幼女の戦いは時に大人よりも苛烈って話
〜エルピダ視点〜
「むぅ…いちいち攻撃がうっとおしいのですっ。」
父様達が侵入して破壊工作をしている中、私がやってるのは未だ火の入らないAMRSの全機破壊なのです。
破片1つでも技術の盗用を防ぐ為に可能な限り塵も残さず破壊しなきゃ行けないというのは確かにキスハ姉様のキャスパリーグやモレッド姉様のヴァレットでは厳しいと言わざるを得ないのです、何せ所詮は第二・第三世代機とはいえ装甲を蒸発させる熱量を持つビーム兵装を基本的に2機とも搭載していないのですから。
こういった事も加味した上で父様は私とアトラク=ナクアを選んでくれたのなら光栄なのですよ!!元々は父様のギャラハッドに対する牽制と当たれば必殺クラスの出力を持たせた搭載火器の火力は文字通り塵も残さないレベルまでAMRSの装甲を蒸発させているのですから。
「パイロット訓練はまさか実機のみの想定だったのです?」
他の惑星やコロニーであれば先ずはシミュレーターで機体特性やクセを学ぶことから始めるものなのです、でもそれが無さそうと言うかまだ破壊出来ていなかったAMRSに乗り込んで起動しようとしているパイロットも居るのです。ですが起動すらまともにこなせてないのです、分かりやすく言うなら戦闘機の起動シークエンスと似たようなものなのですがそれも出来てないということなのですがよ。
「マニュアル通りな筈なのに!!なぜ起動しない!!不良品を掴まされたのか!?」
「くそっ!!主機の回転が安定しない!?何故だ!!」
「サブからの動力が通っていない!?動力回路は開いているだろうが!!このポンコツがァ!!」
まぁそもそもAMRSは軍用なのです、某アニメの少年の様にマニュアル片手に簡単に起動出来るような規格では無いので当然なのですが…それにしたって下手くそ過ぎるのです。
少なくとも私達に管理局から依頼があった時点で納品から1日は経過しているはずなのです、そこから私達の移動も含め最低は3日は経っているはずでその間起動練習すらしていなかったということなのです。
「マニュアル通りにやれば問題ない」と言うのは机上の空論なのですよ、実際に動かしてみないと分からないことの方が多いのです。同じ生産ライン、同じ工程を踏んだはずの小銃ですら個体差が産まれるのです。機体一機一機にもそういうものは出て当たり前なのです、アトラク=ナクアになった時の起動手順の変化には戸惑ったのも事実なのです。だからこそしっかりと慣らし運転をして、自分の手で行う手順は最適化しておかないとだめなのですよ。
「老兵だろうと新兵だろうと容赦はしないのです!!」
「やっ…やめろォ!!」
スピーカーになっていた敵兵の命乞いに躊躇など見せることは無いのです、躊躇えば殺られると言うのは嫌という程見てきたのです。起動に成功していようとしていまいと、私のやるべき事に変わりは無いのですから!!
ようやく起動に成功して抵抗しようとたどたどしい動きを見せ始めたAMRSもチラホラ見え始めてきたのです、でもそんな動きでは止められるものも止められるわけないのですよ。
その程度の動きであれば地球の技術力でも十分対処出来てしまうのです、幾ら技術レベルの高い別系統技術とは言え所詮は装甲の薄さをカバーはしきれないのです。
RHA換算でも精々180mm程度しか無いのです、流石に1撃で抜かれるなんてことは無いですが何度も被弾すれば流石に持たないのです。
まぁそんな話は置いておくのですよ、大事なのはまず技術を漏洩させないこと。ここで全て抹消する事なのです。
「動きのいいのは居ないのです、精々ターゲット演習の的程度なのですよ!!」
「クソがァ!!」
潰した機体の数は既に30を超えたのです、流石に別格納庫からも集結しだしてゾロゾロと増えつつありますがキツイとは思わないのです。超至近距離と言ってもいいこの距離で外すなんてことはありえない…むしろ取り回しに若干の不便を感じるレベルなのです。
なので使える武装は右腕ガトリング砲が殆ど、それでも充分過ぎるほどの火力と制圧力なので心配は不要。時折飛んでくる対戦車ロケット弾を放ってくる生身の人間も関係ない…やって来るならやられる覚悟があるって事なのですよね?
「消してあげるのですっ!!」
「うわっ!?」
今更の説明にはなるのですが、私達の言うビームとは「荷電粒子」の事なのです。詳細は知らないですが、物質に到達した荷電粒子は衝突した物質の内部構造を破壊し分子運動を過剰に促進する事で結合を破壊。分かりやすく言うのであれば蒸発させる事で破壊するのです。
これだけの高エネルギーを持ったビームは直撃せずとも、人間程度であればこの周囲数メートルに居るだけで甚大な被害を被り良くて重度の火傷悪ければ蒸発による即死に至るのです。
大量虐殺?それを言うならここに集まったこの人達に文句を言って欲しいのです、私達はあくまでもそう言った地球上で行われる可能性のある危険を未然に防ぐために活動しているのです。それに「人権侵害だ!!」「命を弄ぶな!!」「一方的な虐殺は国際法違反だ!!」なんて言われても…そもそも私達地球人じゃないのです。勿論地球上にいる限りそれらの法律に縛られることは致し方ないのですが、今回の件については超法規的措置なのです。
幾らでもという訳では無いですが、こういった事もやってのけないと平和なんてものは手に入らないのです。平和と言うのは何時だって薄い氷の上に置かれた物に過ぎないのですから。
「だからこの地球にはまだこんなものは必要ないのですよ!!」
「えぇい!!まだ終わらんぞぉ!!」
1機がむちゃくちゃな突貫をして、アトラク=ナクアにタックルを仕掛けてきたのです!?スラスターのオーバードライブクラスの衝撃には流石にこちらも用意をしておかないと耐えられないっ!!
「ドガシャァン!!」格納庫の床に押し倒されるような形でナクアは倒れ、馬乗りになった形の敵はそのままマニピュレーターでパウンドの様にひたすらに殴りかかってくるのです。
油断していた訳では…いや、確かにろくな動きも出来ないという訳なので油断していたのは確かなのです。こうも足元を捲られると言うのは腹の立つことなのですね…散々父様にやられてきた事なのに慢心していたのです!!
「サブアーム展開!!離れろっ!!」
「なっ!?こいつっ!!」
アトラク=ナクアは重砲撃戦仕様のAMRS、近接戦闘には対応していない…と見せかけて本当に必要最低限であれば対応自体はできるのです!!
サブアームは計2本、三又の指を搭載し中心部には低出力ですが速射の出来るビームガンがあるのです!!
特徴的な発射音を奏でながら敵の装甲を溶融させ、「不味い!?」と敵が判断し余裕が出来たところで一気に立ち上がる。射線上に父様やおば様他違いない事を確認し、左腕ビーム砲で一気にぶち抜く!!
「馬鹿なっ…」
放たれたビームの奔流は敵を貫いて尚エネルギーを失わず、隔壁を数メートル奥の岩盤層まで貫いてようやく止まりそれを見た敵…特に将校と思わしきクラスの人々に怯えが見え始めたのです。
遅い…遅すぎるのですよ、貴方達の始めようとしたことはこれと同じ暴力なのです。第2第3世代機では出力的に搭載出来ないビーム兵装も少し世代を進めて第4世代にもなればこれよりは低出力でも搭載されるのです、それを振り回して地球を支配下に置こうだなんて自分はまるで「これ以上の暴力など存在しないのだから安全だぜ!!」とイキがるガキ大将と同じなのです。
「さて…父様とおば様達は順調に進めてるです?弱いものいじめですがもっと暴れて敵を引きつけることにするのですよ!!」
まだまだ残ったAMRSも居ることです、全機破壊して生き残りも無いようにしないと行けないのです。出来る子は大変なのですっ( ˶`꒳´˶ )ムンッッ!
〜モルガンによるちょこっと勉強コーナー!!〜
モル「唐突に始まりましたこのコーナー、今回はエルピダのビーム=荷電粒子という説明について補足致します。先ず荷電粒子というものについて軽く説明致しますと、簡単に言えば+か-の電荷を帯びた粒子です。イオン化した原子もコレに該当します。荷電粒子が物質に衝突した際、電離若しくは励起と呼ばれる現象が発生し原子のエネルギーが高い若しくは低い状態に移行します。原子は安定した状態に戻ろうとする力が発生する為増大若しくは減少したエネルギーを取り戻そうとするか発散しようとします。それによって人体、今回の場合は隔壁等が蒸発したという訳ですね。」
⚠︎注意⚠︎
あくまでも作品内での設定なので現実の物理学とは解釈や考えが違うことがありますのでご了承ください!!