第103話 だから言ったろ?
ーそして現在ー
人の鳴き声を出す怪鳥を目にしながらカケル達は地下に広がる世界に目を輝かせていた。
「おぉぉ!何かわくわくすんな!!」
「バッカ野郎!この程度でワクワクとか言ってんじゃねーよ!俺様みたいに冷静にだな」
「そんなこと言ってガーボス様だってさっきから目が輝いていますよ〜」「ガーボス様も楽しみなんですなぇ!」
地下に広がる広大な森や川、生物を見て浮き足立つカケル達を見てレイヴンとフレミナの二人は冷静に辺りを見渡していた。
「こんな場所が地下に広がってるとは・・・驚きだな」
「言ってた通りの所だったんだ・・・」
「・・・」
フレミナが小さく呟いた一言にレイヴンは憐れんだような目をフレミナに向けた。
「お二人さんはあっちとは随分と温度差が違うんだな〜」
「当然です。あんな子供みたいにはしゃぐ事は出来ません」
軽薄な笑みを浮かべながら、レイヴンとフレミナの二人の両肩に手を後ろから置いてきたハンヌの言葉にフレミナは、その手を払い除け前に進みながら言い返した。
「ハッ!ガキが言うねぇ〜」
「それよりも吸血鬼はどこにいるの?」
フレミナの言葉尻からはどこか焦っているような感じを覚えたカケルは事情を知っていそうなレイヴンの方に近づいて行った。
「なぁなぁレイヴン」
「何だ?」
「あいつ何であんなに焦ってんだ?」
フレミナの様子がおかしい事にカケルが気がついている事にレイヴンは少しだけ驚いたのか眉を上げた。
「驚いたな・・・意外と人を見ているんだな」
「あ?何だそれ。俺はこう見えて物凄く空気の読める男だって地元では有名だったんだぞ!?」
「本当かそれ??」
勿論、嘘である。カケルは今までそんなことを一言も言われたこともないし、思われたことすら欠片のほどもない。
ただし本人の知る限りでは、という話にはなる。
「友情に花咲してるところ悪いんだが、」
「ハンヌ!?いつの間に?」
「レイヴンが眉上げたあたりからいたな」
「そろそろ俺の方を向いてくれなきゃ困るぜ。死にたいなら話は別だけどな?」
「「はい。すみませんでした」」
カケル達はハンヌの元に集まり、これからやる事の説明を受けることになった。
「いいか?今回のターゲットは吸血鬼だ。お前達も知っての通り、吸血鬼は魔法使いにとって脅威となる厄介な存在だ」
「そんな事くらい分かっているわ。とっととどうするのかを話しなさい」
「あいあい、そこで俺の力を使って呼び出すんだよ」
「力?」
ハンヌはニヤリと笑って右手のひらを地面に向けて、前に出し呪文を唱え始めた。
「 静寂に舞うは・冥府の舟歌・忘却の淵より・屍よ我が声に答えよ。闇魔法"死葬者のバルカローレ"」
「闇魔法!?」
「お、なんか地面から出てきたぜ?」
ハンヌが魔法を唱えると地面が波のように揺れ、そこから薄い青色の腕が地面から生え、そこから顔色の悪い人が地面から起き上がってきた。
「ほい、これが俺の力って奴さ」
「マジかよ・・・闇魔法って」「やばいっすね」「俺、闇魔法始めてみましたよ」
「驚いたな・・・」
「お前ら何をそんな驚いてんだ?魔法見慣れてんじゃんかよ」
カケルの疑問の当然のことだった。魔法を知らないカケルが驚くのはあまり前だが、魔法が身近に存在しているレイヴン達の方がカケル以上に驚いていたのだ。
「闇魔法は他の魔法属性よりも希少なんだ。その中でも人を、死者を操る魔法は扱える者は更に希少なんだよ」
「あーなるほどな。だからお前らもそんな驚いてんのか」
「死者を操る魔法を扱えるなんて驚いたわね。でもそれでどうやって吸血鬼を呼び寄せるのかしら?」
フレミナもレイヴン達と同じように驚いた表情を見せてはいたが、不遜な態度を崩す事なくハンヌを見ていた。
「死者では魔素はないし魔力根もない。吸血鬼を呼び出すと言うのなら、」
「まぁ最後まで聞けって。これで終わりとは一言も言ってないぜぇ?」
フレミナの言葉を遮って、ハンヌは呼び出した死者の左肩に自身の左手をそっと置いた。
すると今度はその死者の周囲を風が渦巻き始め、同時に死者に見る見るうちに生気が宿り始めた。
「な、何だ何だ!?」「が、ガーボス様、あの死体の肌がッ!?」「い、色が肌色に??」
「いやそれだけじゃない。これは・・・魔力も宿り始めているだと??」
レイヴンとガーボス、取り巻き達が驚いている間にハンヌが呼び出した死者の姿は、先程の青白いものから血の通った肌色に変化した。
「貴方・・・これは一体・・・」
さしものフレミナもハンヌが行った異常な光景に冷や汗を流していた。
「ん〜?これが俺のもう一つの力、 復元って言ってな、人や物を一定の形まで戻す事が出来るんだよ」
「復元?そんな魔法聞いたこともないわ」
「まぁ学生であるお前達はまだまだって事だな」
「いやちょっと待て」
誰もがその一言に納得する中、カケルはハンヌの肩を掴んで振り向かせた。
そうカケルだけは今の芸当が魔法や魔術なんかではないと理解していた。だからこそ、カケルは思わずハンヌの肩を掴んだ。
「おい、これって・・・お前まさか」
「だから言ったろ?お前と俺は似てるってな」
ハンヌは掴まれていた肩からカケルの手を離して、カケルの耳元まで近づいていき、そっと小声で呟いた。
「俺もお前と同じように"noise"を持ってるのさ」




