はじめてのこうりゅう
モレッドは無事に電磁レールに乗りエアコントロールセンターに向かっていた。
もちろんその後ろには5人娘達が付いている、電磁レール内では距離が近くなりがちになるため視認できるギリギリを攻めつつ分散してモレッドを見守っている。
AIだからわざわざ口頭で話さずとも通信出来るのだ!!ただ、それをやってしまうとカケルがわざわざ作成した表情システムや感情の性でひとりでに笑ったりする頭のおかしい子になってしまうのでやりたがらないだけである。
ただし、この様な護衛に近い任務などに限って言えばそんな問題も起きずらい。更にカケルは「デバイスも無しに通信してたら変な目で見られるよな?」とちゃんと考えていたので一般人が着ける最高級グレードの通信機に似せた(大事)物を5人に持たせている。
インカムのようなもので、網膜投影を行って眼球の移動で操作まで出来ると言う仕様らしいのだがそもそもアンドロイドになっている5人からすればそんなものは関係がなく、さらに言えば直結して仕舞えばそのシステム諸共読み込めてしまうので関係が無いのだが5人はあえてそれは言わずカケルの優しさを受け止めていた。
『で、モレッドちゃんはもうすぐ降りるけど皆大丈夫?』
『はい、私は問題ないですよ。』
『私も問題なーし。』
『私はちょっと手間取るかも。』
『私はちょっと無理かもしれなーい。』
『OK〜、じゃあマーリンは可能な限り早めに合流する様に、一応自衛兵装はいつでも使えるようにね。』
『もちろん、了解だよ。』
電磁レール内は満車という程では無いが人でなかなかにごった返していたため分散して配置した事で個々の自由が強くなった分脱出にも手間どるようになってしまったのだ。
今回はマーリンが抜け出すことが叶わ無さそうなため次の駅で下車、合流という流れになったが。
「えっと、エアコントロールセンターはこっちの出口かな?」
『モレッドちゃんが移動開始したよ〜。』
『はーい、今行きますねぇ。』
『了解〜。』
『あいさー。』
『みんな後でね〜。』
マーリンのみ別行動になってしまったが問題は無いと判断し、4人で行動を開始する。
エアコントロールセンターでモレッドが行うのはアヴァロン内の空気の交換、エアフィルターの納品確認、汚染検知機の検品である。
アヴァロンの空気交換は担当員が既に知らされているので受付に話せば問題は無く、エアフィルターはその担当員にお願いすれば恐らく納品してくれる事だろう。
問題は汚染検知機なのだ。アヴァロンに設置されている物はあくまでもゲーム内で発生したことのある病原体等は検知する事は出来てもこの世界固有の物である場合は対応出来ない。
よってアヴァロンにも汚染検知機を導入する事が決まったのである。
それならエルメロイコロニーで既に導入しておけよと言う話なのだが、カケル自身そもそも忘れていたしモルガン達はアンドロイドの為病気という物にそもそもかからなかったので気にしていなかったのだ。
モレッドが来たという事はそれだけ家族内に意識を拡散させたということなのだ。
いい事づくめである。
あと、実はモレッドの体内にはマーリンが提案しモルガンが許可した医療用ナノマシンが大量に存在しているため、もし未知の病原体に侵入されたとしてもほぼ問題は無かったりする。
なのでアヴァロンの中で最も病気に弱いのはカケルだったりするのだ、父親としての顔は出来そうにない男なのだ。
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「ようこそ、エアコントロールセンターへ。傭兵艦アヴァロンのエア交換ですね?」
「そうです!!あと、エアフィルターの納品もお願いされてます。型番はXNO-1577って!!伝えればわかるって言ってました!」
「はい、ありがとうございます。在庫はある様なので直ぐにこちらにお持ちします、確認後は艦まで郵送すればよろしかったでしょうか?」
「それでお願いします!」
「承りました。後は汚染検知機ですね、これについては親御さんに確認していただいた方がよろしいかとは思うのですが……」
「お母さんからこれを渡すようにって言われました!!どうぞ!!」
「これはどうも、……ふむ……なるほど……ではこの機種かな?お待たせ致しました、この御要望であれば十分対応できるかと思います。」
「なら、それでお願いします!!」
「はい、承りました。」
一方、それを遠目で眺める5人娘達はと言うと。
『こちらヴィヴィアン、モレッドちゃんは問題なく任務を遂行している模様。』
『こちらグィネヴィア、モレッドちゃんに過度な緊張等は見受けられず、問題無しかと。』
『こちらモルゴース、エアコントロールセンター周辺に不審な人物、物体等確認されずだよ。』
『こちらオヴェロン、コントロールセンター内に不審物等は確認されず。』
『こちらマーリン、コントロールセンター内で不審者を確保。尋問を開始するよ。』
と、モレッドのお使い遂行の為にたった5人でエアコントロールセンター周辺の治安維持を行っていた。
最早ここまで来ると過保護を通り越していると言っても過言では無いのだが、それを本人達も気が付いていない。
『で?マーリン、確保した人はなんだったの?』
ヴィヴィアンからの確認にほか3人も注意して耳を傾ける。
『んー、なかなか吐かなかったけどなんとか吐かせた情報によるとアヴァロン内にエアコントロールセンターから運ばれる物に紛れ込んで侵入しようって魂胆かな?一応ママには連絡入れたから多分大丈夫だと思うよ。』
『『『『了解、じゃあモレッドの見守りに戻ろう。』』』』
今回この情報を得ることが出来たのもモレッドを見守る為の副産物でしかないのだ。
ちなみにこのゴタゴタをしている最中もモレッドはしっかりと職員と話をして、僅かではあるがちょっとしたサービスをもぎ取る事に成功している。
モルガンと5人娘達による英才教育の賜物と言った所だろうか。
「今日はありがとうございました!!」
「こちらこそ、良いお取引をありがとうございます。」
そして、無事にエアコントロールセンターから出てきたモレッドはアヴァロンに向けて歩き出す。
勿論その後ろには5人娘が付き、変な事が起きないよう注意を向けているのだが。
「おい、そこの嬢ちゃん。なんかいいもん持ってんなぁ。」
「なに?おじさん、こんな時間から。」
『あっちゃぁ、モレッドちゃんに絡まれちったねぇ。』
運悪く浮浪者の様な男にモレッドが絡まれてしまったのだ。
ヴィヴィアン達は頭を抱えるようにしてしまう、だがモレッドからしてみれば今回のお出かけは妙に自分に対して優しすぎる気がしていたのだ。
前にカケルと外に出た時は自分的に嫌な感覚を持つ視線に晒されたり、手を出されそうになったりしていたのだ。
それが今回は全くないと言っていいほどだったため、多分5人のお姉ちゃん(アンドロイド)の誰かが着いてきてくれているのではないか?と僅かながら気が付いている。
その為、この浮浪者の様な男とのエンカウントに対しても大して怖気付いてはおらず、寧ろ自分一人でも対処出来るんだから!!と意気込んでいるのだろう。
カケルから渡された自衛武器は威力等で最早殺傷してしまう可能性があるので、こっそりモルガンから習っていた自衛術でも披露しようかなとか考えている始末である。
「で、おじさん何がしたいの?」
「……嬢ちゃんを好きにしたいだけさ!!」
ガバッとモレッドに飛びかかる様に襲ってきた男をモレッドは冷静に投げ飛ばしていた。
投げ飛ばして地面に叩きつけた後、服の裾からジャキンと飛び出した特殊合金性警棒で男の局部を殴打し一瞬でケリをつけてしまう。
「お姉ちゃ〜ん居るんでしょ〜?手伝って〜。」
『ありゃりゃ、バレちゃってたか。』
『モレッドちゃんは優しい子ですから。』
『でも今の動き……ママ?』
『とりあえず帰るまでが今回の仕事だよ。』
『モレッドちゃんかっこよかったよ!!』
と、5人ともいた事には驚いていたが嬉しそうにして倒した男を足蹴にしていたモレッドと共に5人娘はアヴァロンに向かうのであった。
みんな「やっぱりこうなったのかぁ〜」