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第105話 情報社会

 「こっち来てくれた来てくれた」「食べよ食べよ」「きゃはははは」「もぐもぐしなきゃ」

 「くッ!」


 フレミナはすぐに剣を抜き、人面鳥に向かって蛇腹剣を伸ばし、一匹の腹部を斬り裂いた。

 斬り裂かれた人面鳥のお腹からは血と共にドロドロと今まで食べてきたであろう人々の肉片も一緒にフレミナの足元に落ちてきた。


 「ッ!!」


 それに一瞬、目を奪われたフレミナを人面鳥達は見逃さなかった。

 二十メートルもある距離をゴムのように首を伸ばして、一斉に真っ直ぐフレミナに向かって伸ばした。

 本来のフレミナならば、この程度の攻撃は難なく交わして、そのまま倒すことができていた。


 (しまった!足場が悪すぎるッ!!)


 しかし、不意を突かれた事もありバランスを崩してしまったフレミナは武器を構える時間もなく、人面鳥達の餌食となるしかなかった。


 「ッ!こんな所で私は!!」


 私は終われない!フレミナは心の中で強くそう思っい剣を握り直した。

 しかし、そんな思いも虚しく既に人面鳥の一匹が、回避不能な領域にまで近づいていた。


 「ほっ!」


 死を覚悟した瞬間、フレミナはそんな間の抜けた声を耳にした。

 そして次の瞬間、気がつけば辺りにいた筈の人面鳥は、首をまるで刃物で斬られたかのように真っ二つにされ地面に転がっていた。


 「よぉ、大丈夫か?」


 その代わりに目の前に立っていた男は左手を人面鳥の血で濡らしたカケルだった。


 「あなた・・・いたのね」

 「あらら、そりゃ無いぜ!せっかく助けてあげたのによ。お礼の一つや二つあってもよくね?」


 頬をかきながらカケルは呆れたような声を出して笑っていた。


 「あら?お礼って何のことかしら?私一人でも十分だったのを貴方が勝手に手を出しただけじゃない」

 「うへ〜お前、凄い女だな・・・俺の知ってる奴にそういう所がそっくりだわ」

 「そんな事より、レイヴン達とはやっぱり離れてしまったようね」


 フレミナはカケルがいる方とは、反対側にある崖の方に足を進めて下を覗き込んだ。

 カケルもそれについていき同じく下を見た。


 「おお〜、やばいな。下が全然見えねぇ。何なら、天井の方が近いまであるぜ?」

 「通信魔法も駄目ね。何かに阻害されている感じがするわ。下まで降りるってのも現実的ではないわね」


 下から辛うじて見えた光景には、先程自身を襲った人面鳥の群れらしき影やうねうねと細長い何かの生物の影が写し出されていた。


 「下降りてる時に襲われたら、流石に対処も出来ずに食い殺されるわね」

 「あ?俺はいけ、」


 俺は行けるぞ?と言おうとしたカケルだったが、その言葉を言う前に口を塞いだ。

 もし、自分に能力がある事がバレたらとカケルは考え、それを言うのをやめたがフレミナは、既にカケルが普通の人間とは違う事を先程のことで確信していた。


 「貴方・・・バカでしょ」

 「失礼な奴だな・・・合ってるけど」

 「貴方が普通じゃないことくらい、とっくに知ってるわよ。そうじゃないとギンやクールに勝つ何て出来るわけないでしょ?」

 「た、確かに!!」


 心底驚いた表情を見せるカケルに対して、フレミナ深いため息を吐いた。

 フレミナはカケルを警戒していた。クールを倒した男が何故、頑なに力を見せようとしないのか、それには何か大きな秘密があると思っていたからだ。


 「本当に気が付いてなかったの?」

 「おん。全然、よく考えればそうだったな。俺がクールを倒したってのはもう広まってんだもんな」


 正確にはそれは違った。魔法の世界は情報が何よりも物を言う世界だ。

 誰よりもいち早く、相手の魔法や魔術の情報を得る事が勝利する何よりもの一手となる。特に実力が近い魔法使いや魔術師にとって相手の情報をどれだけ正確に手に入れれるかは勝敗に大きく関わる。

 だからこそ、学園では日夜多くの生徒が教師陣の持つ情報を得る為に策謀している。故にそれを怠る事のない、尚且つ実力のある生徒のみがカケルの情報を知っていた。


 「貴方が本当にあのクールを倒した男なの?」

 「だからそう言ってんじゃん。まぁ俺だけで戦ってたわけじゃないけど、ほぼ俺の活躍だったな!」


 その中でも、フレミナや 至高なる七柱(シェプティム)などの若い世代の魔法使いや魔術師の中でもクールは別格の情報収集能力を持っていた。

 魔法や魔術の扱いであっても他の追随を許す事のない才能と力を持っていたクールは、同時に魔法使いや魔術師が使う事のない科学技術も利用する柔軟な思考も持っていた事が理由なのだが、それはフレミナ達は知らない。


 「そう。なら、クールは世間が魔術王の息子というだけで過大評価していただけって事なのね。実際はそれ程、強くなかったのかしら?」

 「ん?あいつは強かったぜ?お前なんかよりもずっとな。それこそ、クールならさっきみたいな事にはならなかったんじゃねーか?」

 「なッ!!」


 カケルはそう言って、ニコリとフレミナに笑いかけた。遠回しに「お前よりもクールの方が優秀だ」そうフレミナはカケルに言われたのだ。

 

 「わ、私を侮辱するな!」

 「なら、知りもしない相手の事をごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ。それに事実を伝えてるんだよ。だって、まだそんなに目にしちゃいねーがあいつよりも凄いと思わされた奴にまだあってねーしな」

 「いいわ。なら、この場で私がどれだけ優秀な魔法使いなのかを証明してあげるわ!」


 蛇腹剣を抜いたフレミナはカケルの喉仏にそれを向けた。


 「今ここで私ともう一度勝負しなさい。今度は手加減抜きでね。そして証明してあげるわ!私が、フレミナ・イグベルクが如何に優秀であるかをね!!!」

 「ええ〜・・・めんどくさ」


 カケルは数秒前の自分を殴ってやりたいと思いながら拳を構えた。

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