ようやく始まるぞい
「大変長らくお待たせいたしました!!これより、第1964回全宇宙傭兵親善試合大会の開幕を宣言致します!!」
会場全体が歓声と熱気に包まれる、陛下と大統領の会談から早1週間。ようやっと全宇宙からの代表が集まり開幕が宣言されたというところだ、会場には総勢1000万を超える来賓と来客の数々。
総数10万を数えるAMRS、そしてそれを駆るパイロットたちがフィールドに並ぶ。言っちゃなんだが...壮観だな!!代表だけでなくその傘下も含め12機までで1国の代表とされるので(会談の後もう1回ルールを確認したらそうなってた!!危ねぇ!!)俺とモレッド達の5機に加え、モロノエ達から7機分急遽人を出してもらった(大会に出られる人員決定はジャンケンでした)のだ。
各国の代表達は国を象徴する国紋を胸に付けそれぞれが並んで居るぞ、ローゼン・エーデルシュタインの場合は白薔薇に...アルェ!?ギャラハッド!?ギャラハッドナンデ!?マジでびっくり。実はこの国紋陛下には「当日着けるまでお楽しみじゃ」と言われていたので実際のデザインを確認する迄俺達は何も知らないのだ、と言うか由緒正しき国紋を軽々しく替えていいものなのか...と思って後々調査したら寧ろ国民は疎か軍の方(俺が訓練したヤツら中心だけど)からも「素晴らしきデザインかと!!」と太鼓判を押されていたらしい。
元は白薔薇に歴代国王の専用機がデザインされていたとか、まぁ国王が変わる度にちょくちょく変わっていたのなら変化にもおおらかになるのだろうけど...これっていいのかなぁ?ちなみに勝手にギャラハッドを使われたってことで俺からなにかアクションを起こす気は無いぞ、著作権とかそう言うの傭兵にはあってないようなもんだしな。
「お父さん、開会式長いよ〜。」
「眠くなるぅ...」
「足が棒になるとはこういうことを言うのです?」
モレッド・キスハ・エルピダの愚痴、まぁ気持ちはわからんでもない。小中高生が全校集会で聞くクソ長い校長の話を聞かせれているみたいなもんだからな、ぶっちゃけ俺も話半分にしか聞いてないし。
面倒だなぁ…長ったらしくて中身のない会話聞き続けるのは得意じゃなくてねぇ。
「( ˘ω˘)スヤァ」
「シイナ寝ちゃだめだよ。」
『みんな暇そうですね、もう少しの辛抱ですよ。』
シイナが流石に眠っちゃったか、まぁ仕方ないよな。横でシイナをゆすって起こそうそしているカンラだって眠そうな目をこすりながら頑張っているんだから、まぁそれをモロノエがフォローしてあげているんだけどな。
そしてそんなウチの光景が気に食わなさそうなやつらも当然いるわけで…
ちょっと聞き耳を立ててみれば「ちび共の運動会と勘違いしてんのか?」だの「キレイ所ばっかり集めやがって…男所帯に対する嫌味かよ」だのまぁ散々言ってくれますわ、見てろよぼんくら共が…その無駄にいきり散らかした顔が屈辱にまみれるのが今から楽しみだぜったくよぉ。
「お前らの顔が歪むのを拝むのが今から楽しみだぜ...」
『ご主人様...』
思わず声に出てしまった言葉に対して、すぐ横に陣取っていたグリテンが諭すように小声で俺に呟く。ふとグリテンを見てみれば彼女もまた憤怒を表情の奥底に隠してはいたようだ、成程どうしてウチの身内は家内が貶されるとここまで血の気が多くなってしまうのか...多分俺のせいなんだろうけどな。
「それでは改めて全宇宙傭兵親善試合大会開幕です!!」
司会が宣言したその瞬間、改めて会場全体が沸き立った。戦場とはまた違う不思議な感覚だな、良くも悪くも傭兵ってのは仕事上どうしても血にまみれてしまう。それゆえに稼ぎこそ普通に生活する一般成人よりも高くはなるものの、1歩間違えれば死が待ち構えているという事。稼ぎが黒字になるまでに長い間赤字に苦しみがちになるということから新規の傭兵はあまり増えないものだ、だがこう言った一般人向けにエンターテインメント化されたものであれば楽しめるものになるのかと改めて思い知ったところだ。
前にモレッドは曲技飛行のイベントに出演していたが、その時もこんな感覚を味わっていたのだろうか?ゲーム時代はこういった大会は完全にPvPだったし、観客はあくまでゲーム内のエキストラだったので今みたいに血の通った存在ではなかったから耳に聞こえる歓声の違いが新しいんだ。
「そう言えば、傭兵の対戦には賭けがあったな...俺達のオッズはどうなってる?」
横にいたグリテンに質問を投げかけると直ぐに調査を開始したのだろう、一瞬虚空を見つめるようにした後俺の方に向き直り報告してくれる。
『現状私達ローゼン・エーデルシュタインのオッズは29.75倍の様ですね。そもそもの傭兵としての活躍暦があまりにも怪しいという事と、参加表明している機体が第3世代機だと言う所から来ているみたいですよ?』
「なかなか期待されてないってことじゃあないか、なら俺たちに賭けた連中は大儲けって事だな。」
『既にハーレイ陛下がお小遣いとして運用できるメルを1点賭け全ツッパしたようですね、シックザールさんからお説教が入っているようです。負けるとは全く思ってはいないそうですが「お小遣いを全て使うなんて!!」と言う叱責の様です。』
「ははは!!陛下も思い切りがよすぎるな。」
まぁそれだけ俺達のことを信じてくれているということだ、であればそれに答えない訳には行かないだろう。多分シュト殿下も全額とは行かない迄も俺に賭けてんだろうしな?その2人ぶんが入ってるからこその俺のオッズ倍率なんだろうし、そうでなければもっと低くなっていてもおかしくは無いだろう。参戦した傭兵達の機体は全て今回の大会プログラムに乗っかってるしな、びっくりした事に俺達以外の傭兵ほぼ全てが第4世代機に乗っていると言うね。
そりゃロートル機は最新機には勝てないって言うのが当たり前の世の中においてこの倍率になりますわと言ったところ、参戦しているということは少なくともおろしたてという訳ではなくそれなりに場数も経験しているだろうし持て余すということもないだろう。
あぁ忘れてた、モレッド達以外の人工知能組の機体は全部1式だぞ。さらに言えばほんの少しだがバージョンアップ版だ、表記するならば俺の1式がVer.1.0とすれば人工知能組の1式はVer1.0.1って所か?
変わった所は機体の反応速度とスラスターの燃費くらい、反応速度を0.単位で遅くしてより操作しやすくしたことと推力をほんの僅かながら落として燃費が3%向上したって感じだ。
コレはハーレイ陛下との演習からのフィードバックを受けてマーリン・ティテン・ティトンが改修を行った、結果人間では早すぎて「機体の方が先に動く」という感触を人工知能であれば「タイムラグ無しに操作できる」というレベルに押さえ込んだのだ。
これはすごく重要なことだぞ?人間の身体だって脳から指示を受けて腕を動かすって行動を起こすのには0.のラグが有る、それが無くなるってんだから破格の性能だ。
「では!!早速親善試合大会の行程第1目!!広大なフィールドを使ったバトルロイヤル方式の勝ち抜き戦を開始しましょう!!」
まぁこんだけの数がいれば一気に数を減らすって意味でもそう言うのは嫌いじゃない、弱い奴は当然淘汰されるし強い奴も腕は下でも数を合わせれば喰われる。悪くないよなぁ?
「ルールはシンプル、各国の代表達を全100組に分けそれぞれのグループには100チームが入ります!!上位10国の代表が第2戦に出場資格を得るというシンプルなものとなっております!!尚、一度に全てのグループが戦闘を行うことは出来ないため1日に10グループ。第1回戦全行程終了まで10日を計画しております!!皆様、傭兵達の熱き戦いを期待しましょう!!」
ここでまた観客達の熱い歓声が舞い起こる、さぁて...引っ掻き回すとしましょうか!!
ヴィ「基本的に出番の無い傭兵は演習宙域で訓練が出来るようになってるよ!!( 'ω')」
グィ「被弾による負傷があった場合も救護チームによる保護もありますしね(´-ω-)」
モゴ「ルール上殺傷レベルの攻撃は厳禁、殺傷してしまった場合は強制退場と逮捕だね\( •ω•´ )/」
オヴ「暗黙の了解になってるのが傭兵間の勝ち負けによる賭け事だね( ´・ω・`)」
マー「要するに負けたら何もかも奪われるって賭け事が横行しちゃってるんだよねぇ(。´-д-)」




