あぁぁ〜生き返るわァァァ
蛮族共を打ち倒して物資を回収した後コロニーに帰還した俺は何をしているかと言いますと、サルベージ組合への出頭命令を受けたので出向いている所です。
「え?俺悪くないんだよね?なんで?」とモルガンに確認したところ『今回の出頭命令には事後処理と詫びがメインの様です、罰金などでは無いそうですよ。』らしい。
そういう事ならと赴いた俺が馬鹿だった、だって「貴艦は大変優秀な収集能力を持った艦を保有しているそうだね、どうかな?是非傭兵組合などではなくサルベージ組合に鞍替えしては。まぁ皆まで言うな、ここに移行手続きに掛る文書は用意してある。ここにサインしてくれればいいのだよ、さぁさぁ。」とウザったいほどに勧誘して来るのだ。
んなもんやってられるか!!って事で俺は「あんたらの組合のケツを拭いたのは俺なんすよ、ずさんな管理のおかげで迷惑被った側の人間にさらにケツを拭けと?いやぁ、面の皮が厚い所ですなぁここはぁ!!」と結構圧高めで言い返してやったのだ。
若干引きつった顔をしてようやく解放してくれたんで良しとしよう。
『マスター、要件は終了しましたか?』
「あぁ、今終わったところだ。クソッタレめ馬鹿みたいに勧誘してきやがって……」
『そうですか、回収したマテリアルは売却額が決まりました。150万メルでした。』
「そうですかってかい……150万メルならいい所かな?大して労せずに手に入れた分もあるしなぁ」
素っ気ないモルガンの報告に少しだけ良い気分になった。
そんだけあればしばらく何もしないでも生活出来る分には稼げたな、消耗品に長期間航行用の酸素とか燃料を差っ引いてもお釣りが十分過ぎるくらいだ。
『それと、撃破艦からの収集品の例の加工品ですが』
「あぁ、あれね。やっぱりダメだったか?」
『はい、3つは既に修復不能1つは何とか修復可能圏内でした。』
「じゃあ3つは丁重に弔ってやろう。1つは完全に治すのが不可能でも可能な限り健全な状態まで戻した後どこか別のコロニーに連れて行ってやろう。ここじゃろくな事になる気がしないからな、多分拉致られたかなんかのタイプだろ。」
加工品の処理を任せていたがやっぱそうなるか。まぁ1つは何とかなっただけ上々と考える事にしよう。
加工品とはつまり人間人形の事、普通に生きていた人間を薬物の過剰投与や手術を行って物言わぬ人形にする物だな。
ゲーム内でもそういう物が流通しているという事はフレーバーテキストで書いてあった、実際イベントでそういう物を作ってる基地を潰して処理された人間を救出するって物は多々あった。
実際目にしたら胸糞悪い事この上ないなこれ、殆ど人間としての形を残しているからなのか痛ましくて見るのも辛かった。
モルガンが全部対処してくれてほんとに助かる。
『マスター、処置完了後は冷凍睡眠にて保管することにします。記憶処理はどうしますか?現在の状況ではあらゆる身体的機能が損失しています、もちろん十分再生可能ですが物言わぬ人形になったとはいえ行われた行為については記憶が残るでしょう。』
「何とか出来そう?」
『YESマスター、そう仰られると思い既に記憶の上書き作業を開始しています。今は身体の再生と同時に新たな人生を疑似体験として直接脳内に再生しています。』
嫌な記憶は新しい記憶で塗り消す!!科学技術の進歩したゲーム内設定だからこそできる芸当だな。
新たな人生を新天地で輝かしく踏み出してもらいたい。
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はい!!私が今どこに来ているのかと言いますとですね、コロニー内の公衆浴場ですね!!
え?水資源は限りがあるからそんな贅沢許される訳ないだろ?HAHAHA!!よく分からんけど問題ない!!だって水買うのだってそんなにしないしさ、入浴料金が1000メルしたのだってそんな事関係ないよ!!ウンキットソウダソウニチガイナイ。
もちろんモルガンにも許可は貰ってるよ?『マスター、身体を清潔にするのは大切だということはわかります。ですがわざわざ少なくないメルを支払ってまで他人も入る浴場に行く意味がありますか?それならばアヴァロンのバスルームで十分では無いですか?よく考えてください、確かに今回の収入は少なくない額になりました。ですがマスターがそのように浪費を続ければすぐ心許ない額になってしまうのは目に見えています。マスターは昔からそうでしたね?私のアップグレードが可能になるや否やすぐ様大量のマテリアルと時間、メルを消費して私を最上位クラスのAIにして下さいました。もちろん私含めアヴァロンに搭載されているAI一同感謝しているところではありますがそれもこれもひとつ間違えればマスターは借金地獄に陥っていたのですよ?運良くここまで来れたからよかったようなものですからね?分かっていますかマスター。良いですか?今回は見逃して差し上げましょう、ですが今後もそういった施設を利用するのであればアヴァロンのバスルームを改装した方が遥かにコストパフォーマンスは良くなります。マスターは入浴がお好きなのですから、コロニーに寄港する度に施設を利用されては勿体ないです。そして、我々AIにも意地というものがあります。マスターの衣食住を完璧にサポートしているのは私たちだという意地が。ですので今後利用された場合は我々AIがボイコットを起こすのでお気をつけ下さい。』と穏やか〜に済ませてくれたのだ。
え?めちゃくちゃ怒られてんじゃんって?皆まで言うな諸君日本人たるもの湯に浸からねば洗い流せぬ疲労もあろうて……
「あぁぁ〜生き返るわァァァ〜……」
特に温泉のような効能がある訳でもないただのお湯なのだがやはり大浴場と言うのはいい、気持ち的に解放感があるのだ湯に浸かりただ息を吐くだけでも狭い空間と広い空間では何か違いがあるだろう?それだよそれ、わかってくれる人はわかってくれるはず。
湯船から出て1度身体の水気をとったあとタオルを冷水で濡らしてからサウナに入る、乾式サウナだなこれは。
ジリジリと肌を焼くような熱さが全身に覆い被さるようにやってくる、入口横にある砂時計……砂時計!?をひっくり返して座る。
……イイね……とても良い、ただ座っているだけなのに体の芯から熱くなって汗が吹きでてくるようなこの感覚、サウナはいい文化だと思う。砂時計はまだまだ落ちきったりしないだろう、だがそれがいい、静かにただ身体から老廃物が出ていくような気がする汗を流し続けまだ冷たいタオルで額を拭うのだ、それが気持ちいいからサウナに入ってしまう。
あ、サウナで我慢比べとか絶対するなよ!?あれほんとに迷惑行為だから。昔俺もやった事があって、そんときは中に入ってたおっさんから「おいガキ!!出るなら出てけ!!」と怒鳴り散らされたっけ……
サウナから出る入るを繰り返してもう一度身体を洗い湯船に浸かってから俺は公衆浴場を出る事にした、浴場のロビーには牛乳めいたサムシングの飲料が数種類置いてあった。多分見た目的にコーヒー牛乳とかフルーツ牛乳的な何かだろうけど、真っ黒な飲み物とケミカルな色した飲み物の中に白い牛乳的な何かがあっても飲みたいとは思えないだろう?
俺は自販機でスポドリ(ポカ〇的な味)を買って飲みましたよ、牛乳的な何かには手を出しませんでした。
スッキリした俺はちょっとした用事を足すためにメーカーショップにやってきていた。
何か買う訳じゃないよ、だから冷やかしに近いけどね。
「いらっしゃいませお客様、本日はどのような要件で?」
「あぁ、いや傭兵組合で海賊の機体を鹵獲した時はここに持ち込めば良心的な価格で引き取ってくれると聞いたもんだからね。」
「おぉ、傭兵の方でしたか。ありがとうございます、因みに海賊は名乗っていましたか?まぁ仰らないで、当てて見せましょう。クリアボーンズとか?」
「いいや、クリスタルスカルと名乗っていたよ。」
「ほぅ!クリスタルスカルですか、あいつらは海賊の中でも面倒な部類でしたからいやいや、ありがとうございますお客様。」
「気にしないでくれ、こっちも仕事だったんだ。で?幾らで買い取ってくれる?」
「……状態を確認しても?」
「あぁ、これだ。」
「ムムっコックピットブロックに大穴……しかしそれ以外に目立った破損は無い、つまりピンポイント攻撃によるパイロットの排除での鹵獲という事ですね。」
「もし必要であれば艦から移送は出来るぞ?」
「おぉ、それはありがたい。ではこちらの機体350万メルで買い取りましょう。」
おおぉ?マテリアルよりも高値が付いたぞ?どうしてこんなにボロになった機体にそんな価値が付く?
「不思議に思われているかもしれませんが、クリスタルスカルのこの機体はとある企業のテスト機だったんですよ。しかも制式採用される予定だった最新型のね、それをテスト宙域に移送している最中に強奪されたそうです。装備品から何から何まで全部丸ごとかっさらって行ったそうですよ、そんな機体のデータをウチは何の文句もつけられず手に入れられる。それに比べれば350万メルなんて安いものです。」
なるほど、このメーカー気に入った。
何か買うわけじゃないけどそういうメーカー独自の技術等をどんどん吸収しようとするその心意気は俺のゲーム内でのプレイングにも似ていた。
「じゃ、この機体は移送手続きしておくよ。いい取引をありがとな。」
「こちらこそ、ぜひ今後も縁がありましたら。」
俺も相手も悪い笑みを浮かべながら離れていった。