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風の無いところに波は立たぬ

 〜キスハ視点〜


 油断していたとは思わない、でもとと様が「キスハぁ!!」って叫んであたしを(機体を)突き飛ばした次の瞬間...


「あっ...」


 大気中の空気に放電しながら抜けていった高出力ビームがとと様の1式を貫いて、ふと見えたコックピットブロックからは右上半身をまるっと抉り取られたとと様が見えて...


「あぁああぁぁぁあAaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!?」


 目の前が真っ赤に染る、アタシのせい...アタシのせいでとと様が...とと様が!!


「キ...スハ...!!」


 真っ赤に染まった視界の中、途切れ途切れのとと様の声が聞こえる。

 ...何を言ってるのか分からない、周囲の音は聞こえてるはずなのに...頭が理解してくれない。勝手に身体が動く感じ、周りを見渡す余裕すらあるのに...考えるよりも先に勝手に身体が...手が...とと様を撃った敵を()()って叫んでる。


「キスハっ!!」

「っ!?」


 今のは!?声じゃない!?染まった視界が急にクリアになっていく、ハウンドでいつの間にか最大戦速でモレッドねぇね達の所から離れて敵に向かってたみたい。

 慌ててとと様の1式に向かう、即死しててもおかしくない...なのにとと様の今の声は間違いなく()()()だ。死を目前にして生存本能の最大発揮とでも言うのか、アタシの意識を一瞬で正常に戻すレベルの強大な力をもって叩きつけてきた。


「モロノエ叔母ちゃん!!とと様が!!」

『既にグィネヴィアに連絡は付いています!!今...来ました!!』

「キャスパリーグ!?」


 上空に待機しているはずのアルビオンからこの僅か数十秒の間にカッ飛んできたのはアタシのキャスパリーグ、でもまぁ確かに大気圏内でもぶっちぎりの速度を出せる且つ慣性中和機構が最も強いから急患を拾うにはもってこいなのかも?


『お父様!!あぁっ!!なんということっ!!』


 グィネヴィアねぇねがキャスパリーグから飛び降りてむき出しになったとと様に応急処置を始める、とと様は右上半身を一瞬で失ってるからショック死までは行かない(寧ろぶっ飛びすぎてて逆に冷静)から意識はある。でもさすがに顔は青くなってるし肺も無くなってるから脳に酸素が足りなくなって朦朧とし始めてる...でも...


『キスハ聞こえてるな?』

『聞こえてるよ、あんまり無理しないで。死にかけてるんだからね!!』


 とと様は思念波で私に語りかけてくれてる、並大抵の精神力じゃない。自覚した瞬間から尋常ではない痛みも襲ってきてるはずなのに、発狂すらせずに意識を保ってる。

 グィネヴィアねぇねが止血剤や鎮痛剤の投与と同時に身体をキャスパリーグに搬送してるけど、その間一切私から目をそらさないし。


『良いか?この大会恐らく俺達を全力で潰しにかかる勢力がある。何処かなんてのは分からねぇが間違いは無い、そして...悪いが俺はもう大会には出場出来ねぇなぁ。多分モレッド・エルピダ・シイナ・カンラもだろう、だからお前がカギだ。次回からはハウンドでは無くてキャスパリーグを使え、申請自体は通ってるんだ。度肝を抜いてやれ!!』

『キャスパリーグ離陸します!!ヴィヴィアン!!』

「とと様!!頑張るからね!!アタシ!!」


 キャスパリーグのコックピットハッチが閉まる寸前、とと様が残った左手でグッドサインを送ってくれたのが見えた。

 とと様から任された...それだけでアタシは奮起出来る!!モレッドねぇねでもかか様でも無い!!アタシに任されたんだから!!


 キャスパリーグが垂直上昇、大会運営委員の方からも全体通信が入り「あの機体に攻撃は禁止!!急患の搬送機体!!もし攻撃をすれば抗議所では済まない!!」とのお達しが入った。


「お父さんを殺ったのは...どこのどいつだぁ!!」

「殺す...殺してやるっ!!」

「「絶対に逃がさない...っ!!」」


 っとそれよりもねぇねや妹達の方が重症だったね...


「ねぇね・エルピダ・シイナ・カンラ殺しちゃダメだよ!!」

「「「「うるさいっ!!殺るって事は殺られる覚悟があるって事だっ!!」」」」


 ダメだぁ...血の気が多い訳じゃないけどやっぱりアタシを含めて家族みんなとと様大好き過ぎだからいざこうなっちゃうと狂戦士になっちゃうよねぇ...ついさっきのアタシとおんなじ。でも声もこの状態だととと様位しか届かないから...()()()使()してもいいよね?


「ごめんねみんな...とと様から()()()()のはアタシだから!!」

「「「「なぁっ!?」」」」


 纏まってくれてたのはラッキー、ハウンドって爪部カッターを搭載できるほどの関節強度が無いから腕部に折りたたみ式大型単分子カッターを搭載してる。それで3機の四肢とスラスターを破壊した。


「あぁ〜っとぉ!!どういう事だァ!?指揮官機が撃墜されたと思ったら友軍機を撃墜判定!!身内に裏切り者がいたということかぁ!?」


 解説うるさいよ...裏切りなんかじゃないし!!寧ろ無実の人にすら牙を剥く狂獣を先んじて制圧したと言って欲しいね!!叔母ちゃん達だったらそれも出来ないからアタシがやるしかないんだし...なんで汚れ役私がやるんだろ( ´・ω・`)

 まぁとと様が元気になったら慰めてもらうからいいや!!


「叔母ちゃん一気に制圧するよ!!ねぇね達はアルビオンから回収艇が来るまで護衛の為に2機残して!!火事場泥棒が来ないとも限らないからね!!」

『キスハちゃん?』

「グリテン叔母ちゃんは私と!!平らげるよ!!」


 同意を取る前に私は叔母ちゃん達に指示を飛ばして行動を開始する...なんで叔母ちゃん達行動が遅いんだろ?って思ったらそれも当然か、思念波はアタシととと様でしか繋がってなかったしそもそも人工知能には思念波が通らない。アタシはてっきりみんなにも伝わってるって思ったのが失敗だったってことだね、まぁそれは後で!!この試合が終わったら説明するから!!


 燃費はすこぶる悪くなるけど出力が増大するアフターバーナーを全開!!1番近くにいた敵に一気に近付く!!


『キスハちゃん!!先陣は私が!!』

「ありがと!!グリテン叔母ちゃん!!」


 シールドブースター3基を装備したグリテン叔母ちゃんの1式は総推力でハウンドを上回る、シールドを持ってる分防御力も高いしハウンド単機で突っ込むより安定性は格段に増す!!


「おぉりゃぁ!!」


 減速一切無しで敵機の主機を切り抜くっ!!誘爆の危険も無いから安心!!単分子カッターは熱を放出してないから推進剤に引火する可能性も皆無だしね、唯一可能性があるとすれば主機である熱核融合炉がオーバーロードして爆発する可能性だけど...そこまで面倒みきれない!!生き残ることがまず第1の傭兵はその辺のフェイルセーフにも相当気を使ってるからね!!


 グリトー叔母ちゃんとティテン叔母ちゃんが後方から追い付いて群がる敵機を薙ぎ払いながら前進してるし、アタシとグリテン叔母ちゃんはとにかく敵の撹乱と指揮官機クラスを撃破するのを優先でいいかな?傭兵にとっての指揮官機は指揮官機であって指揮官機でないようなもんだからあまり意味は無いけど、足並みを揃わせないことは出来るから無駄じゃない。


 「あははっ!!とと様に任されたんだからお前達なんかに負けるものかぁっ!!」

 「こいつっ...ガキがァ!!」


 立ち塞がるならば容赦はしない!!アタシの爪の前にひれ伏せぇ!!

モル「あの人という人は...( ; ; )」


モー「今回はキスハちゃんに全権を任せたのですね...まぁ野生下であれば最も気配の察知能力と捕食者である嗅覚は侮れませんから、この状況であれば待ち型であるエルピダちゃんより適性は高い?キスハちゃんはアレで指揮能力もありますからね(´-ω-)」

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