だからってこれは無いだろぉ…
ちょっかいをかけて来た傭兵部隊は殲滅した、大体道のりも半分以上は進んでるわけだしうまくいけば今日中に作戦自体は終了できるかねぇ?
まぁ終わった後に脱出しなきゃいけないってこと+もしかしたらの友軍機による妨害も視野に入れたうえで行動しなきゃいけないんだがな。
「モレッド、目は覚めたか?」
「うん…最悪の目覚めだったけどね。」
「それは…申し訳ねぇ…」
「こればっかりはお父さんの謎パワーだよね~、何でピンポイントにこのタイミングでかかってくるのさ?」
「わからんっ!!ゆるせ!!」
「はぁ…いいよ、なれたしね。」
『ご主人様、なにか特殊な力でも持っていらっしゃいますか?〇スの暗〇卿的な。』
「ないんだけどね!?」
否定はしたけど完全に無いとはいいがたいような気もしてしまうのが辛いところである、なぜ俺が出撃すると問題がここまで噴き出してくるのだろうか…コレガワカラナイ!!
とりあえず心臓部に向けての侵攻は進んでいる、時折敵生命体の防衛に遭遇したりもするが微々たるものだ。実際ものの数分程度で撃退は終了したし、もはや足止め程度でしかない感じがプンプンするのだ。
まるで何かの準備をするために、すこしでも時間を用意したいと言いたいように。
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『ご主人様、間もなく心臓部直結の主縦穴に到着いたします。』
「ナビゲート助かったマーゾエ、ありがとな。」
『恐悦至極にございます。』
「むぅ、マーゾエ叔母さんは私の!!お父さんひどい!!」
『と、モレッドが申しておりますので今後のご利用はお控えください。』
「お、おう…」
主縦穴は直径200mはあろうかという大きな穴で現在地点から最深部である心臓部までは約1200m、心臓部に到達する為に主縦穴にたどり着くまでが1800mである。ちなみにこの主縦穴高さだけで言えば2800mあるらしい。
なんで一番浅いところから主縦穴に入らないのさ?って疑問にお答えしましょう。そもそも一番浅いというかこの地点より上に横道が存在しないのさ!!なんで存在しないのかは知らん、だがないものはないので仕方ないと腹をくくっていた。
「んじゃ、降りていきますかぁ。なうべく刺激しないようにゆっくりとな。」
「りょーかいっ。」
ギャラハッドとヴァレットがゆっくりと横穴から飛び立ち、互いを背にした状態になってゆっくりと降下していく。
まるでヘリコプターから行うラぺリング降下のように。
「到着までは大体10分だな。」
「なんでまたそんなゆっくりと?」
「一応だよ、モレッドも思わなかったか?最初の戦闘以降妙に敵から防衛を仕掛けてこないって。」
「まぁ、それは確かに?」
「んで、おれは一瞬ではあったけども思っちまったんだよ。」
「何を~?」
「いや、な?もしこの戦争のきっかけが向こうじゃなくて人間側だったらどうしたもんかねぇってな。」
「それってつまり?」
「本来そう言ったもので戦火が広がったなら傭兵組合はそこに傭兵を派遣しない、それはその国が勝手にやって自爆した事だからな。だから傭兵組合も無駄なことに所属傭兵を派遣はしないってことだ。だが、なんかきな臭いんだよ。そもそもこの星、もとはこんな生物居なかったらしいんだよな。」
「ん?じゃあ敵はこの星以外から来たってことにならない?」
「そうだろ?でもこの星の管理記録には小惑星衝突は記録されていない。少なくともここ数十年はな、ってことはこの敵ってのは在来種ってことになる。でもこいつらが発生しだしたのはここ数年の話みたいなんだ。」
「ふむふむ、でお父さんはどんな推理をしたの?」
「まぁ、しょうもない話なんだけどよぉ?元居た在来種、本来ならこっちと意思疎通ができていた種に対してお国の馬鹿がケンカ吹っ掛けて開戦したんじゃねぇかなってさ。」
「ん~、そうしたらこの傭兵組合の仕事って?」
「本来は受理されない、というかそもそも依頼できないものになる。だから軍のほうでもあれこれ考えて傭兵組合に依頼できる形にごまかしたんじゃねぇかなってね?」
「なんかその話聞いてたらそんな気がするね、たしかに。」
「だろ?」
そんな話をしながら俺とモレッドは降下を続ける…
と言うかさっきからなんだろう、妙に監視されているというか見張られているような気がしてならない。だが、それにしては不快な感じではない。これはモレッドも感じているようで、通信用に開いているテレビ電話みたいなモニターに表示される顔が訴えている。
俺もそれに頷きモレッドも同じだと確信する、つまりいつの間にか俺とモレッドは監視されていたという事だ。だがいつからだ?常にセンサー反応はチェックしていたし光学カメラでも異常と言うか動体物すら検知できていなかったというのに。
…少したってから最下層の床が見えた「ガシュンッ」と2機が着地して周辺をサーチライトで照らす、しかし周辺には何もない心臓部と思わしきものも何もないのだ。
「…やられた、か?」
「…ううん、お父さん違うみたい。聞き耳立ててるよ。」
「通信傍受ってことか?」
「ううん、それよりももっと原始的。そのままの意味。」
「まじで?」
多分モレッドも直接その聞き耳を立てている存在を認識したわけではないんだろうが、空間認知能力で何かが引っ掛かったのであろう。
ちなみに俺はそんなことできない、そもそもヒトの空間認識と言うのはそれぞれ異なっている。同じ色を見ていても男と女、幼児と老人など条件が違えば全く違う色に見えてしまうのだからな。
おそらくモレッドの空間認識は蝙蝠やクジラなどのようなタイプなんだろう、反響定位と呼ばれるそれは超音波などを発し物に当たって反射してきたそれを聞き取ってそこにある物の場所や距離を測るらしい。モレッドは音波ではなく脳波のようなものを発してそれが返ってきたのを感知して周辺を認識するタイプ…らしい。
で、センサーや光学カメラには映らない何かを感じ取ったってわけだ。こういう時であればモレッドの空間認識は非常に助かる。
「こりゃあ一回自分から行きますかねぇ。」
『非推奨ですご主人様その行動は勧めることはできません。』
「ん~?」
「一回ギャラハッドから降りてみるわ。」
「ん、りょーかい。私は?」
『モレッド!?良いのですか!!ここは危険地帯ですよ!!」
「だってここまで来て何もしてこないんだよ?何か打開策があるのか、それともただただ私たちを警戒してるのか、見定めてるのかのどれかでしょ?」
「ってことだ、すまんなマーゾエ。もしダメだったら頼むな。」
『…仰せのままに。』
「私は大丈夫だと思うよ、戦線に居たときの人みたいに嫌な感じじゃないもん。」
「よし!!じゃあ行ってみるわ。」
「いってらっしゃーい。」
そんな会話を済ませて俺はギャラハッドから降りた、さて…鬼が出るか蛇が出るか…どっちなんだい!!地面に降り立ち少し周りを見て回ると、カメラに映っていなかった変なものがあった。それは白い糸でできた繭の様で、わずかに発光しているようにも見えた。
ほんの少しの好奇心から少しだけその繭に触れてみる、すると繭はハラハラとほどけ中に保護していたものをさらけ出す。
出て来たものは…
「……キィ……?」
「……バカナッッッッ!!」
俺は崩れ落ちた、そして激怒した。かの邪知暴虐の軍部を滅ぼさねばならんと憤怒したのだ。
顔がまるで般若の面になり、そこにいた子どもが「ぴゃっ!!」と思わず逃げるくらいには。
俺はあの子どもの種族を知っている、いや。知っていたと言ったほうが正しい。
何故言い換えたのか、それはそもそも見たことはなかったからである。
あの子どもは《絶滅種》皇鋼蜘蛛の幼体だったのだ。
「モレッド、降りてきていい。モニターで確認できただろ?」
「今行きまーす!!わぁぁ!!待っててね!!」
インカムでモレッドを呼び、一度今後どうするかを再確認しなければならなくなった。
そもそも、なぜセンサーや光学カメラに映らなかったのか。これは皇鋼蜘蛛の作りだす糸にある、この糸はこの次元に存在しない物らしい。つまり、肉眼で見えているように見えている物は物ではなくナニカとしか言えないモノらしい。
そして何故見たことがなかったのか、これはゲーム内でこの種族はすでに絶滅していたから。
何故絶滅したのか、それはこの糸である。レーダーにも光学カメラにも映らない、こんなものが軍事利用出来てみろ?最強じゃね?ってなったどこぞのあほな国家がすべての個体を強制収集して無理やり糸を吐かせ続けたらしい、結果的にこの試みは成功せずその国も滅ぼされたわけだが結果として一つの種族もほろんだという事だ。しかも何が悪いってこの皇鋼蜘蛛意思疎通ができる種族だったのである。
滅んだ理由も「意思疎通が可能な種を人間種の、ましてや一国家が滅ぼしていいわけがない。ゆえにその国家は解体。」となったわけである。
もちろんその国家は抵抗したわけだが、抵抗の仕方もよくなかった。国家解体の調印式を行うために来た使者をそのまま宇宙のチリにしてしまったのだ。
一方的な宣戦布告とみなされ全宇宙中の国家に集中攻撃され首星ごと消えたのでしたとさ、と言うのがゲーム内のステルス機作成時の歴史?に載っていたのだ。
つまりルガートゥリスコ星系を管理する国と言うのは歴史上この後消える、それは間違いない事だ。
「きっかけを作ることになるのは俺か…」
「きゃー!!この子可愛い!!ねね!!お父さんこの子うちに連れて行こう?」
モレッドは皇鋼蜘蛛の幼体(見た目ハエトリグモでも大きさはチワワくらい)を抱っこしながらそんなことを俺に要求する。皇鋼蜘蛛もなんだか懐いた子犬みたいにもぞもぞしてるし。
もちろん俺としてもそれは大いに賛成だ、しかし一つ問題もある。なぜここに1個体だけ残っているのか?である。
「わかった、その子はアヴァロンに連れて帰ろう。だがモレッド、一つだけ約束だ。」
「ん?なーに?」
「その子はキスハと同じかそれ以上に難しい子だ、意味は分かるか?」
「!!そういう事?」
「よくわかったな、じゃあ仕事は終わり…と言いたいが心臓部が無いんだよなぁ…どうやって止めるんだこれ…」
少しの間、俺はどうやって敵(多分皇鋼蜘蛛の守備隊)を止めるのか悩むのだった。
ヴィ「うっわぁ…(;´・ω・)」
グィ「お父さまって…(´・ω・)」
モゴ「よくこんなにトラブルの種拾うね( ̄д ̄)」
オヴ「きな臭かったのはこれかぁ(*‘∀‘)」
マー「オヴェロンなんでわかったの?(; ・`д・´)」