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 〜ローゼン・ツヴォルフ・プリンツ・ザイデンシュトラーセ視点~


「お兄様?次はこちらに行きましょう!!」

「ちょっ!?」


ふふふっ!!楽しいです!!想い人であるカケル様と、行き当たりばったりのお出かけがこんなにも楽しいものだとは思いもしませんでした!!最初に入ったお店ではカケル様に店員が「幼女趣味の変態」を見る目を向けたので私もムカッと来てしまいましたのですぐ出ましたけれど、それでもカケル様は困った顔をしつつも何一つ不満を見せることなく私の行きたいところ・見てみたいもの・食べてみたいものに付き合ってくださいます。


気が付けば結構な時間が経っていたようで、すでに時間は日が傾き始めている頃。夕暮れ時になっているではありませんか。いつもの王城で生活しているときは一日がとても長く、少しでも油断しているとお母様やシュヴァイゲンの顔がちらついてしまい涙をこぼしていたというのに…何故楽しい時間と言うのはあっという間に過ぎてしまうのでしょうか。


カケル様の手を引いて、この日最後に向かうと決めていたお店に入ることにします。

入ったお店は何の変哲もない、こじんまりとしていながらも風情を感じさせる軽食喫茶店。お姉様と別れ際に『お父さんは高級ホテルのコース料理とかよりはこっちの方が好みだし、雰囲気的にもおすすめだよ?』と言われましたので選んでみました(端末でお店の一覧などを見せていただいて、その中からですよ!!)。


「いい雰囲気ですね。」

「あれ?手を引いて入ったもんだから知ってるのかと思ったけど…」

「いいえ?場所だけは知っていましたが内装や雰囲気までは知りませんでしたので、あっそこのボックス席にしましょう?」

「そうしますかね、じゃあお先にどうぞ?」


カケル様のエスコートに従って、店の壁側...つまり不意に入口から暴漢が入ってきた際最も安全な位置に案内してくださるのは私が王族だからでしょうか?それとも女性として扱ってくださっているからでしょうか?特に意識した様子は無いので女性として扱って下さっているということでいいのでしょう。日頃からモレッドお姉様達にもそうしていらっしゃるのでしょうね。


レトロな内装の店内は落ち着いた雰囲気で、穏やかな音楽が流れついほっとしてしまいそう。カケル様は優しげに微笑んで私にお店のメニュー表を見せてくださいます。


「シセは何にする?俺にオススメなんて聞かないでくれよ?初めて来た店なんだからな。」

「ふふふっ勿論知ってますよ、そうですね...このガンボと言う物にします。飲み物はハーブティーを。」

「了解だ、じゃあ俺はそうだなぁ...」


少し思案してからテーブルに備え付けられたベル(古典的ですね...)を鳴らすと、チーン...と子気味良い音がなり店主の方がやって来ました。

「ガンボとハーブティー、それとクラムチャウダーにコーヒーで。」スラスラと注文を行い端末で決済を済ませてしまいました。スマートに諸々を済ませられるのも素敵な所ですね。


「で、お楽しみいただけましたかね?殿下。」

「...もうシセとは呼んでくださらないのですか?」

「そりゃあもうそろそろご帰宅のお時間です、何時までもそんな呼び方は出来ないでしょう。」


優しくそう言って下さいますが、今の私にそれはとても辛いものなのです...そんなつもりは無いと分かってはいても、まるで突き放されるかのようで...また涙が零れてしまいそう。


「カケル様...お話したいことがあります...」

「...聞きましょうか。」


私の覚悟...それを感じとってくださったカケル様は微笑んでいた顔を引き締め、まるで戦場に向かう時のような顔に変わりました。ここから先、私はもう引くことは出来ない。何があっても逃げはしません、たとえ最悪の結果が待っていようとも...


「わたくしは...わたくしは!!カケル様の事を好いております、少女のように騎士様にときめくものではありません。1人の男性として、私が1人の女として。貴方様に私の持つ全てを捧げたいと思う恋慕でございます。私は...カケル様の事を...愛しているのです...貴方様以外には...この身を捧げたくなど無いのです...」

「...」


カケル様は何も言わず、私の次の言葉を待っているかのようでした。多少...いえ、かなり想定外だと思われていたのかもしれません。私がこのような思いを口にするとは思いもしなかったのでしょう。

ですが私の声を遮ること無く聞きに徹してくれているのはカケル様の優しさか、それともこれから私の言う言葉に対して何を投げかけるのか考えていらっしゃるのかでしょうね。


「私は王族の末席でありました、本来お父様がご存命であれば何処かの国に嫁ぐかそれとも国内の貴族とのつながりを強化する為に輿入れするのが運命でありましたでしょう。ですがそれは名を口に出すこともおぞましい愚兄によって立ち消え、お姉様から「シュトの人生はシュトが決めるのじゃぞ。」と仰ってくださいました。」

「だから俺に貰ってもらいたいと?あぁ...貰ってもらいたいなんて上から目線で言うことでは無いですね、でも言ってしまえばそういうことだ。殿下は王城でいつか現れるかもしれない本当の王子様と結ばれるのを選ぶのではなく、1歩間違えてしまえば死と言う傭兵になりたいと?亡き第4妃様とシュヴァイゲン殿に俺は頼まれてるんですよ「シュトをどうかお守りください」とね。その言葉通りにするのならば殿下をこのままアルビオンに入れると言うのは論外だ、危険すぎる。それに俺はそもそも妻帯者ですよ?いくら傭兵が一夫多妻が多いとは言え、仮にも王族が第2夫人となるなんて外聞が悪すぎやしませんか?」

「カケル様の仰ることは私もわかっております、まず私がアルビオンの一員になるという事はそのまま傭兵の一員となると言うこと。実戦経験もほとんどなく、その経験も殆どがカインドの性能に助けられ私の実力も何も伴っていないこと。パイロット以外の役目を与えられたとしても、それは既にモロノエ様達やヴィヴィアンお姉様達が担っている為に私は後からは不要な事。私などカケル様からすれば正直に申し上げれば邪魔な存在でしか無いでしょう。」

「そこまで言っては無いんですけどねぇ...」

「いいえ、私もわかっておりますゆえはっきりと申し上げます。今でなくとも、例え私が将来優秀なパイロットになったとてカケル様は私のことを迎え入れてはくれないのだと。でも...だからこそ私は今言うのです!!」


声が大きくなる...カケル様からの拒絶では無く、お母様やシュヴァイゲンの言葉を律儀に守ってくださっていることも分かってはいても...私は今でなければならないのです。このタイミングを逃せば、もう二度とこのような場面は訪れないと分かっているから。


「私の心に決めた方はただ1人、カケル様ただひとりなのです...誰にもこの心を嘘だとは言わせない。否定などさせてたまるものですか!!例えそれがカケル様であっても!!私が邪魔ならばはっきり仰ってくれればそれでよろしい!!でも、私の言った言葉まで否定するのはやめて頂きたい!!これは私の紛うことなき本心でありカケル様の元へ馳せ参じることが出来ないと言うのであれば、私は生涯純潔を保ったままお姉様の横に立ち国の繁栄のため尽くすと誓いましょう。私は...カケル様の...カケル様の妻となれないのであれば、女としての人生はなかったものとして諦めます。ただ貴方様を想う1人の小娘として生涯を終えると誓いましょう。」

「...」


カケル様にとって呪いともなりかねないような言葉を吐き、私は次にカケル様が紡ぐ言葉に怯え俯くのでした。

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