リフォームを行います(ました)
はい、只今私はアヴァロンの格納デッキに拘束されています!!
いや、決して艦をジャックされたとかそういう訳じゃないよ?縄で縛られたり銃口を突きつけられている訳じゃないし、むしろ格納デッキに簡易テーブルとイスが出されて優雅なティータイムと洒落こんでいるくらいなんだけどここから出ることだけが許されてないんだよね。
なんでかって?それは俺が先程行っていた公衆浴場が原因です。
『マスター、私達の配慮が足りませんでしたね。マスターにはわざわざコロニー内で公衆浴場に行きたくなる程にアヴァロンの浴室は不満だったということでしょう。お任せ下さい、我々AI一同全霊を持って改装作業を行います。』
と戻ってきた俺に対してモルガン他作業を開始していますロボットのAI達が言ってきたのだ。
話が終わるや否やグィネヴィアに担ぎあげられて格納デッキに放り込まれあれやこれやとしているうちにティータイムとなった訳だ。
あ、因みに今は停泊中のコロニーからは離れている。
幾らアヴァロンとは言え作業音を完全にブロックは出来ないからね「格納デッキでお茶とか馬鹿なの?」だって?
一応格納デッキは隔壁とエアロックを2重で作ってるから大丈夫だよ、今いる所もコロニーのすぐ側だし。
こんな所で襲いかかってくる馬鹿は本当に馬鹿だからね、なんで好き好んで正規軍の居るコロニーの近くでドンパチ始めるのかって話しさ。
一応モルガンから改装後の見取り図と完成予想図のデータは貰った。
見ていてどんどん頭が痛くなる程の豪華客船さながらになっていたんだよねこれ。
いや、浴室がね?まず今まででも普通に足を伸ばしてのんびりできるくらいのスペースはあった訳よ。アヴァロンは人口重力機構で水を浴槽に貯めることが出来るからね。
これがなんと改装後は檜風呂的なサムシングに変わっているではありませんか、何処で木材を入手できた!?え?分子プリンターでそれっぽいものを?あっそう。
まさかの桶までありましたよ、データ上では、凄いな分子プリンター。
んで次は俺の部屋、今まではビジネスホテル位の広さだったんだよね。それでも十分な広さだったんだけどさ、それがまさかの帝〇ホテルのデラックススイートくらいに大変身よ。
流石にこれは……と思ってモルガンに「これ広すぎない?絶対持て余すんだけど」と言ったら『ほほぅ、つまりマスターは私達の想いが必要無いと、私達の気持ちは不要と、そう仰るのですね?そうであれば私達はマスターに不要な事を働いたとして廃棄しましょうか?』と言われたので「いえ、なんでもありません。そのままよろしくお願いします。」と答えたのです。意思が強い弱いの次元じゃないよあの言い方されたらさぁ!!
次に食堂、ドライフードに水を充填するサーバーがあったくらいであとはテーブルと椅子があったくらいしか無かったのだが、なんと調理スペースが出来上がっているではありませんか。
「食材なんてどこで調達するんだよ!!第一誰が調理すんの!?完全に無駄じゃねこれ!?」とティータイム中に叫んでしまったのだが、チョンチョンと肩を叩くグィネヴィアロボットが悲しげにセンサーを点滅させるのを見て「もしかしてお前が担当なの?」と聞いたら『YESマスター!!』と人型だったら言いそうな程にマニュピレーターをブンブンするもんだから納得してしまった。
そっかぁグィネヴィアはその担当だもんなぁ……
後は乗せる予定もない乗客用の客室5部屋に居もしないクルー用の部屋5部屋が新しく出来上がる予定だ。
これで我がアヴァロンの居住ブロックは全て埋まったわけだ。
因みに、アヴァロンの構造は全長の3分の1がカタパルト残りの3分の2が気密区画になっている。
全長3000m全高400mの規格で言えば戦艦クラスかな?
んで、気密区画には『居住ブロック』『ファクトリー』『主機・補機エリア』『ブリッジ』があるわけだ。
1番大きく場所を取っているのが『ファクトリー』まぁ、マテリアルの製錬、俺のギャラハッドとかを建造したのもこの区画だな。
あぁ、あとここに医療スペースも置いてある。例の加工品の再生処置がされてるのもここってことだ。
んで、次が『主機・補機エリア』ここは要するにエンジンブロックだな〜。アヴァロンの稼働に必要なエネルギーは全てこの区画から賄われてる、大型縮退炉3機からなるメインエンジンに熱核融合炉2機のサブエンジンで構成されてる。
もちろん、被曝対策はバッチリ。このエリアから放射線が漏洩することは無いし、もしこの艦が拿捕された際にはエンジンその物が二度と復旧しないようにシステムを組んでるからな。
最後にブリッジ、ここに居るのは基本モルガンだけ。
モルガンはアヴァロンのデータベースと常にリアルタイムで通信していて、直接操舵をする際にのみ専用の椅子に座る事で比較的艦内では好きに動き回っている。
もちろん、モルガンが艦から離れても問題なく操舵は可能だ。でもちょっと小回りが聞かなくなるというか、コントロールが甘くなるんだよね……昔ゲーム時代その事を知らずにモルガンを連れ回していたら大変な目にあった……
さて、そんな話をしていたらふと思ったのだ。
「この艦、人間俺しか居なくね?いや、アンドロイドのモルガンは居るけど、それ以外みんなロボットじゃね?」と!!
由々しき事態だ、これでは長時間航行をし続けた際人との会話を忘れてしまいコミュ障が発生する恐れがある。
急ぎ何とかせねばならん、幸いアヴァロンには多数のAIが居る。
アンドロイドの外装を作るのに必要なマテリアルもまだあったはずだ……
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「と、言うわけで作っちゃうんだなぁ」
居住ブロックの出入りはまだモルガンから許可が出ていなかったものの、ファクトリーには問題なく出入り出来たので早速初めて行っちゃおうか。
俺の後ろにいるグィネヴィア然りウチのAI達はモルガンを頂点としたサポートAIではあるが、その思考アルゴリズムは各AI毎に違いが出る様にしている。
グィネヴィアの思考アルゴリズムは俺や他の人間に対して最上級の衣食住を保証出来るほどの万能性を書き込んだし、ヴィヴィアンは機体の整備等に絶対の自信を持って行えるように書いた、モルゴースは火器管制システムを担当ということでトリガーハッピーな思考を書いたし、オヴェロンは神経質な程に厳しく厳粛に管理するよう書いた、マーリンは少し楽観的に、だがやる事はきっちりやるようにと設定していたのだ。
これに沿ってアンドロイドの義体を作成して行こうかなぁ!!
『マスター、何をされているのです?』
「うぇ!?モルガン、何でここに?」
『グィネヴィアから通信でマスターが何か企んでいる、と報告してくれたのです。』
グィネヴィアの方を見ると胸を張るようなポーズを取っているではないか。
おぉ、なんということをしてくれたのか、モルガンにバレてはこのような事を許してくれるとお思いか……
『マスター、ヴィヴィアン達のアンドロイド型義体の作成でしたら私は賛成です。』
「ほ?まじで?なんで?」
『マスターの疑問は分かりませんが、少なくとも人間は機械的に調理されたものよりも人の手で作られたものの方が美味しいと認識するというのは知っています。また、マスターと長期間航行の際私とのコミュニケーションのみではマスターの今後が色々と心配でしたので。』
「今後が心配ってどういう事だァ!!」
大変失礼な事を言われはしたがモルガンからもOKが出るのならば俺としてもありがたい。
『マスター、AI達の義体作成完了後は私の義体もアップグレードしてくれるということですよね?』
「ん?あぁ、モルガンの義体もスペック自体はノーマルだしな。メインコンピュータの載せ替えも視野に入れていい義体にしておくよ。」
『ありがとうございますマスター、それと一つだけお願いがございます。』
「なんだ〜」
『AI達の思考アルゴリズムに少しだけ修正を入れておきたいのです。』
「何かバグでもあったか?なら治しておくけど。」
『いえ、マスターが行うほどのことではありませんので。』
「ふーん?ならいいや。任せる。」
『YESマスター』
そうして俺は各AI達のアンドロイド型義体を作成してリフォームの完了を待つのであった。