最後の壁はベルリンの壁よりも強固って話
〜モーガン視点〜
『さて...マーゾエちゃんの所から2人、ティテンちゃんの所から1人来ますね。モルガンちゃん、モロノエちゃん。準備は宜しくて?』
『無論ですマ...お母様...』
『いい加減ママ呼びで良いのでは?モルガンお姉様...』
『そんなっ!?娘達に示しがつかないではありませんかっ!!』
うふふ...モルガンちゃんは相変わらず変な所で堅苦しいですね〜、可愛いからいいのですがね?
折角ですので私と娘達との違いを教えておきましょう。
私はご主人様の言うゲームにおけるサポート機体として最初に配布される存在でした、分かりやすく言うならばポ〇モンで言う御三家みたいな物ですかね?まぁそれらに比べれば汎用性も無く拡張性も無い、初心者が中級者になった頃にはお払い箱になる様な存在でしか無かった訳ですが。
しかしご主人様は私を手放すことはしませんでした、モルガンちゃん達を建造した頃には中級者上位...具体的に言えばキャメロットを建造した後ですね。ランカーに名を連ね始めた時期ですから、最も長くご主人様と時間を過ごしてきたのが私ですね。
その頃には私も性能限界に到達しておりました、具体的には拡張が出来なくなっていたのです。私の拡張子は戦闘サポートにほぼ振り込まれていましたから、キャメロットの運営を行うには些か性能不足が否めなかったのです。
そこで私を不要の長物とすることは無く、拡張性を確保する為にわざわざ課金と言うリソースを使い最低限でも運営が出来るよう改良を施して下さったという訳です。
まぁ戦闘サポートという部分でもモロノエちゃん達の様には行きませんね、私が娘達に勝てるのは膨大な戦闘経験とご主人様との連携を前提とした指示無しでも望んだ様にビットを稼働させる事だけです。
それもギャラハッドが完成してから出番が無くなってしまったのですが...エクティスを引っ張り出してくれたおかげで私にも出番が回ってきたという訳ですね!!
と、私の説明もここまでの様です。お相手がいらっしゃったようですので、このお話はまた今度という事で。
「ここまで来られたのは3人だけか…」
「ここまでやられると言うのは想定外ですね…」
「先の任務では護衛が存在しなかったというのもありますが…それでも女性にここまで一方的にやられると言うのは我々も少しクる物がありますね。」
合流できたようで何より、元より私達と相対した時点でこの文明レベルで勝ち目などないと言うのは確定しているのですが…向かってくると言うのであれば容赦などしませんとも。
『お待ちしておりました、公安-0課の皆様。既に与えられた任務の失敗は確定しているようなもの。さりとて逃げの姿勢を一切見せない皆様の在り方には私共も敬意を払わせていただきます。』
合流された3人は最早ホルスターに下げた拳銃を抜くこともいとわないといった形で、音もなく傍にいた私に対して素早くそれらを抜き放ち私に向けられました。この反応速度は素晴らしい物ですね、流石に気配を察することが出来ないと言うのは減点でしょうがそもそも私は娘たちとは違い有機素材で作られたボディではなく完全なフルメタルボディに側だけを人間の肌に近づけたものを採用していますので呼吸すら不要。そんな存在の気配を察しろなど無理があるという物でしょうか。
まぁそれゆえに処理速度や反応速度で劣る娘たちに義体のパワーで圧倒できるのですが…手のかからない子たちにこのパワーを使うことは非常に稀なので些か持て余しているのですよ。
「見た目に騙されるなよ…もはや言う必要すらないだろうがな。」
『正解です、皆様の前に立つ私は人間の側を被っているだけの化け物だという事をご理解いただけているようで何よりです。』
「ふっ…化け物と他の隊員が言った際には「女性に化け物とは失礼な」と言っていたのだがな。」
『自分から言うのと他人から言われるのでは違う、と言う事です。』
「なるほどな…さて、無駄話もここまでにしておこうか。お相手は貴女一人かな?」
『残念ながらあと2人いますよ、1vs1でお相手致します。』
「心を折りに来るというわけか。」
『さて、それは其方の受け取り方次第と言った所でしょう。では...始めましょうか!!』
「ぬぅ!?」
一先ずは連携をさせない(私達自身も周りの邪魔が入ると困る)為に意識を奪わない程度に突き飛ばす、しっかりと受身は取れているようで何よりです。
流石にフルパワー迄は行使しませんが、それなりに出力は上げても良いですよね?
先ずは準備運動(必要ないですが)がてら徒手空拳による組手の様に動きましょう、カンフー映画のように相手の突きを逸らし・弾き・逃がす。掴みかかってこようとするならばその手を逆に絡め取ろうとカウンター、勿論それ等を簡単に成立させてはくれない辺り相手も訓練は欠かしていない様子。
ここでもどかしいのが『殺傷は厳禁』という事ですねぇ...リミッターこそかかっているものの、私の出力では当たり所によっては冗談抜きで殺傷してしまうので良い感じに当たってしまいそうな場合上手いこと衝撃を逃がさなくてはならないのです。
言うなれば発勁の逆...内部に浸透する衝撃では無く発散していく攻撃をしなければならない、そんなこと言われてしまえば最早『攻撃しない方がいい』迄あるのですが...それはそれで千日手のようになってしまうのでそれもできません。
はぁ...こうなると非力さの方が欲しくなりますねぇ...持つ物が抱く持たざる者への憧憬ですかねぇ、まぁお相手もそれなりにやり手ではある様なので?楽しみがいはあるのですが。
「...余裕そうだな...」
『うふっ...そう捉えられるのは貴方に余裕が無いからなのでは?』
「事実だろうにっ!!」
バックステップで私から距離をとったかと思うと拳銃を抜き放ち発砲!!流石に回避は出来ませんねぇ...
「ガキンッ」という音が私のガードの為に上げていた腕部から上がり、覆っていた側が剥がれ内部が露出してしまいました。
あぁ〜...折角ご主人様がご用意して下さった衣服にも穴が空いてしまいましたし、何よりバレてしまいましたよねぇ。
「っ!!」
『見られたからには隠せませんねぇっ!!』
「人間の紛い物がぁ!!」
『不気味の谷』と言う現象があります、これはロボットやヒューマノイドがある一定よりも人間に近付くと親和感が著しく降下するという心理現象で、作り物が余りにも造り手に近づきすぎることにより発生する嫌悪感によって引き起こされると言われています。
元より私達は限りなく人間に近かった存在で、私達が人工知能搭載型のアンドロイドだということを知らなかったのならばこの様に反応することは無く普通の人間だと思われていたのでしょうが、内部を知られた性でこうなってしまったのでしょうね。
地球以外であれば「人間に似ているけれど決定的に人間と違う」という存在が有り触れているために忘れ去られた現象ですが、地球にはそのような存在は居ないのでこの様な反応になってしまったということなのでしょう。
『人間でない物が人間の真似事などするな...と?』
「人間の側を被った化け物め...そんなものを今回の目標は飼って居たというのかっ!!」
『言ってはならぬ事を言ってしまいましたね?』
「なにをっ!?グボォア!?」
ご主人様は私達を飼ってなどおりません、私達と生活しているのです。地球人と言うのは何処までも人間が世界の頂点だと勘違いしているのですかね?
霊長類等という尊大な分類にまで自身を置き、狭い視野でしか世界を見渡せず、狭い世界で自分が1番である事を誇示する為に争い続ける。
最も下らない生き方をする生命体であると、今の私はそう評価します。
『貴方は私たちの決して犯してはならない禁忌に触れました、最低限の生命さえ確保出来ればご主人様も文句は仰らないでしょう。生きて帰れる事を喜びなさい。』
「あっ...がァ!?あがぁぁぁぁぁぁ!?」
四肢を切断...してしまうと血糊が飛び散って大変ですね、開放骨折に留めましょう。
仰向けにぶっ倒した相手の胸板に肋骨が骨折しない程度に体重をかけ身動きを封じてから、末端からじわじわと蹴り潰して行きます。
ショック死などは許しませんとも、当然その辺の配慮も可能です。存分に...死の恐怖を味わって下さいませ?平和ボケした日本国の犬様?
モー「私の骨格及び内部構造は人工筋肉等を使用していない完全フルメタル仕様となっています、理由は「無いとは思うけどモルガン達の不満が爆発した時のセイフティだな!!」とご主人様が仰られたからですね。勿論今の今まで娘達が不満を爆発させたことなどありませんからパワーを持て余しているという訳です。ん?「飲み食いしてたじゃん?」あぁ...私にとっての飲食は1種の燃料補給です、人間の胃に該当する部分がエネルギー変換炉になっているので取り込んだ食物等をほぼ100%義体の稼働用エネルギーに転換出来るのですよ。( ˶ー̀֊ー́˶)」