自分は普通だと思ってても他人から見れば異常って話
〜一般見物客〜
「なんだよ...なんなんだよあの動きはァ!!」
「Yo〇Tu〇eで見る海外のサバゲーマーよりやばくねぇか!?」
「特殊部隊顔負けってか...あのちびっ子達もやべぇ!!」
フィールドを上から見渡せる観覧席で俺とサバゲー仲間はずっと叫び続けている、他にもいるサバゲーマー達もその光景には目を疑い続けているようだ。
対戦が始まって早20分、蘇生無しのチームデスマッチは未だ1人の脱落者も無くかと言って退屈なゲーム運びになっているという訳でもない。正に激戦と呼ぶに相応しい戦場になっていた。
「いい加減誰か落とせよ〜、1マッチ20分もかけてたらダメだぞ〜。」
ゲームマスター席で声を上げているのは恐らくあの異常集団家族の家主...ちびっ子達から「お父さん」と呼ばれていたことから察した、のほほんとした声でこの戦場の膠着した雰囲気を壊そうとしているのだろうが...やめてくれよ!!ここまでレベルの高い戦闘を観戦出来なくなるなんてごめんだ!!
周りの仲間達も同じ考えだったようで、声にこそ出さないが目線は非難をあげているのが分かる。
『ふむ...グリトー援護を。』
『承知しました。』
短くほんの僅かに口が動き微かに聞こえたその声と共に、大人組の中でもトップクラスの美人が障害物から飛び出し一気に距離を詰め始めた!!その後ろからスナによる援護射撃で遮蔽物から顔を出せなくなったちびっ子チームに一気に突貫、裏に隠れた2人をあっという間に食ってしまった...
「ほい、グィネヴィアとカンラhit。手をあげて退場な。」
『不覚ですっ!!』
「まっま早い〜!!」
動きを詳しく説明するなら、スナの援護射撃が一瞬途切れた(多分弾切れ)瞬間に顔を出して反撃しようとしたんだろう。だがそれよりも早くスライディングで開いた隙間に飛び込み、その体勢のまま2人を撃ち抜いたって感じだな。すげぇと思ったのはスライディングしながらでもしっかり当てたこと、サバゲーやってる奴らなら分かるかもしれないが自分が素早く動いてる中で相手に当てるって相当難しいんだ。それが連射でばら撒きながらってんならまだいい、だがそれを単発式のショットガンとハンドガンで当てる...どれだけすげぇんだよ!!
あのちびっこ達にしてもそうだ、当たると思われた弾は目敏く回避するし射線が通りそうなところには可能な限り顔を出さずブラインドショット(普通のサバゲー場では禁止、ただし今回は完全身内戦だから可にしてる様だが...)で牽制を入れつつ射撃が止んだタイミングでクリアリングをする。傍から見てても素晴らしいと思えるような動きを見せているのだ。
何気に車椅子のちびっ子が2人居て、今1人脱落したが場所によっては車椅子から降りて伏せ撃ちしたりそのままほふくで移動したりと素晴らしいという言葉以外見つからないな。
車椅子のちびっ子を姉?と思わしきちびっ子が押して父親の近くにまで移動して何やらヒソヒソ話しているのが見える、不正でも伝えようとしているのか?いや...少なくとも俺たちの目からみてそんな不正はなかった。なんの話しをしているんだ?よく分からんな。
「あー...モルガン、靴裏にエルピダの攻撃当たってたみたいだ。俺の方でも死角になってたから気づかなんだ、って事でお前も脱落な。」
『くっ...やりますねエルピダ...』
なんと!?靴裏に当っていた!?ソールの厚さのせいで被弾に気が付かなかったということか、にしたってあれだけの動きをしていてよくもまぁ射線を通して当てられたと思う。あの美人に当てた子ってのは...うぉ!?いつの間にあんな場所に居たんだ!!ほんの僅かに開いた隙間からしっかりと狙っているぞ!!しかもメインウェポンになっているP90ではなくサイドアームの57で抜いたってことか...
「やべぇな...俺達エンジョイ勢がなにか言えるような立ち位置に居ねぇよ...」
「あぁ...寧ろ助言を貰いたいレベルだぜ。」
「ん?おっ...おい!!また動くぞ!!なんだあの動き!!」
仲間と話しているとまた戦場に動きがあったらしく、そばに居たもう1人がすぐに視線をフィールドに戻すよう声を荒らげた。
それに従い視線を戻して見れば、まるで猫の様に身体をしならせながら縦横無尽に動き回るちびっ子が!!
『しまった!!』
『やりますねぇ!!』
『見慣れているというのに!!』
「にゃはははは!!」
「ほい、モロノエ・ティテン・グリテンhitで脱落だ。」
壁裏に潜んでいた3人を飛び込みながらアクロバティックな動きで食っちまった...アクション映画さながらと言うか、映画でもセットを使ったアクションが殆どだってのにあの子生身だぞ!?マジですげぇものを見た...
隣に居た仲間から見てもその姿は異様だった様で、目が飛び出るんじゃねぇかってレベルで見開いてるな。
『うふふ〜、油断大敵ですよ〜?』
「あっ!?」
「キスハhitな、退場〜。」
ヌルッと、見えている筈なのにまるでそこに急に現れたかのように構えられたモシン・ナガンからの攻撃にアクロバットをしていたちびっ子が倒される。いやいや...それも大概おかしい!!
明らかに視界の中に入っていたはずなのにそこに居るという認識が出来ていない...一種の意識の誘導...催眠に近いレベルの物だぞ!?それをプレイヤーであるあのちびっ子だけじゃなく観客になっている俺達にすら通すって...俺も周りにいた仲間も背筋に冷たい物を差し込まれたかのような感覚に陥った、手を出しちゃいけないような...何か知っては行けない何かの一端に触れたような感覚を味わった。
「モーガンおばあちゃん狡い!!」
『うふふ...戦場に狡いも賢しいも無いんです、勝ったもののみが正義たり得るんですよ?』
「ぐぬぬ...」
ちらっと聞こえたが...お婆ちゃんって言ったか!?うっそだろおい!!あの見た目で既に孫が居る!?上のちびっ子の見た目は少なくとも10〜12歳で、父親って言ってたヤツなんてまだ20代前半くらいの見た目だぞ!?一体どういう爛れた生活をすればあれだけの子沢山...もとい大家族になると言うんだ...
『んん?何やら不敬なことを考えている人が居るようですねぇ?』
「「「Σ( ˙꒳˙ ;)ビクッ」」」
やべぇよ...やべぇよ!!この距離でも年齢の事を考えたら感じ取るのか!?と言うかそういうものって感じ取れるものなのか!?視線や表情でそう言った考えを読み取る女性は居るって聞くが、この距離で視線も何も分からないレベルだろう?それを感じ取るって...女性って怖ァ...
「ほれほれ、早くこのゲーム終わらせてくれ〜。俺だっていつまでも審判やりたくは無いぞ〜。」
父親の言葉を聞いた生き残った全員の目付きがまた変わる、より一層鋭くなったと言うか...戦場を駆ける兵士のような目付きになったと言うべきか。
見ていると分かるが、纏った空気が変わったのだ。それがフィールドを超え観客席にいる俺たちにまで伝播しているんだ。
ピリピリとひりつくような感覚が俺たちまでも包み込んで、より一層の激戦になるだろう事が容易に想像できた。
この1戦を俺達は一瞬も目を離せないと感じさせて、彼女達は一斉に遮蔽物から飛び出して濃密な弾幕の中に飛び込んで行ったのだった。
一般モブA「サバゲー位でうまいも下手もないだろ〜( ・´ー・`)」
一般モブB「は?お前いまやってるこの対戦見てみろよ(っ`ω´c)」
一般モブC「俺この中に飛び込んだら秒でhit貰う自信あるわァ...( ´・ω・`)」
一般モブD「やらせはせん...やらせはせんぞぉ!!( ´ཫ` )」




