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とても素敵な戦闘でした(どこが!?)

『それではモレッド、明日はあなたの父を。私の義兄を取り戻しに行くとしましょう。不貞は見過ごせませんものね?』

「そうだねマーゾエ、しっかり私もお説教しなきゃと思うから。」

『では、また明日。』

「また明日ね。」


マーゾエとの邂逅を経た私はヴァレットのコックピットから降りる、外ではお姉ちゃんたちとキスハが喜々とした顔で待っていた。

私の反応を楽しみにしていたんだろうという事がひしひしと伝わってくる。


「ありがと!!ヴァレットも元通りだし、明日はお父さんを連れ戻してくるから!!」

『『『『頑張ってね!!モレッドちゃん!!』』』』

「なっ!!」


皆の激励が私の背中を強く押してくれる、私は一人じゃない。なら、今のお父さんにも勝てるにきまっていると私は強く思ったのだった。


後はもう一回お母さんのところに行かなきゃ、お母さんの妹のみんなのこと聞きたくなったから。

私にとっては叔母さんになるのかな?ホントに家は大家族だ、これを作り上げたお父さんってほんとにすごいんだなって思う。まぁ今回の件はお母さんがこっそり仕込んでいたから知らないとはいえいい事ではないよね。お嫁さんの妹と一カ月以上一緒にいるんだから、しかもその間一度も家族には顔出ししていないというね…


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『そうですか、マーゾエから聞きましたか。』

「うん、お母さんの妹の一人がギャラハッドの中に眠ってるってことも聞いたよ。」

『まぁ、モロノエは未だ覚醒の兆候も見えずじまいですからそこまでの問題はないでしょうかね。』

「でも、お母さん的には面白くないでしょ?」

『それはまぁそうですね、私たちをほったらかしにしながらも意識が戻っていないとはいえ妹とランデブーしているわけですからね。』

「あ…怒ってるね。」

『むしろ怒らない方がおかしくないですか?そうは思いませんか?モレッド?』

「そ、そうだね!!うん、そうだと思うよ!!」


叔母さんたちの話をしてたらお母さんの地雷を踏み抜いちゃった、ここがお母さんの地雷かぁ…気をつけよっと。


『さて、明日は間違いなく激戦です。ギャラハッドから送られてきているバイタルサインは常にグィネヴィアが確認ののち私に上がってきています。状況としてはあなたとは別のベクトルで極度のストレスにさらされている状況の様です、正直に言ってあなたが立ちふさがったとしても敵と認識する可能性が高い。よろしいですね?』

「大丈夫、そのくらいの覚悟はできてる。私は負けないよ、あんな状態のお父さんにならね。」

『よろしい、ではギャラハッドの方の説明もしておきましょう。現在のギャラハッドはほぼ無補給の状態で整備も無しで稼働している状況です。スペック上は一カ月は無補給・無整備でも稼働に問題はありませんが、度重なる戦闘と高負荷のかかる戦闘機動によって各関節部などの駆動にエラーが発生しているようです。ヴィヴィアンもこれに関しては苦言を呈していました、しかしこの状況でありあの人の身体・精神的状況を鑑みればこれも当然。むしろ連れ戻すには好機ととらえるべきでしょう。ヴァレットの装備パッケージはNurseです、出撃までに運用法は頭に入れておきなさい。』

「了解!!」


お母さんと私の二人で行ったブリーフィングはいつものお父さんがいたときよりも厳かだった。お父さんがいないだけで違うのはどこも同じ、その原因がお父さんなら余計にそうなるのも納得だ。

…絶対連れ帰ったら鳩尾にキックしてやるんだから!!私が原因だとは言えやりすぎなんだよ!!んもぉ!!


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そして翌日、お父さんは敵対生命体が引くインターバルになってもまだ追撃を仕掛けていた。モニターで見たギャラハッドはもともと綺麗だったカラーリングも敵の返り血だったり体液だったりでどす黒い状態だった。もはや聖騎士ではなく暗黒騎士みたいだと思った、ゴーグルバイザーから垂れた返り血なのか体液が涙を流しているかのように見えた。


『いいですねモレッド、無理に短期決戦で決めようとしなくてもよいのです。ギャラハッド側がヴァレットを認識さえすれば強制的に機体側がエラーを出して強制停止するはずです。』

「止まらない場合は?」

『…あまり想定はしていませんが、そうなった場合はあなたに託しましょう。マーゾエ、モレッドを頼みます。』

『お任せくださいお姉さま、必ずや無事に帰還させてみせましょう。』

「むむっ、私だってやれるんだからね!!」


カタパルトのシャトルに接続する間にそんな会話をしていた、緊張がほぐれていっているのがわかるし秘密兵器?もあるらしいから心配はしていない。


『packageNurse connection system all green』

『ギャラハッド・ヴァレット発進準備完了、射出タイミングをパイロットに譲渡します。』


ヴィヴィアンお姉ちゃんとお母さんの声が順に聞こえて、出撃の準備は整った。

ゆっくりと目を閉じて深呼吸をして、目を開けて高らかに声をあげる。


「ギャラハッド・ヴァレット、ソラ・モレッド行きます!!」


射出によるGを感じて一気にお父さんに近づく、落下制御はもう完璧。お父さんの後方500mほどに着地してゆっくりとヴァレットを着地姿勢から立ち上がらせる。


ギャラハッドもヴァレットのほうをゆっくりと見て、二機は向かい合った。今、この戦場には私とお父さん。ヴァレットとギャラハッドしかいない、付近に味方機は無くただただ広い荒野に涙を流す聖騎士と従者がいるだけだ。


「お父さん、迎えに来たよ。」

「…」


返事はなく、ただガラティーンをヴァレットに向けてくる。友軍機にロックを仕掛ければ必ずアラートはなるけどお父さんはロックを使わない、だからアラートも鳴らないんだろうな。


今のお父さんには私も排除対象…か…原因の排除をしたいってことなのかもしれないと、すこしナイーブになる。それでも、私はお父さんを連れ帰る。またお父さんと楽しく過ごすために。


「今連れ帰るから。」


私もヴァレットのロックをギャラハッドに向ける。


その瞬間にギャラハッドは急上昇した、ロックさせなどしない。一瞬でケリをつけてやるとでも言いたそうな突貫、でも私はそれを何ら苦労もなく最小限の動きで躱していた。

普段のお父さんなら絶対しないような単調な動き、そんなものはお父さんじゃ絶対しない。敵生命体との戦闘で効率を求めた結果があの戦闘機動になっていったんだろうな。地上だし下は気にしなくていい、飛び道具もほぼ使ってこない。それなら比較的防御の薄い上から崩すって言うのは納得できることだから。


でも、私にそれは通用しないよ。どれだけお父さんの変態機動を見せられてきたと思ってるのさ、直線機動なんて舐めてるの?


『モレッド、笑っているようですが。』

「ふふふ、だってお父さんを倒せるんだよ?絶対勝てないと思ってたお父さんにさ!!テンション上がっちゃうよね!!」


我ながら戦闘狂だなとも思うけれど、そんなことよりもお父さんに勝てそう。お父さんに勝ちたいという想いが先行してしまう、ギャラハッドはちょうど弾切れのタイミングだったみたいだから砲撃を仕掛けてこない。頭部バルカンも使ってこないところを見るとそっちも弾切れかな?


ちなみにナースに遠距離武器は無い、特殊装備のイッツ・タイム・トゥ・ディスイップラインは対AMRSであってさらに言えば捕獲用だからだ。

長いからITIDって呼ぶけど、持っているのは腕部に搭載されたトンファーみたいなものと肩部のシールド兼電磁アンカーボルトのみ。


過剰な電力を流してAMRSのシステムダウンを狙うコンセプトなのだ、ちなみに武器にもなぜか名前があって左手側が「folding cage rod」右手側が「preach rod」って言う。意味は?って聞いたら『折檻と説教、ですよ』ってお母さんがにっこりしてた。怖いです…


「行くよマーゾエ叔母さん、こっちから超接近戦仕掛けていく!!」

『おばっ…いいでしょう、あなたの望むままに。』


空にいるギャラハッドに私も一直線に突っ込む、右手のPR(preach rod)を振りかぶってガラティーンと切り結ぶ。

「はぁぁぁぁぁぁぁあ!!」切り結んだ勢いをそのままにギャラハッドを無理やり地面に押し倒しに行く、当然お父さんも抵抗してくるのでなかなか地面に到達できない。


「ならっ!!」


切り結んでいるところを支点にして私はギャラハッドの背後をとった、突然かけていた力が抜けたのでギャラハッドも体制を一瞬崩した。そのすきを見逃すほど私もルーキーじゃない!!そのまま背中側から押して一気に地面に押し倒した。


すごい勢いで着地したからよく舞う土ぼこり、そのままF(folding)C(cage)R(rod)をギャラハッドに突き立てようと振りかぶった。


「うわっ!?」


ギャラハッドがスラスタ―をヴァレットに向けて吹かしたことでヴァレットの体勢が崩れる、マウントポジションをとれていただけに離脱の方法がそれしかなかったのかもしれないけどそんなことするぅ!?


ヴァレットが倒れたせいでギャラハッドも倒れた状態から復帰してしまった、でも今のスラスターの使用は結構無理をしたんだろう。若干せき込み始めてる、つまりお父さんの変態機動はより難しくなったってわけだ。


「これなら、もっとやりやすい!!」

『気を付けてくださいね、あの状況下でもご主人様は勝ってきた男です。』

「わかってる!!」


有利な点である機動力を生かしてわたしはまた突っ込んでいく、今度は予測がしづらいように変則的に動きながら。


「これでぇぇぇぇ!!」


ギャラハッドの左側から私は一気に距離を詰めて攻撃を始めた、ガラティーンを右手に装備してるから防御しづらいだろうっていう目算も会ったんだけどね。


でもやっぱりだめ、普通に面と向かい合わせになって綺麗に防がれた。うーん…まだそんなに時間は経ってないはずだけどやっぱりらちが明かない気がする、お父さんの予想外の攻撃をしなきゃ綺麗に一発なんて決められないよ。


切り結んでは弾いて、切り結んでは弾いてを繰り返して一旦距離を取った。ヴァレットの調子は絶好調、ギャラハッドは絶不調だって言うのにこれだけ拮抗してるってことはやっぱりパイロットの腕ってこと。まだまだお父さんと私には覆しようのない圧倒的差があるってことかな、でもねお父さん。私にだってお父さんに勝てる一手があるんだよ、それを使わせないでね!!


電磁アンカーボルトを射出して動きをけん制しつつPRとFCRでの双剣スタイルでの乱舞、今のお父さんでもこの至近距離戦じゃ一瞬でも気が抜けない。ちょっと隙を曝したら危なくコックピットブロックにガラティーンを突き立てられかけた。


「まだだぁ!!」


頭部バルカンを撃ちながらまた接近戦、死の恐怖は感じない。お父さんは多分私を〇すつもりでかかってきている、そうでもなければこんなプレッシャーを感じなんてしないはずだから。でも恐怖がないのは今のお父さんになら必ず勝てるって確信してるから。


さっきから不自然な動きを時折見せるギャラハッド、多分切り結び続けた弊害で各部のアクチュエーターに限界が来てるんだ。決めるなら…ここだっ!!


「マーゾエ叔母さん!!」

『いいでしょう、副腕(サブアーム)展開操作をマーゾエが担当。』


背中から1対の腕が出て4本になる、もちろんこの腕も武器の保持は出来る立派な腕だ。

腕が展開したことを警戒したのかギャラハッドが身構えてガラティーンを構えなおした。よし、これならいける!!


「お父さん、いい加減にしてもらうからね!!」

『はい、そろそろお姉さまのフラストレーションも限界値でしょうから。これを展開したからには手早く済ませます。』


身を屈めて、まるでクラウチングスタートのようにギャラハッドに一直線に私は飛び込んだ。

ギャラハッドが唐竹割りのようにガラティーンを振り下ろす、それを『させません!!』マーゾエ叔母さんの操作する副腕が真剣白刃取りのように受け止めて弾き飛ばす。

ヴァレットはギャラハッドを押し倒してマウントポジションをとった「これで!!終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!」力いっぱい叫んでPRとFCR、電磁アンカーボルトを叩きつけた。


メーター限界値まで電圧をかけてギャラハッドの動きを止めた、「バチンッ!!」ってすごい音が聞こえてギャラハッドのメインカメラから光が消えた。


やばい…やり過ぎた?


『大丈夫です、今のショックで一時的にシステムがダウンしただけです。すぐに再起動するでしょう、おそらくモロノエ姉さまも覚醒するかもしれないでしょうし。』

「えぇ…強引に起こしちゃったなぁ。ていうかお父さんは!?」


ギャラハッドとモロノエ叔母さんは問題なくても人間であるお父さんは別だ、そんな大電圧の電流を受けて無事なわけがない。

マーゾエ叔母さんにギャラハッドのコックピットハッチを遠隔で開けてもらって私もヴァレットから降りて確認に向かう。


「お父さん!!大丈夫!?」


コックピットを覗き込んでお父さんの安否を確認した、もし手違いで逝っちゃったらほんとに大事件だから。


「…ごるるぁ!!てめぇ俺のギャラハッドに何してくれとんじゃあ!!ぶっ○すぞ!!あぁん!?」


ものすごい剣幕と怒声で反撃された、私はすごい心配してたのに、ずっと会いたかったのに…こんなの…こんなのあんまりだよ…


「…スンっ」

「泣いて許されると思って…あれ?モレッド…?あれはヴァレット?なんで?解体指示は出してたのに。」

「…さんの…カ。」

「うん?な、なんだモレッド。」

「お父さんのバカァァァァァァぁ!!もう知らない!!お父さんなんてもう帰ってくるな!!勝手にどっか行っちゃえぇぇぇぇぇぇ!!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!」


お父さんの返事も待たずに私はヴァレットに戻って、そのままアヴァロンに帰還したのだった。

帰ってからも泣いて、お母さんになだめてもらうまで泣き止む事はありませんでした。


…お父さんなんて大っ嫌い!!

ヴィ「懐かしい人が出てきたね~('ω')」


グィ「マーゾエ叔母さんのことですね?(`・ω・´)」


モゴ「キャメロットがあるかわかんないもんね('Д')」


オヴ「それよりお父さんでしょ!!(;゜Д゜)」


マー「モレッドちゃんに嫌われたね(;´・ω・)」

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― 新着の感想 ―
[一言] 取り敢えずお父さんは、 『ハンガーで24時間蓑虫の刑』 の後に奥方とお嬢さんからそれぞれ気が済むまでお説教で。
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