授業参観か?
どうも、妻を含めた家内の女性全員からいないモノ扱いされているソラカケルです。
正直とても辛い…自分の行動が起こした結果とは言え、これは流石にひどすぎるではないか。俺はただモレッドの仇を取りたかっただけなのに…
「死んでないけどね、どこかの一カ月も帰ってこないわ、久しぶりに会った娘に対しての第一声がぶっ○すぞとか言ってた誰かさんのおかげでね。」
「うおぉ!?モレッド、いつの間に!!」
「ドーモカケルサン、どう?皆カケルサンがいない間にこんな感じになっちゃったよ。どうするの?正直言って、私は頑張ってお父さん(笑)を連れ帰ろうとしてたけどあんな風に扱われちゃその思いも失せちゃったよね。せっかく私達のために頑張ってくれてたんだなって思ってたのに、結果があれだったもんね?ねぇ、どうするの?」
「…本当に申し訳ないと思っている。」
『それだけなの?お父さん(笑)」
『全くですね、お父さま(笑)」
『それじゃあ誠意もクソもないよね父上(笑)」
『もう少し頭使おうよ父(笑)」
『ちゃんと謝罪しようよパパ(笑)」
「お前たちは俺を心痛で殺そうとしているのか?」
モレッドが突然後ろから声をかけて来たかと思ったら、まさかの娘たち全員からの集中砲火を浴びました。ひどくね?
皆俺のこと呼んだ後(笑)ってついてるしさ、今の俺は父親の扱いすらされていないというのか。
思わずそんな感想が出ても致し方ない事だと俺は思うぞ、出張帰りの父は毎度こんな気持ちを味わっているとてもいうのか…
「そもそもさぁ、自分が仕事だから仕方ないって思ってる時点でナンセンスなんだよね。」
『そそ、娘が危篤ならせめて一日一度は顔を見に来るとかするよね普通。』
『おそらくそんなことどうでもよかったのでは?鬱憤を晴らすことの方が大切なようでしたし。』
『それを止めようとして求めるすべを持たせない人だしね。』
『おかげで病み上がりの娘を送ってようやく止まるし。』
『挙句の果てにはその止めに来た娘に対して怒声を浴びせると。』
もはや俺に逃げ道は無かった、仕事のせいにして逃げるな。か…
確かにモレッドを心配しているのであればインターバルの際に常にアヴァロンに帰還すればよかった、そうすれば一日1度は必ず顔を合わせられるわけだ。適度なガス抜きも出来てモレッドにあんな怒声を浴びせる事もなかったってことか。
言われてみれば確かにそうかもしれない、いやむしろそうでしかないとすら思えてしまう。
娘に言い負かされる父の尊厳の無さよ…いや、アンドロイドだししょうがないってこともあるんだろうけどさ。
「いや…本当にその通りだと思う。すまなかった。」
「ほんとにそう思ってる?」
『『『『『本当に?』』』』』
「あぁ、お前たちの言うとおりだよ。モレッドを心配しているのであればそもそも状態の確認だって欠かさず行うだろう、でも俺はそれをしなかった。モルガンとグィネヴィアに任せていれば問題ないと日ごとの容態確認すらしていなかったからな。」
「私に興味を失ったってことじゃないの?」
「それは違う、俺はただモレッドお前を守れなかった鬱憤をぶつけていただけだ。そしてお前がそうなってしまった事実から目を背けたかっただけなんだと今思えばそう思っていたと思う。」
「ふぅ~ん?それならまだ情状酌量の余地はあるかな?」
「難しい言葉を知ってるなぁ。」
たまーにだがモレッドの語彙力がすさまじく高いことがある、少なくとも俺が見ている間はモレッドが勉強しているところは見たことがないんだけどなぁ…
『あ、これはモレッドちゃんが勉強してないはずなのになんでこんなに言葉が達者なんだって思ってる顔だね。』
『失礼してしまいますね、モレッドちゃんは勉強家ですよ。』
『うんうん、父上が見てないところではいっつも勉強してるからね。』
『たまにモレッドちゃんの勉強会開いてるもんね。』
『どんどん優秀になってお姉ちゃんたちはうれしいぞ!!』
「まじか…」
いや、確かにモレッドは8歳ほどだ。つまり日本で言えば小学校1年生ぐらいなのだ、本来ならば学校に通って同年代の少年少女たちと交流を楽しみながら勉学に励んでいてもおかしくないはずなのだ。つまりこれはどういうことなのかというと…
「俺は…娘に教育を受けさせる義務すらこなせていなかったっ!!」
もはや何度目かわからない膝からの崩れ落ちを披露した俺は土下座の体勢になって娘たちに向かい合った。
教育の義務とは日本国における国民の三大義務の一つ。教育の義務・勤労の義務・納税の義務の一つのことである。
義務教育と呼ばれている物は皆さんもよく知るところであるとは思う、義務教育を受けさせる年齢というのは「満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満15歳に達した日の属する学年の終わりまでにある子。」と定められている。つまり俺はモレッドを本来は学校やら通信教育やらを用いて勉強させてあげなければいけなかったのだ!!
「オォォ…許してくれモレッド。俺は最低の父親だった…」
「そうだね、最低の父親ってのは否定しないけど。」
「グボァ!?」
『『『『『あ、モレッドちゃんがとどめ刺しに入った。』』』』』
「シテ…コロ…シテ…」
「でも、別に勉強に関しては文句はないんだよ。むしろ最善の環境なんだなって思ってたから。」
「…ホ?」
最低の部分を否定してほしかったが肯定されてしまったために俺は目が虚ろになってしまった、しかしその後にかけられたモレッドの言葉でほんの少しではあるが目に光が戻ってきた気がする。
「なんでかって言うとね、そもそも教材とかはお母さんが用意してくれてるの。各銀河国家ごとのカリキュラムを統合して一番私にあった方針でやってくれてるからね、お姉ちゃんたちは仕事に空きができれば私のところに来てわかりやすく解説してくれるし、多分全宇宙中探してもここまでの勉強ができるところってないんだと思ってるよ。」
「そうなのか?でも俺はモレッドが勉強してるところなんて見たことないしな…」
「勉強って親に見られてはかどると思う?お父さんはそうだったの?」
「違いますね、うん。その通りだと思います。」
「そういう事、ちなみにお姉ちゃんたちは教えてくれる分野はそれぞれ違うんだよ。」
「得意分野があるってことか、そんなに違うのか?」
『そうだね、私が教えるのは語学だね』
『私が担当しているのは生物学が主ですね。』
『私が数学だね。』
『私は社会学だねぇ。』
『私が化学~。』
なんと、我が家には最強の講師陣が揃っていたらしい。もしかするとモレッドは俺より頭が既によくなっているのかもしれない、俺なんて高校時代万年赤点ギリギリのラインで生きてきた人間だからだ。
子よりも頭の悪い親が上から目線で何かを言ってそれを聞き分けてくれるのだろうか?いや無いだろうと俺は断言する、だって学校の先生が自分よりバカだったらその先生から学びたいとは思わないだろう?そういう事だ…後でモルガンに俺用のカリキュラムでも組んでもらうか。
『ぶっちゃけて言えばモレッドちゃんって最初にファクトリーで目が覚めてからはほぼ毎日欠かさず勉強してるよね。』
『私としても驚きましたね、ここまで知識に貪欲でいられるものなのかと。』
『まぁ、出撃がない時なんて暇だから時間をつぶすって観点から見れば間違いじゃないとは思うけどね~。』
『でも、最初はびっくりしたよ「お姉ちゃん勉強教えて?」ってテキスト持ってお願いしてきたんだもん。』
『あぁ~、あれはね…正直可愛すぎて機能停止するかと思ったよ。」
5姉妹全員が腕を組んでうんうんと頷き合っている、その光景を思い浮かべるだけで確かに幸せな光景だったんだろうというのは容易に想像がつく。
でも…あれ?俺には声をかけられてないぞ?なんでだろう、こういうのっていくら姉たちが優秀でも最初は親に聞きに来るもんじゃないか?
「なぁモレッド、俺に勉強教えてもらうって選択肢はなかったのか?」
「なかったね、だってお父さん勉強できなさそうだったし。」
「コフッ!!…間違いじゃないけど、ちょっとくらい…」
「私にはお姉ちゃんたちとお母さんがいるから、お父さんはいいの。」
「グバァ!?」
血反吐を吐くような声をあげて今度こそ俺は床に倒れ伏した、娘に俺は勉強ができない事を見透かされていたというのか…なんという事だ。間違ってないけど少しぐらい聞いてくれてもいいじゃないか…
「んんぅ~せっかくだからお父さんに勉強してるの見せてあげよっか?」
「マジで!?」
「うわぁ!?そんなに大声出さないで!!びっくりするなぁもぉ!!」
「あっ、すいません。」
「まぁいいや、じゃあ食堂に来てね。今部屋からテキスト持ってくるから。お姉ちゃんたちは~?」
『私は無理かな、ギャラハッドの整備にこれからしばらくはかかりきりだから。』
『私もですね、お父さまの体調改善メニューを作らなければなりませんし。』
『私は行けるよ、アヴァロンで戦闘なんて降下してから一回しかないしね。』
『私はパスで、ギャラハッドの主機調整をヴィヴィアンに頼まれてるからさ。』
『私は行けるよ、なら私とモルゴースで教えよっか。』
「じゃあ数学と科学のテキスト持ってくる。」
そう言ってモレッドは自室に走っていった、俺は食堂に向かうことにした。5姉妹たちもそれぞれの作業に行くものとモレッドの勉強に付き合う者で分かれて移動を開始していたしな。
「にしても、勉強してるところを見るとか授業参観だよなぁ。」
『授業参観?』
『なにそれ?』
「俺がいた学校では年に何回か親が授業を見に来ることがあったんだよ。それみたいだなって思ってよ。」
『そんなのがあったんだねぇ。』
『意味あるのそれ?』
「親が見に来るってことで子どもたちはいつもより緊張して真面目に授業を受けるだろ?そしてそれが終わった後は学校の先生と面談があるんだよ、日ごろの授業態度とかを報告したりしてな。後は俺がいた学校では授業参観を午前中に設定して昼の給食を親も一緒に食べるってイベントもあったな。その日の給食はホントに豪華でな、バイキング形式だったんだぜ?」
『ほほう、それはなかなか興味深いものだね。』
『モレッドちゃんの授業態度とかを報告するのかぁ、悪いところなんてないんだよねぇ。」
授業参観についてモルゴースとマーリンに教えた、俺がいた学校はホントに小さい学校だったから給食費も免除だったし給食室が校内にあったからいつも出来立てを食ってたなぁ。
たまに学校の給食が食いたくなることってないですか?あれですあれ、今そんな心境です。
「で、モレッドの授業はどこまで進んでるんだ?」
『どこまでというと?』
「ん?いや数学なら足し算引き算とか、化学なら元素記号とか?」
『あぁ、そういう事か。数学はモレッドちゃん二次関数までやってるよ。』
「ハァ!?」
『化学はイオン式とかだね、元素記号なんて1から118まで全部覚えちゃったし。』
「バカナ!?」
なんという超ハイスペック八歳児、既に俺が覚えていないところまで進んでいるというのか。と言うよりすごすぎね?なんで小学校2年生クラスの子がそんなレベルまでできんの?普通に恐ろしい。
いや、モルガンのカリキュラムが間違っているとは当然思えないのでこれは純粋にモレッドの実力なんだろう。すっげぇなぁ…昔あったバラエティー番組のバカ決定テストをアヴァロンでやったら俺が殿堂入りする自信があるぞ。
そんな話をしながら食堂に着いてモレッドが来るまでのんびり授業参観の話をしていた、モレッドが来てその話をモルゴースが振ると「ふーん?」とまるで「私優等生ですけど?」と言いたげな反応を示すモレッドでした。
勉強が始まってからも後ろから授業内容を聞いていたが、懐かしいなと思いつつももはやほとんど覚えていない。プラス理解できなくなってしまっていた自分に絶望しました。
モルゴースが「じゃあせっかくだから父も一緒に小テストしよっか。」と悪魔のささやきによって俺もテストを受ける羽目に。
採点後、モレッドがモルゴースとマーリンのテストで95点オーバーだったのに対して、俺は30点以上40点未満という情けない点数をたたき出し…モレッドから「お父さんって、なんでギャラハッドとかアヴァロンを設計できたんだろうね?」と憐みの目を向けられたことがテストの点数よりもショックでした。
ヴィ「ま、これくらいが妥協点じゃない?(-_-)」
グィ「あまり長く続けてもよく無いですものね( ̄д ̄)」
モゴ「父上、この成績は…(;゜Д゜)」
オヴ「そんなにひどかったの('Д')
マー「いやぁ、もはや笑っちゃうよね(*'ω'*)」