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悪だくみは大抵バレる

「それじゃ、行ってくる。」

『ご武運を、むくれているモレッド達には言い聞かせておきますので。』

「ははは、頼む。」

『カタパルト1番、リニアボルテージ臨界!!1式発進どうぞ!!』

「OK、1式ソラ・カケル出撃()るぞ!!」


 演習宙域に間もなく到達するラグマーシュヴァイン防衛省長官を出迎えるために俺はアルビオンから出た、奴さんが事を起こすならば俺たちが占有させてもらっている演習区域内で何かしらの問題を起こす方が都合がいいからだ。そんなことさせるわけないだろうが!!というわけで俺が出張ったわけだな。わざわざこんなことにエクティスやモレッド達を使うのもばからしいってことで、実践になれば初戦闘になる1式の運用データ採取も兼ねてやってきたというわけだ。


 アルビオンからくる情報では今のところ宙域内に不審な反応は無し、宙域内に反応自体は無いけどそれはあくまで()()()にはないということだ。と言う事は外部に反応があるってことだ、そこから何をしてくるかなんてことは簡単に想像がつく。AMRSによる強襲だとしても、艦砲による砲撃だとしてもなんとかしてみせるさ。


 宙域最外縁の連絡艇運行ルート上で待機すること数分、連絡艇の誘導灯をカメラがとらえた所で連絡艇に急接近。「何者だっ!!」と言う声に「傭兵ソラ・カケル、連絡艇に乗船されている防衛省長官のエスコートとして参りました。」と親切丁寧に名乗りを上げれば、舌打ちの様なものが一瞬聞こえたが「感謝する」とだけ返答が返ってきたのでまぁOKだろう。

 これで相手の悪だくみ第1段は妨害成功だろうな、舌打ちをしていたという事は演習宙域内で何かしらの問題を起こす予定だったという事で間違いはなかったってところだな。


 通信回線の傍受まではしていないからわからないが、アルビオンのセンサーは何か拾っているらしい。少なくとも今すぐに何かをしでかすという事はしないらしい。撤退する動きを見せているみたいだ。

 所属は…無所属の傭兵艦だったらしいが、極秘裏に依頼を出したんだろう。そういった裏工作を行わせやすい切り捨てやすい無名だがそれなりに腕の立つ傭兵をな。


 ってか、たぶんだけどここまで長官の身を危険にさらせるってことは本人じゃない可能性も出てくるよなぁ?影武者?特殊整形手術を用いれば本人と外見は全く同じってところまで持っていけるからもしかしたらそう言う事なのかもしれんな。影武者にされた人は哀れだが…そうかいそうかい、そこまで陛下をコケにしてくれるのかい。

 軍属ではないけれども俺は前にも言ったな、ハーレイ陛下とシュトラーセ殿下は親戚の娘のように大切に思っていると、それをここまで馬鹿にしてくれたんだ…覚悟はできてんだろうなぁ。

 やるのならば徹底的に、一切の言い訳も出来ないように潰してやるとも。


「では、参りましょうか。」

「うむ、護衛(エスコート)を頼む。」


 尊大にふるまってはいても分かるぞ、自身の講じた策が潰されたことでフラストレーションがたまっていることくらいな。


 ----------------------------------------------------------------------------------


「これが傭兵艦だというのかっ!!」


 アルビオンの実物を肉眼で確認したラグマーシュヴァイン連絡艇に乗り込んだ各官僚が漏らすその言葉に多層溜飲は出来る、先に訪れた連絡艇はそもそも肉眼でどれだけデカいのかを確認できるほど近くまで寄ることすらできなかったからなぁ。

 今のところアルビオンをしっかりと観察できているのは演習宙域を間借りさせてもらった傭兵とそれを格納している各国艦艇くらいだ、つまりラグマーシュヴァインはこういったところでも出遅れているという事だな。最初っからちゃんとした待遇をしてればそんなことにはならなかったというのにね。


「では、ガイドビーコンに従ってください。私はこれで。」

「エスコートに感謝する、傭兵ソラ。」


 ガイドビーコンが連絡艇を誘導し始めたことを確認し、俺もアルビオンに着艦する。この後すぐに着替えて陛下と長官(恐らく影武者)との対談にも参加しないといけないってんだから大変だよなぁ、まぁそれくらいはやりますとも。


『お疲れお父さん、問題はなかったみたいだね?』

「あぁ、それよりもこの後の作業も頼むな?」

『任せて~、歓待の方はグィネヴィアと叔母さん達が。連絡艇の調査は流石に内部にまでは入れないから外部からのスキャンでマーリンとオヴェロンがやってる。私とモルゴースは接近する反応に対して警戒するからね。』

「流石だ。」


 配置や動きを報告してくれるヴィヴィアンの頭をヘルメット越しではある物の撫でつけてそのまま更衣室に向かう、汗をかいてはいない物のエチケットと言うのは大切だ。素早くシャワーを浴びて十分に乾燥させた時間おおよそ20分、そこまで時間は掛けなくとも待たせ過ぎるのも失礼という物だからね。

 さっと着替えて応接室に向かうとしようか。


 応接室の前に着き少し内部の様子を探っては見る物の、ものすごく静かであるという事だけは確かで「あれ?ちゃんとたどり着いてるよね?」と不安になり思わず声に出てしまうほどではあった。

 意を決して応接室に入ると、まぁなんと言うか…土下座ぁ…してますね。勿論長官側がだけどね。


「なにごと?」応接室に入った俺が思わず声に出してしまうと、ようやく来たかと言わんばかりに陛下が俺に手を振り満面の笑みを送ってくれる。一体なんぞやこのカオス極まる状況は…


「ようやっと来たなカケルよ、この無作法ものは気にするでないぞ。出会い頭に早々余とシュトに対して無礼を働いたでな、少々痛い目を見てもらっていたところよ。」

「無礼と言いますと?」

「なに、簡単な事よ。余とシュトを「自国の掌握すら出来ぬ小娘共に下げる頭など毛頭ない!!こちらは貴様らの不愉快な行動の生で不利益を被っているのだ、むしろ貴様らが頭を下げる存在であろうが!!」と怒鳴りながらこちらにつかみかかろうとしてきたでな?モルガン殿達に協力してもらい鎮圧したというところよ。むろんこれはすぐにラグマーシュヴァイン本国へ報告させてもらった、実際の映像と音声と共にな。既に周辺に滞在している参加各国にも映像は流れてしまっておる所じゃろうて…さて長官よ、何か申し開きはあるかの?あまりふざけたことは言わんほうがいい。このアルビオン内で起こることはすべて記録・放送されている物と心得よ、このような格式高い国際大会の開催国である貴国の防衛所長官である貴様がそれに泥を塗るなどこれ以上できる物ではあるまい?」


 あぁ…そう言う方向でこっちに泥を投げつけてやろうとしてたってわけね。1つ目の策は見事に俺の行動で封じられた、じゃあ次は直接なんとかしてやろうって考えたんだろうけれどそれも無理だったと。と言うかバカだろこいつ、仮にも国のトップが乗船している傭兵艦に居るクルーが白兵戦が出来ねぇ分けねぇだろうが。女だと思って侮ったのかは知らないけど滑稽だぞもはや、それに傭兵艦ってのは依頼主からの不当な取引から身を護る為の手段を2重3重に張り巡らせてるもんだ。傭兵漬かってるんだったらそれくらいわかっておけよな。


『陛下、これ以上ラグマーシュヴァインの評価を下げてしまえば陛下の評判も落ちるという物。ここは一度御退艦いただき、別日にて謝罪を受けるという方がよろしいのではないでしょうか?』

「ふむ…モルガン殿の言う事も一理あるかの?では長官殿、御帰還成されるがよい。身共はローゼン・エーデルシュタイン女王に謝罪を申し立てる事さえできませんでしたと、むしろより怒りを買ってしまったとな。」


 髪を右手でふわりと掻き上げて無礼者を玉座から見下すような尊大な態度を見せながら、防衛省長官に対して告げた陛下に長官も何かしら言い返そうとはしたもののそれを許されるような状況ではなく。これ以上なにか行動を起こそうとすれば更に墓穴を深く掘ってしまうという事に気が付いたのだろう、忌々し気な表情を隠しもせずにらみつけるように俺たちを見た後同じく拘束されていた部下を引き連れて逃げかえるように連絡艇に戻っていった。


「あぁそうそう、忘れるところじゃったが…」

「まだ何か?」


 陛下が思い出したかのように上を見ながら言葉を紡ぎ、それに長官が確認の言葉を返す。


「おぬしらが乗ってきた連絡艇であるが、どうやら推進器に爆弾が取り付けられておった様でな?危険であると判断したこのアルビオンクルーが取り外してしまったのでな。それも伝えておかねばなるまいと思っただけじゃ、なに下心などない。せっかく余に形だけでしかなかったものではあるが謝罪に訪れた者達じゃ。帰りも無事に帰ってもらわねば無作法であろう?」


 見下すような姿勢からニヤァと口元をゆがませる陛下のその言葉に、全ての試みがばれたと思ったであろう長官とその部下たちの表情はすぐれない。

 既にこのやりとりは周辺に滞在していた国有艦や傭兵艦には放送されてしまっており、それらを止めるすべは持たずラグマーシュヴァインの評価だけがどんどんと落ちてしまっている中彼らが出来るのは致命傷に近い傷を少しでもこれ以上広げないようにすることだけであった。


 トボトボという言葉が似あう後姿を見送って、連絡艇が出発したのを確認した後陛下とその傍に付き従っていた全員の表情が『「ザマァ見やがれ」』となっているのを見て俺は苦笑するしかなかった。

シッ「モルガン様達に役目を完全に奪われ...いえ、言い訳になりますね。役目を代替して頂いておりますシュヴァイゲンでございます。此度の問題は分かりやすく言うならば国の面子をかけた物でございますね、特に相手側であるラグマーシュヴァインはローゼン・エーデルシュタインよりも国力が大きい為全宇宙に対してかなり影響力が強く謝罪ひとつにしてもかなり煩雑な手順をとって行う物なのです。今回の1件はその手順を放り出してでも素早く行うべきものなのですが...頭を下げられないのはプライドのせいなのか、それとも自身の行いが悪いと思っていないのか。全く、立場が上になると自分が頂点にたったと勘違いするのはどこも同じなのですね。」


ハレ「ふむシックザールよ、余にも同じことを思っておったのかの?I˙꒳˙)」


シヴ「陛下!?Σ(゜ロ゜;)」

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