僕は化け物だから
僕は化け物だから、
彼女のことを好きになっても、しょうがないのだ。
彼女のことをどれほど好きでも、
他の誰よりも彼女のことを想っていても、報われることなどない。
それはわかっている。
僕は化け物だから。
彼女は誰にでも優しい。
誰とでも寝る。
誰でも好きになって、やがて捨てられて、僕にボヤくのだ。
いい男などいないと。
僕はそれを聞いて、いつも悲しくなってしまう。
僕が化け物でさえなければ。
せめて普通の顔をした人間だったら。
でも、しょうがない。
僕は化け物なのだから。
誰にでも優しい彼女だけが、僕を見て微笑んでくれる。
でも、その微笑みが僕だけのものになることはない。
どうしようもない。
僕が化け物だから。
彼女はいつも愛を求めている。
誰にでも恋をしてしまう彼女だけを愛する男を。
でも、僕がその男になれることはない。
僕は化け物だから。
やがて彼女は歳を取り、老いぼれて痩せて皺だらけになる。
それでも彼女は美しく、僕に優しくしてくれる。
だから僕は彼女から離れてしまうことができない。
彼女は一人で死ぬ。
誰も彼女の死を悼まない。
だから僕は彼女の死体を棲家に持ち帰る。
彼女のボサボサの白髪を食べ、
彼女の皺だらけの顔を食べ、
彼女の痩せ衰えた身体を食べる。
丁寧に丁寧に食べる。
僕は彼女の骨をペロペロと舐める。
頭蓋骨を、大腿骨を。
舐めながら、死ぬことを考える。
何だ、お前、まだ生きてたのか。
お前も可哀想なヤツだな。
彼女はニコッと笑って、僕に向かって、最期にそう言ったのだ。