第101話 地下に広がる世界
「ひぎゃぁぁぁ!」
人の悲鳴にも似た声で鳴く生物が辺りを飛び交う崖をカケル達は現在降っていた。
そしてそんな彼らの目の前には広大な森と薄暗くも虹色に輝き、霧を作る幻想的な地下世界が広がっていた。
「着いたぜぇ」
軽薄そうな見た目をした男によって目的地についたことを聞かされた、カケル、レイヴン、フレミナ、ガーボスとその取り巻き達は、そんな幻想的な世界に圧巻された。
「おお〜、ここが現代に広がるダンジョンって奴か・・・」
カケル達が何故、こんな場所にいるのか、それは数時間前に遡ることになる。
ーー
理事長室
「さて、では君達にはとある場所に潜ってもらうことになった」
集められたカケル達に向けて、理事長はニヤリと笑みを浮かべてそう答えた。
カケル以外は皆、その言葉に対して闘志を燃やすものや恐怖で顔を引き攣らせるものなど様々な反応を見せていた。
「・・・潜るってどこにだ?」
唯一、何も理解できなかったカケルはアルバに向かって首を傾げながら質問をした。
「日本から来た君に分かり易く言うならば霊脈と言った方が、イメージつきやすいかも知れないわね」
「れい、みゃく??」
余計に分からなくなったカケルはレイヴンの方を見た。レイヴンもその意味を理解したようで、アルバの方をチラッと見てから口を開いた。
「霊脈は、簡単に言えば魔力の元になってる魔素が生成される所の事だ。地球にとっては血管とも言うべき場所だ」
「地球版の血管と言うことかなるほどぉ。ん?でもよ、魔力ってお前達の何たら根で作り出してんじゃねーの??」
レイヴンから魔法を使える人は皆、魔力根という特殊な器官を持っていると聞かされていたカケルは、今の霊脈の説明に首を再び傾げた。
「それは"魔術"だ。魔術は己の魔力を行使して使用する術のことで、"魔法"は魔力根と霊脈から生成される魔素を行使して、世界を捻じ曲げる法則外の力の事を言うんだ」
「あーだからお前ら、魔法とか魔術とか偶に言ってんのか。一貫してないだけだと思ってたわ」
ここに来る前から魔法や魔術と言われていたカケルは、その二つが同一の物だと思っており、単純に言葉を一貫していないだけなのかと考えていた。
「レイヴン、君はよく勉強をしている」
「ありがとうございます・・・」
話を聞いていたアルバは、魔法や魔術を使えないレイヴンがその事を説明出来ることに感心していた。
それもそのはず、レイヴンら"虫"と呼ばれる者達は魔法や魔術の区別などの説明もされず、ただ淡々とそれを学ばされていたのである。
「まぁ、最近では魔法も魔術も区別しない輩も増えてきてはいるがね。この学園ではそう学ばせているよ。さて、その霊脈についての話に戻っても構わないかね?」
「あ、どぞどぞ」
アルバは指を鳴らし、カケル達の目の前にとある映像が複数映し出した。
薄暗い虹のようなものが空を覆い、そんな空を本来この地球で、存在する筈のない生物である龍が飛んでいた。大地にもゴブリンやオークと言った生物らしき姿が確認できた。
「何だこれ・・・龍にゴブリンにオークってまるで異世界じゃねーか・・・」
「それだけじゃないさ。この場所には、この地球で伝承や伝説として残されている生物達が数多く存在している」
「ここが本当に地下なのかよ?」
映像からではとてもじゃないが、カケルはここが地下に広がっている世界だとは思えなかった。
「何度もそう言っているでしょ?それよりもアルバ学園長、ここに私達で行くということについて疑問があります」
フレミナは一歩前に出て発言した。その声色からは明らかに不満の感情が込められており、その意図をアルバは理解したのか静かに目を閉じて聴く体制に入った。
「失礼ながら、あの岩男とその取り巻きはまだ百歩譲って、私と共に行くのは理解できます」
「なッ!?て、テメッ!百歩って何だコラ!」
話を聞いていたガーボスはフレミナの元まで歩いていき怒鳴りつけた。
当のフレミナはガーボスに対して、特に何も感じていないのかそのまま話を続けた。
「ですが、何故魔法も使えないあの二人も連れて行くのですか?足手纏いはごめんです」
「はっ!それについては同意見ですぜ!あいつらがいたらむしろ邪魔になる!まぁ、このガーボス様だけでも余裕なんだがな!」
先程まで、フレミナに対して怒鳴っていたガーボスは一瞬でその表情を変え、フレミナに迎合してカケルとレイヴンを非難した。
「すごい言われようだな俺達」
「あぁ・・・」
フレミナ達の言葉を軽く受け止めるカケルに対し、レイヴンはその言葉に拳を強く握りしめていた。
「とにかく!もう一度選考から考え直していただきませんか?あの場所は一つのミスが死に直結すると言われている程の場所なんですよ!」
「ふふっ」
フレミナの真剣な眼差しを受けたアルバは口元を手で隠して微笑んだ。
その姿にフレミナは更に怒りを露わにして学園長の机に両手を強く叩きつけた。
「何がおかしいんですか!?私は真剣に、」
「いやすまないすまない。まるで彼に言っているように聞こえてしまってね?つい笑ってしまったのだよ」
「ッ!!!」
その瞬間、フレミナはアルバ学園長を睨みつけた。アルバ学園長のその一言がフレミナにとって、どれほど屈辱的な言葉だったのか、言葉の意味を理解した者達にとっては直ぐに分かった。
「なぁなぁ、何の話だ?」
「何、身内の恥という奴だよ」
アルバは肩をすくめて、フレミナを挑発するように言葉を発した。フレミナはそれによって更に怒りが増したようで今にも飛び掛かりそうな様子だった。
「まぁ何にせよ、今回のメンバーを変える気はないよ。それに彼らだって役に立つさ」
「しかし、」
「おっと、そろそろいいかな学園長?」
アルバに食い下がろうとするフレミナが声を上げようとした瞬間だった。
部屋のドアの方から若い男性の声がして、皆が振り返るとそこには軽薄そうな見た目をした男がドアにもたれかかりながら腕を組んで立っていた。




