第102話 下準備
ハンヌはハゲキャラやめました
「おっと、待たせて悪かったねハンヌ君」
「いえいえ、学園長の為ならいくらでも待てますよ。ただ、そろそろ足が痛くなって来ましてね。座ってもよろしいですか?」
現れた男は学園長の返答も聞かずにトコトコと歩いて行き椅子に深々と座った。
「誰だあんた?」
椅子に座り込んだ男の前に立ち、カケルは見下ろすようにして男の顔を見た。
「そう言うお前こそ誰だ?見たところ、ここの生徒とは思えないが?どちらかと言うとこちら側の人間のような気がするなぁ」
「こちら側だぁ?」
手をプラプラとさせながら軽い調子で答える男に対して、カケル以外の生徒達も皆一斉に怪しんでいた。
「ん??何でお前らも知らねぇの?」
「当然だ。彼は厳密にはこの学園の教師ではない。彼は地下世界探索の際、引率としてついて行ってもらう為に私が雇った冒険家さ」
「そう言うこった、よろしくな未来ある生徒諸君」
ニヤついた笑みを崩さずに男は懐からガムを取り出してくちゃくちゃと噛み始めた。
フレミナはそんな男に明らかな嫌悪の感情を露わにしていたがこれ以上、問答しても無駄だと感じたのかため息をついて目を閉じた。
「ふむ。皆もう質問は内容だな。ではハンヌ君、引率を頼んだぞ」
「あ〜い。じゃあ生徒諸君、俺からくれぐれも離れないようにな?さもないと死んじまうぜぇ〜ケッケッケッ」
カケル達は明らかに怪しい雰囲気を醸し出す男を警戒しながらもその男と共に学園長の部屋を後にした。
そして長い学園の廊下を歩いて古びた扉がある部屋にカケル達は連れてこられた。
「さぁて着いたぜ、若き未来ある生徒諸君?ここから先は、君達には想像も出来ない世界が広がってるぜぇ〜」
「そう言うのはいいのでとっとと扉を開けてください」
どうやらハンヌの軽いノリとはフレミナは相性が悪いらしく、それに加えレイヴンやカケルといった虫と組まされたことに彼女は機嫌を悪くしているようで、小声で何度もその事について愚痴を吐いていた。
「まぁ待ちなって。そんな学生服であそこは行く事は出来ないぜ?あそこは言うなら地球の力の源流とも言うべき場所だ。魔素だって濃いからな、そんな服装で行ったら体に害を及ぼすぜ?」
「じゃあどうすれば」
「そこでこれだ」
そういってハンヌは側にあったクローゼットから人数分の服を取り出して、カケル達に向かって放り投げた。
「これは特殊は魔法を編み込んで作られた対地下世界用の探検服でな。お前らはこれを着てきなサイズは自動調整してくれる。更衣室はこの部屋を出て右の通路を真っ直ぐ進んだとこにある。十分後にまたここに集合だ」
言われた通りカケル達は渡された服を持って部屋を出ていき、更衣室で着替える事にした。
そして十分後、カケル達はそれぞれが探検服に着替えて再び部屋に訪れた。
「中々似合ってんじゃん。いいねぇ、それじゃあ早速、今回のお前達に課せられた任務を発表していくとするか」
胸ポケットから取り出した封筒をひらひらさせながらハンヌはそれを破り、中から白い紙を取り出した。
「はっ!どんなもんが来てもこのガーボス様にかかればちょちょいのちょいよ!!」
「さっすがボス!」「よっ!天下一!」
「はぁいそこ黙ってろ。んじゃ、今回の任務は・・・おいおい、あのばあさん何のつもりだよ」
取り出した手紙を見たハンヌは先程までの軽薄なノリを潜めて冷汗をかいて驚いていた。
「どんな内容だったんですか?」
その驚きようを不思議に思ったレイヴンはハンヌの元に近づいて行き、その手紙を覗き込んだ。
「レイヴンどんな内容なんだ?」
「少し待て、今回の任務にあたり君達に調査して貰いたいのは吸血鬼の・・・行動とせ、生態調査だと!?」
「ッ!!」
吸血鬼、その言葉に誰よりも早くフレミナが反応した事にカケルとレイヴンの二人は見逃さなかった。
彼女はその言葉を聞いたと同時にハンヌとレイヴンに近づいて行き、その手紙を無言で奪い去った。
「・・・吸血鬼の行動と生態調査、そして・・・あわよくば討伐を行なってもらう」
「はぁ!?吸血鬼の討伐ぅ!!?んなもん無理に決まってんだろうが!!!」
フレミナは自身で任務内容を読んでその紙を強く握り、ガーボスはそんな任務内容を聞いて取り巻きと共に汗をダラダラとかきながら後ろに二、三歩引き下がった。
「吸血鬼ってあの女の血を吸うやつか?」
唯一、任務内容に対してそんな感想しか持たなかったカケルは、他の皆んなの大袈裟に驚く姿に対して首を傾げた。
「お前は吸血鬼の事を知らないのか?」
「あ?だから血吸う奴だろ?」
「やっぱお前は俺側の人間っぽいな。いいか?一般に言われてる吸血鬼は確かにそれだ。だけどな、今回言われてる吸血鬼は違う」
ハンヌは他の驚いている生徒に変わってカケルに吸血鬼の詳細な情報を話し始めた。
「あの紙に書かれている吸血鬼は他の奴とは違って、血じゃなくて魔力根を喰らう野郎なんだよ。魔法使いや魔術師にとってはそれは致命的な事でな、あいつらが驚いてんのも本来、吸血鬼の討伐は 至高なる七柱案件なんだよ」
「何で致命て、あー魔力根がなくなるって事は虫になるって事か」
「そう言う事だ」
「なるほどな・・・つまり、俺達は至高なんたらくらいには有能だって思われてるって事だな!」
笑いながらそう言ったカケルにその場にいた一同は目を丸くして驚いた。
そして最初にレイヴンがその言葉とカケルに対して微笑んだ。
「ふっ、そうだな。あの学園長の事だ、それくらいの意味合いがあるのかも知れないな」
「だろだろ?」
「はっ!何だよそんな事かよ!なら仕方ねーなぁ!このガーボス様の実力を嫌と言うほど教えてやるぜぇ!!」
「流石ガーボス様!」「かっこいい!」
「ぶっ!あははははっ!!」
カケルに続いてレイヴンとガーボスやその取り巻き達も次々と恐怖や戸惑いの感情を拭い、自信へと変えていく姿を見たハンヌは思わず腹を抱えて笑い込んだ。
「お前ら、面白いなぁ!久方ぶりに笑わせてもらったぜ。いいねぇ、その前向きプラス思考。気に入ったからしっかりと面倒見てやるよ」
「気に入らなくても引率者ならしっかりと役目は果たせ」
「おっと手厳しいねぇ。んじゃあぼちぼち、行くとするか。離れないように着いて来いよ〜」
ハンヌは古びた扉を開けて、そのままその中に入って行き、カケル達もそれに続いて進んでいった。
そして、その場にはフレミナ一人が残されていた。
「・・・必ず、私が助け出して見せる。だから、待ってて兄さん」
そう言って手紙を持った手に力を込めて、フレミナもカケル達に続くようにして扉の中へと足を運んでいった。




