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罪なき幼子に祝福を、罪ある国には制裁を

 地上に帰還した俺とモレッドは即座にアヴァロンの位置を確認し帰還した、その際司令部にも「心臓部の破壊に成功、内部崩壊までおそらく21時間程と思われます。」と連絡は入れておいた。

 どうやら俺とモレッド以外の突入組は既に敗走していて誰も内部には残っていなかったらしい、入って早々に大規模な防衛軍がいてそれにボロボロにされるか補給が出来ずに活動限界になるかの二択だったらしいがな。


 とりあえずエルピダと最深部での出来事は伏せた、向こうも「心臓部で何か見つけたりしたか?」とは聞いてきたが「繁殖炉らしきもの以外は特に見つかりませんでしたね。」と答えたので「そうか、ご苦労だった。」の一言だったのだ。


 そして、大体30時間ぶりのアヴァロンに帰って来たのである。カタパルトに着艦したらそこからはオートで格納庫まで戻されるのだがその途中でヴィヴィアンが目ざとくパーシヴァルの肩部シールドが変わっていることに気が付いて「オトウサン…?」とめちゃくちゃ怖かった。


 しっかりと交換した際の状況は説明し、あのままにしていても状況が悪くなることは間違いなかった旨を説明すれば納得してくれたのである。

 ちなみにラムレイは帰還後すぐにアヴァロンの後部格納庫に自動で格納されていったぞ、いやぁ優秀で助かったぜホント。


 パッケージを外し素体状態になったギャラハッドがロックされたことを確認して俺はエルピダと一緒にコックピットから降りる、ギャラハッドの横に固定されたヴァレットからはモレッドがピョインと飛び出してきた。すると、ロッカールームのある方のエアロックが開きキスハが飛び出してきた。


「うなぁ~!!」


 俺とモレッドを見つけてうれしそうな顔と声をあげて駆けよってくる、それを見たモレッドも嬉しそうに両手を広げてキスハをその体で受け止めた。


「ただいま!!キスハ!!」

「んなっ!!」


 既に体格だけで言えばシベリアンハスキー並みのキスハである、結構良い勢いでモレッドに突っ込んだと思ったのだが猫特有の柔軟性と言うか、しゅるんとモレッドに巻き付くようにして止まったのである。


 うむうむ、大型犬並みの猫とじゃれ合う娘。大変良きかな…


「うなっ!!」

「きゅぅ…」


 ひとしきりモレッドにじゃれ付いたキスハはその体勢のまま器用に顔だけをこっちに向けてエルピダに「こんにちは!!私キスハ!!」と言っているかのようにうれしそうな顔で声を発した。対するエルピダは「うぅ…は、初めましてぇ…」というかのように俺の背中に回ってしまったのだった。でもちゃんと俺の右肩から顔だけは出しているから完全にビビっているわけではないみたいだな、ちょっとびっくりしたみたいだ。


「ただいまキスハ、大人しくしてたか?」

「んなぁう!!」

「はははっ、そうだよな!!」


「パピーと違って私良い子だもん!!」とでもいうかのような声に俺も思わず同意してしまう、多分それは事実なんだろうなと思うしな。そうでなきゃキスハ1人でアヴァロン艦内を自由に動き回れるわけがないからな、一見アヴァロン艦内は入ってしまえばあとは好き勝手自由に動けるイメージがあるかと思うがそれは違う。艦内のいたるところに個人個人のアクセス権限を認識する装置があり、権限がないものはそこを通ることが出来ないのだ。

 そして、この通行許可権限を持っているのはモルガンである。つまりキスハがここまで行動できるのはモルガンがキスハが行動を許可していることに他ならないという事である。まぁキスハがいたずらをするような子ではない事は皆が知っていることなので当然だとも思うがな。


「エルピダ、この子がお前のお姉ちゃんのキスハだ。ちゃんと挨拶しておけよ?優しいお姉ちゃんだから安心しな。」

「きゅぅい…」


 ま、警戒してるって言うかビビっても仕方ないよな。見たことも無い場所で、見たことも無い生物を目撃してるんだからな。エルピダはまだまだ幼子だしこうなっても仕方ない。


「じゃあモレッド、ブリッジに行ってモルガンとデブリーフィングするぞ~。キスハもついてくるか?」

「はーい、キスハ行こ!!」

「んなっ!!」


 モレッドの横に立ち、キスハは嬉しそうに足並みをそろえて歩いていく。それを後ろから眺めている俺は「フッ」と笑ってしまうのだった。それをすぐ横で見ていたエルピダが「きぃ?」と言うので「まだわからないかもしれないけどなエルピダ、ウチは人間だとか人間じゃないとかそんなのは関係ないんだ。ここにいる一人一人が皆家族なんだよ。」とモレッドとキスハの二人を見ながら伝えたのだった。


 エルピダは何も言わず、歩いている二人を見つめていた。

 それを横目で見た俺は「これなら大丈夫だな。」と心の中で思いながらブリッジへと向かったのだった。


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『なるほど、確かに私の記憶でも皇鋼蜘蛛の絶滅とその歴史と言うのは残っています。』

「と言うことはだ、お前が最初に座標位置を間違えていたこともここでつながってこないか?」

『はい、つまりここは…いえ、時代が違います。』

「だからAMRSの世代もかなりの旧式だったわけだ、いや。この時代で言えば最新鋭なんだがな。」

『了解いたしました、では今後はそのように対処いたします。』

「頼む、それとこっちが本題だ。」

『もちろんです、エルピダのことですね?』

「そうだ。」


 ブリッジに戻って、モルガンとのデブリーフィングを開始し当初この世界に来た時の齟齬の原因が発覚し今後のみの隠し方の模索を開始した。


 しかしそれよりも大事なことがある、エルピダのことだ。この世界ではまだ皇鋼蜘蛛の絶滅は確定していない。いや、ほぼ絶滅するだろう。何せあそこにいた皇鋼蜘蛛の大人たちは全員がこの後死ぬ運命にある。それは確定した…いや、してしまったのだから。


 だが、代わりに彼らは希望を残した。エルピダというたった一粒だけ残った純粋無垢な赤子を。ゲーム内の正史であればもしかするとエルピダは俺たちのようなものにすら発見されず実験台として酷使されたのちに死んでしまったのだろう。


 それを俺たちは変えることが出来た、これは大きな違いだと思う。絶滅と絶滅危機では大きく違う、0と1の違いと同じだ。


「だからモルガン…俺は…」

『あなた、言われなくともわかっております。モレッドも同じことを考えているようですからね。』

「うん、流石お母さんだね。私はエルピダのお母さんに託された、エルピダの未来を。でもエルピダに復讐してほしいとは言わなかった。だけどさ、エルピダはきっとお母さんを手にかけた奴らのことなんて許せない。そうしたらエルピダのお母さんが言ってた獣にエルピダもなっちゃう。そんなのは嫌だから…」

「よく言ってくれたなモレッド、そうだ。俺たちはエルピダを託された、エルピダにお前は母たちに愛されていると伝えなきゃならない。だから汚い事は俺たち大人がやらなくちゃならない。」

『そうですね、では早速準備に入ると致しましょう。モレッド、本当に今回の作戦お疲れ様でした。後のことは母と父に任せなさい。あなたにはまだ、この世界の汚れを落とすところを見せるわけにはいきませんから。』

「すまんなモレッド、こればっかりはお前にもまだやらせるわけにはいかない。お前なら必ず私も手伝うって言うだろうけど、これはまだお前にさせるわけにはいかない事だからな。」

「まぁ、そう言われることはわかってたよ。お父さんもお母さんも私とかお姉ちゃんたちに過保護だからねっ!!」

「『よくお分かりで。』」


 理解の早い娘で助かるよ、モレッドは何も言わず笑顔でその答えを出してくれた。ならばその期待に報いなければなるまいよ。


「それじゃあモレッド、作戦は終了だ。デブリーフィングもこれで終了とする、契約期間もほぼ終わりだしこれ以上なにか要求されることも無いだろう。後はのんびり過ごしていいぞ、お疲れ様。」

「はーい!!じゃあ早速キスハと遊んできます!!いこっキスハ、エルピダはどうしたい?」

「うーなー?」

「きゅうぃ…」


 もぞもぞと「私も行っていいの?」と言いたげにしているので、俺も微笑んでエルピダを抱っこして「行ってくると良い、きっと楽しいぞ。」と一言伝えてモレッドに渡した。モレッドもニコッと笑って「じゃあ行こっか!!まずはグィネヴィアお姉ちゃんのところに行っておやつ食べよ~!!」「うな~!!」と駆け出していった。あれならエルピダも気負う事なく仲良くしていけるだろう。


 ブリッジから駆け出した3人を見送った後、俺とモルガンは優しげな顔から一気に冷め切った顔に戻る。ここからは報復戦だからな、エルピダの家族をエルピダの未来を奪った国との闘いなのだ。まぁいくらアヴァロンとギャラハッドと言えど1国家と全面戦争すれば余裕ではない、勝てない事は無いけどな。


 と言うことで、どうやって報復するのかと言うことになる。


「ま、答えは単純だよな。」

『はい、一番簡単で確実な方法で行きましょう。」

「『傭兵組合にリークする。』」

「これしかないわな。」

『その通りですね、幸いデルティニウスコロニーの傭兵組合に軍部の監視網は張られていないようです。この戦役も長く続いているそうですから、もはやこの情報が洩れるとも思っていないのでしょうね。』

「そいつは重畳、ならササっと始める準備は済ませておきますか。マーゾエ。」

『はいご主人様、エルピダを保護した瞬間からその母との会話、脱出時の皇鋼蜘蛛一族からの見送りに至るまですべて記録済みでございます。お姉さま、データは送信いたしましたので確認を、それと襲撃してきた傭兵部隊のデータボックスの解析も終了しております、やはり黒でしたが。』

『これも含めて提出さえしてしまえば、傭兵組合から各国へと情報が伝達してこの国の悪事も曝されることでしょう。よくやりましたマーゾエ。』

『恐悦至極にございます、お姉さま。』

「それじゃ、とりあえず契約期間満了までは息をひそめる。それが終わったらさっそく行動開始だ、もしかしたらまた妨害とかがあるかもしれんがそん時はそん時だ。よろしく頼む。」

『『はい(Yes)あなた(my ord)』』


モレ「エルピダっこれからよろしくね!!(*'▽')」


キス「うなぁ~(よろしくね!!)(*'ω'*)」


エル「きゅうぃ…(うぅ…きんちょうしゅりゅぅ…)(>_<)」

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