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Can(not) you shake it off

『それでシランちゃんも格納庫に連れてきたのかぁ...』

「面目ない...」


 ヴィヴィアンねぇねがシランを抱えるアタシをみて『なんでシランちゃんが居るの!?』と驚いたのでアタシがお昼寝してるところから説明してた(グリトネア叔母ちゃんの補足も入ってるよ)んだけど、シランのアタシから離れたがらない現象はどうにもならなかったので仕方なく連れて来たということで納得してもらった。


 アタシ以外つまりモレッドねぇねやエルピダ達にはここまで引っ付いてなかったと聞いた時はなんで?と思ったけど、モレッドねぇね達は試合の観戦が終わって夜にはアルビオンに帰ってたらしいからシランの顔を毎日見れていたらしい。

 となると逆説的に試合後もキャスパリーグの近くで当直の様に寝泊まりしてるアタシはシランと顔を合わせる機会がどうしても減ってしまうわけで...


「こうなっちゃったんだね〜。」

『シランちゃんお姉ちゃん達大好きだもんね〜(。・ω・)σ』

「キャッキャ!!あう!!」


 オイル塗れになった手袋を脱いで綺麗な手を出してからシランのほっぺたをつんつんするヴィヴィアンねぇね、つつかれたのでこそばゆいのか首を振ってはいるけど構ってくれたことに喜ぶシラン。


 ここだ!と思うタイミングでヴィヴィアンねぇねにシランを預けようと手を伸ばしたけど...「ふぇっ...(´;д;`)」ダメだぁ!?ここまでアタシから離れようとしない強い意志は一体どこからっ!?


『あはは!!キスハちゃん愛されてるねぇ。』

「ちょっとシャレにならないよね!?アタシこの後また出撃しなきゃなんだけど!?」


 このままシランが離れたがらないままだとて下手したら全力機動してるキャスパリーグのコックピット内にまで連れていかないと行けなくなっちゃうんだけど!?首が座って無いのは論外だし、それでなくとも心肺機能がまだ成熟し切ってない幼児にはキツすぎる(対G機構がいちばん強いキャスパリーグとは言え)から絶対ダメ!!


「こうなったら...何とかお昼寝してもらってその隙に...」

『多分居なくなってたらキスハちゃん戻って来るまでギャン泣き確定だね!!』

「なんと言うっ!!」


 ヴィヴィアンねぇねのトドメの一撃を受け思わず膝をつく...でもシランはその動きに「キャッキャ」と喜ぶ始末...可愛い妹とは言え戦場に連れていくのはお姉ちゃんとして譲れない部分があるよねぇ。


 というかそもそもアタシ達が戦場に出ること自体とと様あんまり良しとしてないふしがあったし...今では何も言わないし顔にも出さない(出させない位アタシ達が実績を出したからね!!)けど、それを生後半年経ってないシランを出していいって結びつける訳にも行かない。


 そもそも数時間...下手すると1時間ごとにご飯を食べたりおしめを変えたりしなきゃ行けないのに、戦闘中にそんなことそもそも出来ないよねって話。複座機体のエクティスや、アークホークならワンチャンあったくらいだ。コックピットがアタシ1人入るので結構ギリギリなキャスパリーグにシランを連れて行くなんてそもそも論外!!この話はおしまい!!


『でもシランちゃんなんでそこまでキスハちゃんから離れたがらないのかな?』

「それはそうなんだよね〜...幾ら離れてた時間が長いとは言え、ここまでくっつく理由が分かんないんだよ。」

「う?( ॑꒳ ॑ )」


 ねぇねとアタシがシランの顔を見つめると、シランも「なーに?」と言いたげにキョトンとした顔でアタシとねぇねを見つめ返す。


 シランの感情は基本的に喜色ひとつだからなんでここまでアタシから離れたがらないかもわかんないんだよね〜、まぁここまで好いてくれることに関しては悪い気はしない!!むしろ嬉しいまである!!


 だけど...何度も言うけど連れてけないんだよぉ!!何回も言ってるかもしれないけどキャスパリーグの瞬間的にかかるGは文字通り殺人的、それを対G機構に任せて強引に操縦してるわけ。コックピットレイアウトも対Gに特化したバイク型レイアウトだからこそ耐えられているだけであって、アタシでも気絶する事があるんだからシランなんてもってのほか!!


「シラン...アタシそろそろ行かなきゃだよ?」

「むぅ(⑉・̆н・̆⑉)」

「ぐぅかわっ!?くっ...アタシが本当に倒さなきゃ行けないのはシランだった!!」

『倒しちゃダメだよ〜。』


 わかっとるわい!!言葉のあやって奴だよ!!ヴィヴィアンねぇねに目線だけでツッコミを入れつつ、シランがなんとかアタシから離れてくれるよう試行錯誤...


「って言うか手が...キツいぃ...」


 シランは生後間も無いにしては結構重たい、3ヶ月で平均体重が男の子で6.4~9.6kg女の子で6.1~9.1kgという所をなんと9.7kg!!良く動いて良く笑ってよく眠ってを繰り返して尚且つ生まれ育った地球環境よりも若干(1割無いくらい)の高重力下のアルビオンで生活してるからね。骨太と言うか体組織が頑丈になっているのだ!!


 勿論アタシ達もそれに耐えられるだけのトレーニングだったりグィネヴィアねぇねの食事によるコントロールも受けてはいるけど、分かる人はわかるかな?赤ちゃんの抱っこって同じ重量物を持ち上げるより()()を使うって言うのかな。

 要するにただの物であれば雑に持ち上げても構わないけど、赤ちゃんって繊細な者だから抱えるにも色々バランスを取ってあげたりとか色々するんだよね。だからものすごく腕が疲れるんだよ。


『あらあら、モレッドちゃんはまだまだ平気でしたよ?寧ろ「まだ私が抱っこしてたいのにぃ( ・᷄ὢ・᷅)」と言う位には。』

「ぐぬぬ...おのれモレッドねぇね...こんな所でマウントを取ってくるとは!!」


 確かに...獣人種(性格には違うけど)の成長率の速さで誤魔化してはいるけれどアタシもまだ1歳になったばっかりだったよね、身体年齢は人間換算で7歳位だしそこまできにするものでは無いしほんとに...濃密過ぎるほどの生活だから達観してる部分はある。


 でもそれがそのまま人生経験に繋がる訳じゃなくて、シランみたいに赤ちゃんを抱くって言う経験はほんとに初めてなんだ。だから仕方ない部分はあるのかも?だからってモレッドねぇねに負けたってのはなんか悔しい!!


「こうなったら...」

「う?( ॑꒳ ॑ )」

「グリトネア叔母ちゃん!!抱っこ紐貸して!!」

『キスハちゃん?何をする気ですか?』

「目いっぱいシランを楽しませて満足させてやる!!モレッドねぇね達にアタシが負けないくらいシランを楽しませることが出来ればシランも離れてくれるかも知れない!!」


 あくまでも希望的観測でしかないけど、シランはアタシ達それぞれに構ってもらった時間で判断してるんじゃないかなと思った。

 要するに今回シランが離れたがらない理由は「キスハお姉ちゃんがあたしに構ってくれないから離れたくない!!」だと思ったって訳。


「うーだぁっ!!\( •ω•´ )/」

「よーし!!シランも乗り気だね!?やってやるぞぉ!!」

『あまり首に負担をかけないようにしてくださいね?』


 ネコ科獣人の運動神経を舐めるなよシラン!!ド肝を抜くような動きで絶対満足させてやるんだから!!


 ...結果としてはシランは大満足して「にゃ〜...うぶぅ...( ˘ω˘ ) スヤァ…」となってくれた、しかも最後は自分からグリトネア叔母ちゃんの腕に収まりに行ってアタシにバイバイしながら眠ったよ。


 代わりと言ってはなんだけど、アタシは休んだ筈なのに更に疲労が蓄積した!!


『キスハちゃん...大丈夫そ?』

「_( _ *`ω、)_」


 出撃前に体力を使い果たしたアタシは次の試合...今日1日で準々決勝まで行くのに...勝ち上がれるか不安で仕方ないよ...


 ヴィヴィアンねぇねの言葉に返事をする余裕すらなく、だらしない格好で格納庫の床でへばるアタシなのでした。

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