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第22話 残党2

 長く沈黙を破ったのは一言にミサは少し驚いていた。と言うのも葵がここまでストレートに聞いてくるとは思っていなかったからだ。


 「ストレートに聞くわね?」

 「・・・カケル達が来るまでまだ時間あるから」

 「暇つぶしって訳ね?いいわ教えてあげる」


 一呼吸置いてミサは葵の方を向き、葵も顔をミサの方に向けた。


 「貴方の質問の答えなんだけど、私はカケルの事は何とも思ってないわ安心して」

 「・・・」

 「ね?むしろ私は貴方の応援をする為に黄昏荘に来たのよ?そもそもあいつの何処が良いのかよく分からないわ」

 「・・・じ、」

 「おーい!来たでぇ~」


 葵が口を開くと同時にカケルとダイが倉庫の扉を開き姿を現した。


 「チッ!良いところだったのに邪魔すんじゃないわよ!」

 「えぇ、、、来てやったのにそれは無いだろお前・・・」

 「まぁいいわ。とっととここから出しなさい」

 「おい、我儘が過ぎるぞコラ。てかお前ら何でプール入ってんだ?」

 「プールじゃ無いわよ!!水責めされてんのよ!」

 「シチュエーション最高だが、ミサと葵かよ。これがイリスちゃんだったらなぁ」

 「いいから助けろ!!!」

 「よっ」


 カケルが箱を破壊した事によってミサと葵は助けだされ四人は倉庫から出る為に入口まで行こうとした時だった、親衛隊から連絡が入りスマホを取り出した。


 『どうやら、箱から抜け出したようだな。しかし!お前達がそこから抜け出す事は不可能だ!』

 「この爆弾かしら?」

 『その通り!先程も言ったがそれは新たな人物が入ったらタイマーが作動し時間になれば爆発する。更に!その扉を少しでも開けた時にも時間関係なく爆発するのだ!!!』

 「初めからそれだけで良くね?」

 『細かい事は気にするな!さぁ!絶望の中に沈め!』


 そう言い残して物水は電話を切った。

 四人は顔を見合わせた。


 「どうするよ」

 「俺らなら扉開けて直ぐに逃げ切れるけど、せっかく設置してくれたしな」

 「そうねぇ、ここまでやってくれたのにそれは可哀想よね」


 三人がどうやって爆弾を爆発させた上で逃げるのかを模索している中、一人葵だけは三人が言っている意味が分からずにいた。


 「・・・逃げ切れるなら逃げた方が良くない?」

 「「「それはそうか」」」


 

 その直後、倉庫中の爆弾が一斉に爆破し倉庫は跡形もなく吹き飛んだ。

 倉庫が吹き飛ぶのを少し離れた位置に停めた黒いバンの中から眺めていた親衛隊達は現場へ向かった。


 「ハッハッハッ!馬鹿どもめ!爆弾の起動をこちらでも操作できると何故考えなかった!」


 燃え盛る炎を見ながら親衛隊隊長の物水は高笑いをしていた。

 しかしその笑い声は直ぐに止まった。


 「お前な、こんなことしたら警察が飛んでくるぞ?」

 「は、はえ?何故、お前達がそこに?」


 カケル達は爆発する瞬間に倉庫の屋根を破壊して上に登り火の手が来る前に裏に回っていた事から爆発から間逃れていた。


 「さぁてよくもやってくれたな」

 「く、こうなったら行け!豪陣!」

 「おう!オメェらのせいでオラは生きがい無くしたんだ!死ね!!」


 豪陣と呼ばれた男の手が突如、巨大化した。更にカケル達の足元がいつの間にか影の中に沈められており身動きができない状態になっていた。


 「これ、あん時の奴か!?」

 「親衛隊影裏拙者の力とくと見よ!」

 「カケル前」

 「ん?うぉっ!?ちょ、ちょっとタンマ、タンマ!!?」


 影裏のnoise"影抜き"に気を取られていた四人の上から豪陣の巨大化した手の平が容赦なく振り落とされた。


 「どうだ見たか?我ら親衛隊最強コンビの必殺技は!!」

 「ぐあぁぁぁ!!!」

 「な!?豪陣??!」

 「まぁまぁだな三十九点やるよ」


 物水が豪陣に目をやると攻撃した筈の豪陣が後ろに叫びながら倒れており、巨大化した手の平を振り落とされた筈の四人は無傷となっていた。


 「何がどうなって!?」

 「あったら便利反射だよ」

 「な、何だそれずるいだろ!影裏!」

 「無駄よ」

 「ぐっ、む、無念、、!」


 今度は影裏の方を見たが影裏は何かに押し潰された様に地面で横になっていた。


 「く、虹!」

 「僕じゃ無理だね」

 「ならこうなったら隊長である俺が!」

 「それも無理だぜ?」


 更に更にカケル達の方に顔を向けると自分と目と鼻の先にいつの間にかカケルが近づいており拳を握りしめていた。


 「え、あ、な!?」

 「終わりだな親衛隊!!!」

 「グボガァァァァ!!!」


 カケルの渾身の一撃を腹部に喰らった物水は三回転半しながら地面を転がりそのまま気絶した。


 「あんたらもまだ闘るか?」

 「こ、降参します、、、」


 その後、警察が来た事により脱走した親衛隊の四人は逮捕され捕縛された。


 「お手柄だな何でも屋」

 「黙れヤサグレ刑事」

 「まぁそうゆうな。私も今回のことは流石に申し訳ないと思っているよ」

 「たっく、ミサはともかく葵を危険な目に合わせたく無いんだよ」


 カケルと九条の姿を少し遠くから眺めていたミサと葵は九条を見ながら話をしていた。


 「あの人は誰なの?」

 「九条玲香、カケルがよくお世話になってる刑事さん」

 「あの人とも仲いいわね」

 「あの人は大丈夫。カケルと話してる時の感情の色がいつもと変わらない」

 「そういえば貴方のnoiseがそれなのかしら?感情を色で捉える事ができる」

 「うん」


 葵が持つnoise"色心眼(カラーヴィジョン)"はnoiseという力が発見されるよりも以前から世界中で確認されていた共感覚と呼ばれる力と酷似されており、かつてそれらとの関係を探る為に研究者達は葵を実験台として使っていた。

 

 「私の力はnoiseの秘密を暴ける重要な力、だから国の研究機関に昔はいた」

 「それをカケルが助けた、と」

 「・・・うん」

 「なるほどね、そこで惚れたのね」

 「惚れたというか、あの人基本的にだらしないからほっとけないというか、見てて面白いからつい一緒にいたいと思っちゃうというか、言うならば母性?」

 「母性ねぇ~」

 「後、あの人の感情はいつでも暖かいの一緒にいるとこっちまで笑顔になる様な、その心がきゅっと苦しくなったり、その・・・何て言ったらいいか」

 「葵ちゃん、それはッ、」


 それは恋よ、と言いかけたミサだったがどうやら葵はその感情に対して無自覚の様だったのでこれはこれで面白そうだと思いその言葉をグッと心に留めた。

 その時だった、警察に捕まっていた筈の物水が警察の一瞬の隙をついて奪った拳銃を手に持ってミサの前に現れた。


 「ミサミサァァァァァ!!!」

 「何よ」

 「全部!全部!お前のせいだ!お前のせいでスズミンがぁぁぁぁ」

 「ミサさん危ない!」

 「そこまでだ」


 銃弾を放とうとした物水だったが、すぐさま現れた九条によって直ぐに鎮圧された。


 「葵!ミサ!無事か?」

 「ええ、私たちは無事よ葵ちゃんもありがとうね」

 「・・・うん」

 「何で!何で!俺達のスズミンが捕まらないと行けないんだ!お前のせいだ!全部お前がいたからだ!お前がいたからスズミンはあんな事をしたんだ!俺たちのスズミンを返せ!」


 物水のミサへの逆恨みとも取れる発言に九条達一同は完全に呆れ返っていた。


 「はぁ、あんたなぁ・・・ファンなら現実を受け止めろよ」

 「黙れ!そうだ!スズミンはミサミサに騙されてたんだ!警察の皆さんも騙されているんだ!」

 「いい加減にしやがれ!!!」

 「ひっ!」


 カケルの突然の怒鳴り声に物水は萎縮して押し黙ってしまった。カケルはそのまま胸ぐらを掴み物水を怒鳴りつけた。


 「あんたファンなんだろ?ファンなら何で受け止めないんだよ?ファンならよ、推しがどんなミスを犯したとしても受け入れて応援してやれよ!じゃないとやり直しの一歩を踏み出せないだろうが!!!」

 「カケル、もういい落ち着け」

 「ふぅー、ふぅー、」


 熱くなっていたカケルを九条は宥めて下がらせ、物水はその後警察官によって連行されていった。

 夕方頃、海を眺めながらカケルは葵とミサが撃たれかけたことにカッとなってしまったことを思い出していた。


 「はぁ…恥ずかし、」

 「あんたよくあんなわかった様な口聞けたわね。推しの一人もいない癖に」

 「うるせーよ推しくらい俺だっているよ」

 

 カケルの意外な発言にミサは少し驚いた様子を見せていた。


 「へぇ誰よ?」

 「さぁな?・・・意外と近くにいるかもな?」

 「言うじゃない」

 「カケル、ミサさん帰ろ?」

 「何黄昏てんだカケル」

 「うるせぇよ」


 そう言って四人は黄昏荘に帰宅していった。

 

 ーー


 その日の夜、ミサは自分に与えられた部屋の天井を見ながら静かに呟いた。


 「葵ちゃん女って言うのはね嘘を本当の様に誤魔化せちゃうのよ?勿論、感情もね?」

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