慣れないことするって大変
楽しい旅行気分に水を差してくれやがった海賊機をぶっ潰して多少の溜飲が下がった俺はアヴァロンに帰還した後モレッドに質問攻めにあいました、なんでも「なんで私にもやらせてくれなかったのさ!!」とのこと。
俺自身相当頭に来ていたし、大した腕を持っていたわけでもなかったのでわざわざモレッドに手を貸してもらう必要はなかったんだと説明しなんとか納得してもらった。
プンプンしているモレッドはとてもプリチーですなぁ…
『あなた、ジュワユース管理局から連絡が入りました。降下ルートとタイミングについてはあちらからの指示に従う必要があるそうです。』
「それは全然かまわないぞ、ってことはもう着いたのか?」
『いえ、亜光速航行で3時間ほどです。シャルマーニ星系に到着した際に管理局から自動で情報が送信されてきました。』
「なかなかハイテクだな、了解だ。時間通りに着けるようにしてくれ。」
モレッドをなだめた後にそんな会話をしてリゾートに思いをはせることにした。
ディンギルではリゾートって言うよりはどちらかと言うと、日帰りの海水浴ってイメージだったからな。より楽しみだ、デジタルパンフレットを覗いてみてもかなり楽しそうで仕方がなかった。
島一つを丸ごと貸切にできるから余計な侵入者に気を使う必要もないし、必要なものは全て備え付けてあるし、もし必要なものがあった場合はその日のうちに配達できるシステムが導入されているらしいからいちいち待つ必要もない。
こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか!!と思ったものだ。
と言うことで、到着まで少しのんびりしておこうかな…
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『ジュワユースの降下指定ポイントに到達しました、指定時間まで残り3分降下体勢準備。』
「いやぁ、綺麗な星だなぁ。ディンギルも綺麗には見えたがリゾートとして整備された星に比べてしまえばまだまだだってことがよくわかるわ。」
「ん~海がより綺麗に見える気がする!!」
「そうだなぁ、戦闘とかも起きないから余計な不純物とかも混じってないんだろうな。」
『ジュワユースの海水は比較的塩分濃度が低めだそうです、それでも十分に塩辛いとは感じられる濃度ではある様ですが。固有の動植物として「オウキュウノツカイ」という生物が存在するそうです、めったに見られるものではないそうですがそれを見るためのツアーもあるそうですよ。』
「なるほどなぁ、そういうのもあるからリゾート星系として栄えたんかねぇ。」
『そうなのかもしれません、降下指定時間になりました。降下開始します。』
ブリッジでモルガンとモレッドとの会話をしながらジュワユースの話をしながら降下は開始した。さすがに二回目なのでモレッドも落ち着いているし慌てたりはしていない、代わりに今回初めての惑星降下になるエルピダがそわそわしているな。
「なにこえ!?」って声をあげたら手足をバタバタして若干パニック気味だった、傍にいたキスハが鳴きながらエルピダをなだめているから問題は無いだろうけど。
「私も前回のディンギルに降下した時はあんな感じだったなぁ…」
「むしろエルピダのほうが大人しいまであるな。」
「お父さん!!それは言わないで!!」
そんな会話をしながら無事に惑星降下は成功した、たまーに降下角度をミスって本当の流れ星になるおまぬけもいるらしいけどモルガンに任せれば何も問題は無い。むしろこれで問題が起きたらおしまいだ。
モルガンに深刻な問題が起きたと同じ意味だからな、そうならないようにモルガンは定期的にセルフチェックをかかさないし俺にもその結果を報告してくれているわけだからな。
『降下完了しました、海抜高度は10000m外気圧275hPa着陸地点まではおよそ30分です。降下時安全帯の解除を許可、お疲れ様でした。』
モルガンのOKを確認し椅子から立ち上がってエルピダを助ける、ちょっとぐったりしているのは相当興奮していたからに違いないだろう。ベルトを外してちょっと抱き上げると「ふふぇえ…」と声を漏らしているあたりかなり怖かったのだろうか?
モレッドがキスハのベルトを外してあげて「うなぁ!!」と飛び掛かられたりしているがあれはじゃれ付きなので特に注意したりはしない。
今回5姉妹たちはブリッジには来なかった、各自の担当エリアで突入態勢に入っていたらしい。
理由は特に気にしなくていいとのことだったので気にしないことにした、実際こういったことに関しては下手に首を突っ込むより任せきってしまったほうがいいということはよくわかっているからな。
「ほれ、エルピダ見えるか?あれが海だぞ、これからしばらくの間はみんなで遊ぼうな!!」
「きゅうぅぅ…あしょぶぅ…」
あらら…まだ無理だったか、まぁ少し休ませてあげれば回復もするだろう。
「モルガン、一度エルピダを休ませてくる。そのままついているつもりだから到着して着陸まですべて任せる。オーナーを出せって言われたら呼んでくれ。」
『承知しました、エルピダ?しっかり休みなさい。』
「ふぁぁい…きゅう…」
「私も行くー!!」
「うなー!!」
おや、モレッドとキスハもついてくるか。末っ子が心配という事だろうか、まぁいい事だな。
ブリッジから医務室に向かって歩いている最中、モレッドとキスハは俺の腕に抱かれたエルピダにしきりに話しかけていた。「エルピダ大丈夫?」とか「うなー?(怖かった?)」とか、エルピダも多少は返答していたけどぐったりしきっていたのでおれが「ちょっと休ませてやろうな二人とも。」と言ってエルピダに余計な負荷を与えないようにお願いした。
エルピダ自身まだ生後そんなに経っていないはずだ、引き取った時点で多分生後1月経っていないはずだからな。キスハと違うのはエルピダが昆虫類と同じように変態するという事だ、だから体の構造が劇的に変化してその変化に体がついていかない事に加えて今回の惑星降下のインパクトがこの状態を引き起こしたのだろう。
医務室にはまだグィネヴィアは来ていなかったが、寝かせておけば大丈夫だろうという事でベッドに横にさせる。枕側に椅子を立ててそこに腰かけて優しくエルピダの頭をなでる、そうするとエルピダは少しだけ微笑んで「ふへへ…」と笑った。撫でる手を止めようとすると「やぁだぁ…」と言うのでその手を止めることはしなかった。なんともかわいいものだ、反対側から見ているモレッドとキスハもなんだか撫でてほしそうな目で俺を見るので「こっちにおいで。」と小さく言うとぱあぁっと顔を喜びに満ちさせて駆け寄ってくるので、片手はエルピダにもう片手はモレッドとキスハの頭をなで続けることになった。
ちなみに、その撫で続ける事が終わったのはモルガンが到着したことを知らせてから10分ほど経ってからだった。なんでそんなに撫で続けたのかと言うと、エルピダが撫でるのをやめさせてくれなかったことに加えてエルピダをなでるなら私たちも撫でてくれないと嫌だ!!と言わんばかりにモレッドとキスハに詰め寄られたからである。
おかげで俺の両手の筋肉は悲鳴を上げてしまい、その後にやってきたグィネヴィアに湿布を処方してもらうことになってしまった。
そして、モレッド以下2人は『お父さまに撫でてもらうのがいくら嬉しいからと言ってして貰い過ぎてもお父さまが疲れてしまいますよ?』と少しだけお小言をもらってしまっていた。
シュン…となった3人がとても可愛かったです!!
モレ「うぅ…ごめんなさい(´-ω-`)」
キス「ふなぁ…(怒られた…)(>_<)」
エル「ごめちゃい…(;_;)」