第99話 フレミナ
「な、なんであんたがここにいるんだ・・・」
「ここは私が通う学校でもあるんだけど?何か文句がある?」
先程まで威張り散らしていたガーボスは女が来ただけで萎縮し、びびり散らかしていた。
「なぁ、レイヴン。あのおっぱ、じゃなくて赤い髪の女、誰??」
「あいつは火の魔法を代々扱う、七大名家の一つ、イグベルク家の娘だ。名前はフレミナ・イグベルク」
赤い髪に瞳だ。なるほどありがちだが、分かりやすくて覚えやすいな。
「・・・て言うか、七大名家って何??」
「このイギリスで魔法が発展した火、水、風、岩、雷、闇、光その七つの属性を最初に見つけ発展させた家が七大名家と呼ばれ、この国の実権を握っているんだ」
「ほへ〜、だからあの世紀末はビビってんのか」
まぁ単純にあいつが小心者なだけかも知れないが、それならあの女の力強い目つきには勝てるわけがないわな。あの目は何かの覚悟を秘めた目だ。
「ど、どけよ!お、俺たちはあ、あ、あいつらに用があるんだよ!」
「虫相手にイキるあんたらを見てて気分が悪くなっただけよ」
「ぐっ、て、テメェ、調子乗んなよ!いくら七大名家だからって没落寸前のお前なんかに偉そうにされる筋合いはねぇんだよ!!」
その一言はフレミナの逆鱗に触れるには充分すぎる一言だった。
彼女の瞳は燃え盛る業火のように光り輝き、手に持っていたバックから黒赤い剣を取り出した。
「それはイグベルク家への侮辱と取って構わないわね?」
「はっ!な、何がイグベルク家だ!あの事件を起こしといて調子になんじゃねーよ!!! 岩猿!」
ガーボスは両手を高く上げ、その拳を地面に向かって思い切り叩きつけた。
するとその拳から全身に地面の岩がまるで鎧の様に張り付いていき、名の通り岩でできた猿のような姿となった。
「どうだ見たか!これが俺様の攻防一体の魔法よ!!!」
「・・・くだらない。その程度の魔法でイキらないでくれる?」
「もう許さねぇ!名家だとか知るかよ!」
「あ、兄貴!流石に辞めた方が!」「相手は没落寸前の名家だと言っても手を出すのはまずいですよ!」
「うるせぇ!知るかよ!!この俺様をバカにする奴ぁ、誰であってもゆるさねぇんだよ!!穿ちやがれ・弾丸!岩魔法ストーンバレット!」
ガーボスは右腕に張り付いた岩の鎧をフレミナに向かって無数に放った。銃弾を超える速度で放たれた岩石群はその場を一歩も動かないフレミナにモロニ直撃し、爆発を起こした。
「はっ・・・ははは!何だよ!七大名家とか大層な名前で呼ばれてるくせに弱いじゃねーか、」
「何を言っているのかしら?」
「よ・・・何ぃ!?」
ガーボスの目には確かに直撃した様に見えていた。だが、フレミナは傷一つついておらず、ガーボスの喉仏に剣を突きつけながら立っていた。
「早いな」
ガーボスの魔法で放った技は俺の投げる石程早くはなかったが、銃弾以上の速度は確かにあった。
だが、あの女はそれを持った剣で次々と斬り払い、あの男の目の前へと足を運んでいた。
「まだやる気?」
「ぐっ、お、お、覚えていやがれぇ〜〜〜!!!」
「「あ、ボスぅ〜!待ってくだせぇ〜!!!」」
捨て台詞を吐いてガーボスはそのまま学園へと走って逃げていってしまった。それに続いて取り巻きの二人も走りやっていった。
「フレミナ様、ありがとうございました」
「ギンに取り入ったって噂の男ね。確か名前は」
「レイヴン・アッシュです」
「そう。それでそっちの男は?」
フレミナはカケルの方を睨みつけるようにして見た。どうやらガーボス達と同じ部類の人物だと思われた様でその目からは若干の嫌悪が読み取れた。
「俺は何でも屋のカケル。今は海外出張中なんだわ。・・・無理矢理連れてこられてな」
「連れてこられた?・・・まさか貴方が噂の?」
「おーそうだと思うぜ?」
「・・・そう。貴方がクールに勝ったと言う男ね」
フレミナは次の瞬間、手にした刃に炎を纏わせ剣をカケルに向かって振るった。
「おわっ!?」
「フレミナ様!?いきなり何を!」
「あのクールを倒した男、貴方を倒せば私は、もう一度・・・」
「?」
彼女は一瞬、何か思い詰めたような顔を浮かべたが、その表情は直ぐに敵を倒す為の勇ましい顔つきに変わった。
振るわれた剣を服を斬り裂かれながらも避けたカケルはその表情に疑問を感じたが、聞いても無駄だと彼女の顔を見て、殴ってから聞き出せばいいと思い至り拳を握った。
「女だからって俺は容赦しないから、なッ!」
踏み込んだ衝撃で大地を抉りながらカケルはフレミナに向かって、音速を超える拳で殴りかかった。
しかしその直前、カケルはある事を思い出した。この国では魔法を使えない人は虫と揶揄される事。
その中でもnoiseを発現した人々がどうなるのかと言う事を。
「くそっ!」
自分一人だけならば最悪、海を泳いで逃げればいいとは思う。しかし、自分と共にいたレイヴンは別だ。もし、今ここでnoiseを使って逃げてしまったら、自分と今日ずっと共にいたレイヴンは何らかの罪に問われる可能性がある。いや確実だ。この国にはそもそも虫に人権はない。
「迷惑はかけられないよな・・・」
ここで力は使えない。カケルは諦め、拳を握る力を緩めた。フレミナはそれを見逃さず、カケルの懐に潜り込んだ。
そしてーー。
「はぁぁぁ!!!」
「がはッ!?」
フレミナは迫り来る拳を避け、そのまま剣をカケルの左の横腹から右肩にかけて剣で斬り上げ、回し蹴りを喰らわして吹き飛ばした。
「カケル!」
地面を背中が二、三回叩きつけながらカケルは倒れ込んだ。
「おい!大丈夫か!?」
「だ、だいじょ・・・うぶだ・・・いてて」
左手で傷口を押さえながら起き上がり、レイヴンに支えて貰いながら立ち上がった。
そんなカケルの姿を見てフレミナは剣をバックに仕舞い込み、カケルに近づいた。
「女だからと容赦しないんじゃなかったのかしら?何で拳を緩めたの」
「あ、あれだよ・・・その胸に、い、意識を持ってかれちまってな・・・」
「ッ!」
顔を真っ赤にしたフレミナは拳でカケルの顔面を殴りつけた。そしてカケルは鼻血を出しながら、空中に投げ飛ばされ、頭から地面に向かって叩きつけられ意識を失った。




