両者の拳と刀が互いに交差しながら夜の空に響き渡った。




